表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣達から見た天下  作者: 女々しい男
5/76

半兵衛の心服

優しい日射しが、縁側に差し込む

私は、その日差しを体に受けながら、本に目を通していた

裏口から人が入ってくる気配を感じた

私は、本から目を離さずに声をかける

「誰です?」

相手は声を発しない

「裏口から入ってくるのです。皆には聞かれたくない、お話ですか?」

そう伝えると裏口から入ってきた人が声を発する

「初めましてかしら?竹中半兵衛重治殿」

その声を聞いて本からゆっくりと目を離して、相手を見る

私の視界に入った人物は幼い女の子であった

この方は・・・そうか、私の力量を測りに来たのか

「ええっ、初めましてです。お市様」

そう言って微笑むとお市様も微笑み返す

なんと良い笑顔なのだ。その笑顔に吸い込まれそうな感覚を覚えていた

「して、何かご用件でも?お茶でもお入れしましょうか?」

私は立ち上がり、中に入れようとすると、お市様が話し出す

「う~ん、こんないい天気だからさ。この辺、散歩しない?」

そう言って私の腕を引っ張る

「もう、散歩は決定なのですね」

私が呆れたように話すとお市様は即答する

「ええっ、理解が早くて助かるわ」

そう言って、微笑む顔は何故か。心が洗われるような不思議な感じであった

居城である大御堂城を出てから、しばらく歩くとお市様は話しだした

「流石は竹中ね。城下の民がいい笑顔だわ」

お市様は凄く嬉しそうな顔をしていた。私も家を褒められて、嬉しく無い訳など無いが、この姫は油断すれば危険だと私の本能がそう叫ぶ

「お市様にその様に言って頂けた事、大変光栄で御座います」

そう言いながら、歩いていると飛騨との国境付近まで、足を伸ばしてしまっていた

「お市様、この辺は少し・・・物騒で御座います」

私はお市様との会話に気を取られすぎて、少々危険な場所に入ってしまった事を、表に出さないようにしながらも動揺していた

「そうね、囲まれたわね」

お市様は無表情の顔に豹変して、冷めたような声を出した

「お市様、私の後ろに・・・」

私はお市様を守るべく行動する

「えへへっ・・・」

「おっ!幼すぎるがおなごじゃ・・・げへっげへっ」

「しかも、えらい別嬪じゃ!」

「売れるのう。まっ楽しんだ、後じゃがのう。へっへっ」

「優男、一人じゃ!楽勝じゃのう!お頭!」

私達を取り囲む数十人の中から、一人の男が前に出た

「おう、そこの優男!命は取らねぇから、その女、置いて消えろ!」

威圧的に男は話す。私はお市様に小声で話し出す

「私が囲みを開きまする。開いたら後ろは振り返らず、死ぬ気で走って城下まで逃げられよ・・・」

私は死ぬ覚悟をしていた

「・・・わかったわ」

お市様はあっさりと私の提案を受け入れる

お頭の話を聞いてなかった私に、怒りをあらわにしながら叫ぶ

「てめぇ、死んだぞ!やれ!」

お頭の一言で周りが動き出そうとした時に、私はいきなり話しだした

「しばし!しばしお待ちを!」

周りがビクッとして、動きを止めたその時に、私は一番人の多い方に方に向かって走り出す

「なっこちちにきやがるとは!なめてんのかぁ!」

手下達が武器を出そうとしたが、周りが邪魔で上手く出せないでいる、私はその中に切り込んで、私に切られた相手は、用意をしようとする仲間の邪魔をして混乱に拍車をかける

相手に止めは刺さず、腕や足を切り、手下はその痛みに悲鳴を上げる

その悲鳴を聞いて手下は恐怖心を駆り立てられた

「おめぇら!落ち着け・・・相手は一人だ!しかも子連れのな!」

お頭は的確に指示を出して、手下の混乱をすぐに収める

「中々、兵法に精通されておられるか。お名前は?」

私はお頭に話しかけながら、手を使ってお市様に行けと、合図をしていた

「山賊の頭に名前があると思ってんのか?」

お頭はそう言って、にやりと笑いながら私に話しかける

「其の辺のゴロツキではないでしょ・・・」

私は真剣な目をしながら男を見る

「ふうぅん、まっいいやぁ。冥土の土産にしろ、川並衆を率いてる蜂須賀小六じゃ」

小六は鼻を鳴らしながら喋った

「そうですか、中々の人物かと思えば、当たりですか。でも川並衆は尾張、美濃国境周辺が根城では無かったですか?」

半兵衛は首を傾げながら小六に話しかける

「クッ、痛いとこ突いてくるな。おめぇ・・・織田の締めつけが厳しいんだょ・・・ちっそんな事はいいんだぁよぉ。そっちにいる女は頂くし、オメエは死ね」

小六は吐き捨てるように話をしながら、私と私の横を見つめる

「えっ・・・」

小六が言った言葉の後半を聞いて驚き、私は小六が見た場所を見ると、お市様がいた

「何故?いるのですか・・・」

私が呆れたように呟くとお市様が話し出す

「だって、それしたら半兵衛死んじゃうじゃない」

そう言って微笑む、お市様

「お市様は織田家にとって大事な方!私のような者はお考えめされるな!御身を大事になされよ!」

私はつい怒鳴ってしまった

「何言ってんの!半兵衛!あんたの命もあたしの命も同じ命よ!責任の違いだけ!それにあなたはあたしには必要な人なの!半兵衛!自分を軽く考えないで!」

逆に怒られてしまった。しかし何故か心地よく安心してしまった

「おいおい、仲間割れはいいからよ。でも驚いたぜぇ・・・織田の姫さんとはな」

小六はお市様を見て、にやりと笑う

「あらっ?織田の姫と分かって嬉しそうね。身代金でも要求するのかしら?」

お市様が小六を挑発するように話す

「おっ、流石は竜玉と呼ばれる姫さんか。胆も座ってやがる・・・」

そう言いながら手で合図して私達を取り囲もうとする

「お市様、私は前の主を守りきれなかった男でございますが、お市様は必ず、守り通してみせましょう」

私は湧き上がる力を感じていた

「残念ね、時間切れみたい。匂い嗅いでみたら?」

お市様が小六に話しかける

「なんだとっ、まさか!この匂いは!火縄の・・・」

辺りを落ち着きがなくきょろきょろする小六

「うごくな!動けば打つ!武器を捨てよ!」

そう言いながら、林から出てくる大柄な男

「熊ぁ~遅ぉい!」

お市様は熊と呼ばれた男に話しかける

「姫、申し訳ござらぬ。準備に手間取りました」

頭を掻きながらお市様の元にくる熊

「なっ!よっ義龍様!」

私は思わず驚愕し、片膝を付いて頭を下げた

「其れがしは、斎藤義龍という者では御座らん。熊田熊五郎ですぞ。半兵衛殿・・・頭を上げてくだされ」

そう言って、微笑む義龍様

私は頭を上げて、涙を流しながら義龍様を見て話す

「左様か、よく似ておられたので、間違えてしまいました。申し訳ありません・・・熊田殿」

小六達、川並衆は織田の兵に捕縛されて、私たちの前に座らされる

「なんか言うことある?」

お市様が小六に向かって話す

「ふんっ、やっぱりあんたは疫病神だ!」

小六はお市様を睨む

「あらっひどい言われようね。尾張と美濃が纏まると商売あがったりだもんね」

「・・・・・・」

苦虫を噛んだような顔をする小六

「蜂!あんたんとこの川並衆って何人ぐらいいるの?」

「蜂っ!そんな呼ばれ方はされたこたねぇな・・・」

困惑する小六改め、蜂

「いいから答える!」

「えっ、そうだなぁ、大分散らされたからな。千人位だ・・・」

蜂がそう答えるとお市様は、嫌らしい顔を浮かべ、蜂に話しかける

蜂は顔が引き攣り、何を発言されるのか。恐れているようだった

「選ばせてあげるわ。あたしに飼われるか?根絶やしにされたいか選んで・・・」

その顔は羅刹のような顔であった

そんな時、一人の男が岐阜方面から歩いてくる

「あれっ?小六でにゃ~かぁ・・・なにやってんだがや?」

男は蜂と知り合いのようだ。私は思わず、仲間と思い、腕を掴んで腕を背に回して、捕縛しようとする

「ぎゃ~!いたぁ~いぎゃぁ~!姫ぇ~たすけてぇ!」

その男はお市様に助けを求めているようだった

「あらっ?猿じゃない?何、蜂と知り合い?」

お市様は冷静に猿とやらに話しかける

「そっちきゃ!まず自由にして欲しいぎゃ!」

猿という男は顔を真っ赤にして話し出す

「聞かれたことに答える!半兵衛捻っていいわよ・・・」

お市様に言われて思わず捻ってしまう

「ぎゃ~!おっ折れる!ぎゃ~ほっ本当に折れるぅ!」

猿は泣き出していた

「で、早く言いなさい。もうめんどくさいから折っとく?」

お市様が首を傾げながら話すと猿が顔色を変えて話し出す

「知り合いだぎゃぁ~!なんかしらんけど、小六ぅ~姫には逆らうなぎゃ~・・・」

猿はそう言いながら、泡を口から出しながら、気を失っていた

「で・・・蜂、選んだ?」

お市様が蜂に迫ると、蜂は小刻みに震えながら答える

「姫様に飼われまする・・・」

満足そうな顔をしたお市様と、この世が終わったような顔をした蜂がいた

その後の話ではあるが、お市様は川並衆を各地に送り込み、土着させて情報を常に手に入れるようにされていた

「半兵衛、なんかバタバタしちゃって、ごめんねぇ」

お市様は頬をかきながら謝った

「こんなに楽しんだのは久しぶりです。お気になさらず・・・」

私は微笑んでお市様に答える

「あっちょっと待ってて、半兵衛」

そう言って、お市様は守り刀を取り出すと土を掘り出す

掘っている横には小さな子供の骸があった

「わたしと兄様はね、この間違った世の中を変えたいの。手伝ってくれる?半兵衛」

お市様がある程度、土を掘り出すと、その骸を優しく両手で動かして埋葬していた

私はその姿を見て、心に衝撃を受ける。この方になら、私は全てを捧げれると心が叫ぶ

「御意!」

私の口から意識していない。心から出る言葉が漏れた

私はこの方の力になる為に、生まれてきたのだと思える程に・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ