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獣達から見た天下  作者: 女々しい男
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学長

佐吉達の前に現れた女、通を三者三様で見つめていた時、佐吉達の後ろから声を掛ける者が、現れる。

「何だ、何だ、何だ、煩いと思って見に来て見れば、みすぼらしい者共の集まりか」

佐吉達を冷めた目で見つめながら、話しかける男。

「いきなりなんだぁ、てめぇ!やんのか!」

「やめろ、虎之助、、、相手が悪い」

虎之助が、男に掴みかかろうとするのを止めながら、慌てて押さえつけて、呟くように話す吉之助。

「なんだ、コイツ!」

「不味い、特別室の奴だ」

「なっ、、、織田家の親族」

顔を歪めて、辛そうに話す吉之助に対し、今まで真っ赤だった顔から、血の気が引いた顔をして消え入る様な声で呟く虎之助。

「赤千代様、お言葉が過ぎるのでは、、、」

傍に居た男が、顔を歪めながら、赤千代と呼ばれた男に話しかける。

「なんじゃと、九一郎・・・お主、俺に意見しているのか」

「いっいえ、、、」

赤千代の横にいた九一郎が下を向き、目を逸らす。

「ふんっ、叔母上が建てた学び舎とやらに、このような者達がいるから、織田家の品格が落ちるのじゃ、叔母上は何を考えておられるのやら・・・まあよい、父上に言ってこのような者らを排除してもらうだけじゃ」

嫌らしい顔を浮かべながら、佐吉達に話しかける赤千代。

「くっ、、、」

「なんじゃ?その顔は?」

「、、、」

「ふっ、そこで土下座して、頭を土に擦り付けたら・・・そこの二人はゆるしてやってもよいぞ」

佐吉と吉之助を指差しながら、虎之助に向かい、話しかける赤千代。

「・・・絶対だな、佐吉と吉之助は見逃すんだな」

「嘘などつかぬ、我は高貴な織田一門の者ぞ、そのような目で、我を見るな、、、下郎がっ」

扇子を開き、口元を押さえながら、冷めた声で話す赤千代。

その言葉を聞き、悔しさで体を震わせる虎之助は、足を叩きながら、膝を折り、太ももを強く握り締めながら、赤千代に頭を下げようとした時、、、

「虎之助、もうよいこんな奴に頭など下げるな」

「佐吉の言う通りじゃ、こんな場所、わしも居たいとは思わん」

虎之助の両肩に、それぞれの手が据えられる。

「なんじゃと!貴様ら、揃って成敗してぇ、、、」

腰に差してある刀の柄を握り締める赤千代。

「貴方、此処が何処か、分かって言ってらっしゃるのかしら?」

「誰じゃ!」

「ちょっと、退けてくれる」

佐吉達の間から、出てくる通。

「ほう、中々可愛らしい女子ではないか・・・しかし村娘風情が、我に意見する気か?女子とはいえ、許される行為ではないぞ」

厭らしい目で、通を見ながら、高圧的な態度で接する赤千代。

「そう、どうしたらゆるしてもらえるのかしら?」

微笑みながら、赤千代に話しかける通。

「ふふふっ、そうだな・・・お前、我の妾になれ、ならばゆるしてやろう」

胸を張りながら、高圧的な態度を崩さない赤千代。

「ませた餓鬼ね」

微笑みを崩さず、言葉を返す通。

「なっなんじゃとぉ!もう許さぬ!貴様、その着物を切り裂いて、ひん剥いてくれる!九一郎やれ!」

「そっそれは、いくらなんでも、、、」

「やれ!九一郎、お前の家など、いつでも消せるぞ?良いのか」

「くっ、、、」

「許さない?誰が?誰を?貴方、いろはにへとから、やり直したらどうかしら?まっやれるならやってみなさい」

「すまぬ、、、」

柄に手を掛けながら、通に近づく九一郎。

「おい、赤千代!何をやっておる!」

「あっ、父上!」

「長益様」

赤千代は振り向き、九一郎は素早く、片膝を折り、頭を下げる。

「このようなところで、道草なんぞしおって、今日は新しく赴任してきた学長に合わせると言っておいたであろうが」

「あっそうでした、この者等が、私にたて突くので、時間を取られてしまいました」

「なんじゃと・・・ふんっ、下民共ではないか、そのような者達など、どうでもよい」

通達を蔑んだ目で見つめると、興味を無くしたかのように視線を外し、赤千代を見る。

「しかし、、、」

「しかしも糞もない!今日、新しい学長の赴任日じゃからな。今度の学長は、市の養子と兄上様に聞いておる、待たせると面倒じゃ」

「信長伯父上様にですか!・・・でも叔母上の子と言っても養子なのでしょう?なれば、父上の前では、借りてきた猫でございましょう」

「そうじゃな、市は奥州なんぞに、行っておるから、暫くはもどらぬしな」

「そのような養子など使わなくても、父上を学長にすれば良いものを、叔母上の力量がしれますな父上」

「そのように言うてやるな、いずれ市も分かるじゃろうて、形だけでも取り作らねばならぬからな。行くぞ、赤千代」

「はっ父上参りましょう、、、命拾いしたのう」

背を向けて、去ろうとする長益親子を見て、安堵の表情を浮かべる佐吉達。

「待ちなさい、お前達」

捨て台詞を吐いて、その場を去ろうとする親子に、微笑みながら通が声を掛ける。

「何だ小娘?まだ噛み付く気か?わしは急いでおるのじゃ、もうこのような好機など訪れぬぞ」

怒りで引きつった顔をしながら、振り向き、通を見る長益親子。

「あたしの名は、村娘でもないし、何だ小娘でもないわ」

「やっやめとけ」

「なっなんで呼び止める」

「つっ通、、、」

呼び止める通を、慌てて抑えようとする三人

「んっ?つう、、、通・・・通!」

「どっどうしたのですか、父上」

顔色が、一瞬で青くなった父親を見て、声を掛ける赤千代。

「まっまさか、そのような、事が、」

震え、怯えた目をしながら、かろうじて声を出す長益。

「やっとわかったのかしら?あたしの母上様は、織田市」

「「「「「なっ!」」」」」

童達は腰を抜かして地べたに尻餅を着き、微笑みながら、話す通。

「学長っ!このようなとこに居られたのですか!お通さまの叔父上であられる織田長益様が、こちらに来られ、、、あっあれっ?長益様?」

「そう、あたしが、壱学問所学長の織田通よ、よろしくね」










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