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獣達から見た天下  作者: 女々しい男
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義光と正信

父である、最上義守と弟、義時を暗殺した義光は、山形城にて最上11代当主として、領内外に対して宣言した。

それに不服を申し立て、反旗を翻したのが、最上八楯と呼ばれる最上家の分族であった。

最上八楯は、旗頭に天童頼貞を立てると、義光に対して、攻勢をかけようと兵を集めていたそんな時、一人の男が山形城を訪れ、義光に面会を申し出ていた。

「得体の知れぬ者が、殿にお目通りしたいと」

困った顔をして、報告する近習。

「何っ、得体の知れぬ者だと!今はそれ所では無い事も分からぬのか!」

義光は苛立ちを隠せないまま、近習に叫ぶ。

「それが、会わせぬならば、最上は滅ぶぞと言うものですから」

「なっそのような事、分かって、、、何・・・もう一度言ってみよ」

苦しげに伝える近習に対して、慌てた顔をして、聞き直す義光。

「はっ、会わせねば、最上が滅ぶと」

「すぐに此処にお連れせよ!急げ、いや、丁重にお連れせよ。けして粗相など無い様に致せ!良いな!」

「はっ」


直ぐに一人の男が、近習に連れられて、義光の前に現れる。

「最上義光だ。最上が滅ぶと言ったそうだな・・・お主は何者だ」

義光は、鋭い目で男を睨みつける。

「私の出す質問に答えて頂くまでは、私の名は聞かぬ方が、良いかもしれませぬ」

「何故だ」

「聞けば、私の出す質問の答えに、支障が出ます故」

涼しげな顔をして、男が義光に答える。

「質問じゃと、それを答えれば、名を明かすのか」

「はい」

「分かった、質問を言ってみよ」

義光は男の言った言葉に対して、静かに了承する。

「義光様は何故、父と弟を消されたのですか」

それを聞いた男は、静かに話し出す。

「なっ!貴様ぁ!無礼であろう!」

男が放った言葉を聞き、近習の者が声を荒げる。

「静かにせよ」

「しかし、殿」

「良い」

「・・・はっ」

義光の言葉に、渋々了承する近習。

「父上と義時は、織田に歯向かう考えを持っておられた、それは最上が消えるだけではなく、この出羽に住む多くの者達が、泣く事になる故」

「それで親殺しをされたと、仰るか」

「奇麗事は言わぬ、わしは親を殺した親不孝者じゃ、、、しかし上に立つものは、下々の事を考えねばならぬ!わしに後悔は無い」

強い眼差しで男を見つめる義光。

「貴方の言葉、姫様が好まれる答えですな」

「ふっ、やはりお主、織田の手の者か」

「分かった上での、お答えでしたかな?」

「分かった上でも有るが、嘘偽りなど無い本心だ」

男がおどける様に話すと、義光は真剣な顔で答える。

「左様か、私は織田家、軍事開発部将補本多正信と申します」

「徳川の知恵袋と言われた男であったか。それで、わしの答えで最上は、いや出羽の民はどうなる」

「どうなるとは?織田は民を第一に考える家で御座いますよ」

「そうであったな、最上の降伏は認められるか」

「それは、義光様の行動にて、分かる事かと」

「・・・わかった。お主を派遣した方にお会いしたい」

「分かりました、手配致しましょう」

「本多殿、お世話をかけてすまぬ」

深々と正信に頭を下げる義光。

「私のような者に、その様に頭を下げて、頂かなくても良いですよ。私は、仕えていた主を止める事が出来なかった、情け無い男で御座いますれば」

少し、影を落としながら、呟くように話す正信。

「そのような、、、」

「義光殿は亡き主と同じ様にはなりますな。あのお方に会っても、行う仕置きを見ても、聞いても、けして恐れないように、恐れれば、反発し、亡き主と同じ轍を踏みましょう」

「忠告、胸に刻んでおこう」

正信との会見が済むと、義光は急ぎ、山形城を出立し、越後春日山城に滞在していた、市との会見に臨むのであった。


「あんたが、親殺しをした義光なのかしら?」

「はっ、最上家当主、最上義光で御座います」

上座から、不遜な態度で話しかける市に対して、深々と頭を下げて名乗る義光。

「こんなところに、のこのこ一人で来ていいのかしら?出羽はあんたの犯した親殺しで、大変でしょうに」

「・・・・・・」

「こんな挑発には乗らないのね、正信が知恵を、貴方に付けたのかしら?」

「・・・・・・」

「黙秘か、まっいいわ。それで何しに来たのかしら?」

「最上は、織田に降伏致します」

「あらっ、一戦もせずに降るの?そんなに無理しなくてもいいわよ」

「無理など、」

「一戦くらいしましょうよ・・・最上消してあげるから」

「!っ・・・」

市の言葉に、恐れを抱き、思わず、顔を上げた際、市の瞳を見てしまい、体の震えが、止まらなくなる義光。

「震えてるわよ、義光」

震える義光を睨みながら、呟く市。

「姫様、その位で勘弁して上げたらどうですかな、正信の報告にもありましたが、義光殿は民を思い、肉親すら手にかけたのですから」

傍に居た酒井忠次が、思わず助け舟を出す。

「民の為ね・・・まッそういう事にしといてあげるわ。いいかしら?義光、民を考えぬ武士は要らないのよ、民を奴隷か何かと考える武士など、要らないわ、よく覚えておきなさい」

「・・・はっ、胆に命じて」

深々と市に対して、頭を下げる義光。

「じゃ、信玄達を呼んで頂戴・・・出羽に兵を進めるわよ」

「・・・はっ」

「奥州散策はきっと楽しくなりそうだわ」

冷酷な笑いをしながら、呟く市。

そんな市の命を聞き、不安に駆られながらも、了承する忠次であった。

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