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獣達から見た天下  作者: 女々しい男
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闇の分裂

順調な道中であったが、織田領である南近江を抜け、浅井領である北近江に入った山道にて異変が起こる。

「んっ?何やら人気が無くなったちゃったわね・・・」

市の顔に懸念の色が見える。

(パァーン!)

「うっ・・・」

(ドサッ・・・)

「くっ・・・くまぁ・・・熊ぁ!」

市の隣にいた熊の大きな体が、垂直に倒れこむ。

それを見た市は叫びながら、熊の体を揺するが眉間に銃弾を打ち込まれて事切れていた熊が動く事はなかった。

放心状態の市に向かい、惟政は口元を愉快そうに開きながら、市に問い掛ける。

「姫様、これで護衛の者が居なくなってしまいましたな・・・」

「なっ何言ってるの・・・そんな事言ってる場合じゃ!熊が熊がっ、それに貴方がいるじゃない、それに護衛の者もい・・・まさか!」

市は熊の亡骸を抱えながら、怯えた顔を浮かべる。

「フフフッ、ようやく気付いたのですか。世間では女狐、魔王等と呼ばれておるお方がそのような顔をするとは・・・愉快ですな」

惟政は市に話しかけながら、右手を上げると警護をしていたはずの者達が、市を取り囲む。

「あたしをどうする気・・・殺る気なの・・・」

市は怯え切った顔をして、声や体を震わせ惟政に話しかけた後、惟政を見つめる事しか出来ない。

「さてどうしますかね、本来の目的は貴方の命でしたが・・・貴方のその美貌、簡単に殺しては勿体無い。私が飽きるまで生かして差し上げよう、私の性の捌け口にして差し上げましょう」

惟政はいやらしい顔をして、市に話しかけると印を結ぶ。

「そんな事になるぐらいなら、この命すてぇ・・・」

市は腰に付けていた守刀を抜いて、喉に刺そうとするが、体が硬直したように動かなくなる。

「フフフッ、動かぬでしょう?休んだ宿で出された食事には、甲賀和田家秘伝の妙薬が入っていったのですよ。この印が合図になっておりましてな・・・最早、貴方は私の言いなりですよ」

「・・・・・・」

笑顔で微笑む惟政の言葉に反応すらせず、虚ろな目で立ち尽くす市。

「上手くいったようだな惟政、これで織田の天下が崩れるな」

林から出てきた善住坊が、笑顔で話しかける。

「そうだな、それにこの女もこのようになってしまえば、死んだも同然。その体だけ堪能したら消すだけよ・・・」

いやらしい顔を浮かべ、善住坊に答える惟政。

「我にも抱かせろよ」

「フッ私が飽きたらな」

その後、顔を潰された女の亡骸に市の着ていた物を着せると熊の亡骸の近くに置くと、二人と配下の者達と共にその場を去るのであった。


その後、惟政はわざと手傷を負うとその足で京にある織田の諜報機関の建物に満身創痍の姿で現れる。

「なっ!どうなされました!和田様!」

その姿を見た門番が惟政に近寄り、倒れ込んだ惟政を介抱する。

「はっ、羽柴様に・・・おっおつたえを、、、お市様が・・・」

そこまで言うと惟政は意識を失うのであった。

門番から惟政の異変を伝えられた猿は急ぎ、調査を開始すると、お市と熊の死亡報告が届くのであった。

この事は直ぐに巷に噂となって流れ出す。

この件に信長の怒りは最高潮を向かえ、市暗殺の者達の搜索が草の根を分けて行われていた。

「和田の容態はどうなのきゃ!どうして姫が!姫が殺られとるんだぎゃ!」

真っ赤な顔をして、辺りに怒鳴り散らす猿。

「・・・和田の容態はさて置き、この一件如何なさるおつもりか。お言葉次第では我は織田を去る」

猿の顔を殺意をもって、睨みつける半蔵。

「半蔵の申す通り、返答次第では藤林も織田を去る」

藤林も半蔵に付随する。

「・・・・・・」

伊賀三家の内、二家が織田に対しての不信感をあらわにする中、百地だけが静かに目を瞑り、沈黙していた。

「なんじゃ!半蔵、藤林!お主ら、甲賀を値切りにしろとでも言うつもりかゃ!」

そんな中、惟政の上司にも当たる望月出雲守が、辛い表情を浮かべて声を出す。

「申し訳ございませぬ、和田は甲賀の者・・・この責は上司たる私の責任、他の甲賀の者にはどうか・・・どうか・・・」

そう言うと静かに横に倒れこむ望月。

「なっ!」

猿が慌てて望月に近づくと望月は毒を飲んでいたようで、事切れていた。

「フッ・・・そのような事で誤魔化されると思ってか!半蔵!伊賀に戻り、兵を集めるぞ!」

「承知・・・」

藤林と半蔵は二人して席を立とうとする。

「待つがやぁ!お主ら!勝手に兵を集めれば、お主達も処罰せねばならんがやぁ!」

「「出来るものなら殺ってみよ!」」

二人は鋭い殺気と共に叫ぶと、猿を睨みつける。

猿は二人を抑えようとするが、二人は直ぐにその場から消え去る。

「どうすればいいんだぎゃ・・・このままでは闇の内乱が起こってしまうぎゃ」

肩を落として項垂れる猿に、声をかける男がいた。

「藤吉郎、すまぬが・・・儂も織田を去る」

「なっ小六まで何ぉ言ってるんだぎゃ!お主が抜けるという事は、川並衆を引き上げて・・・まさか!甲賀に攻めるつもりきゃ!」

猿は青い顔をして、蜂を見つめる。

それを見ていた、風魔小太郎や出浦盛清、杉原盛重は揃って席を立つ。

「我ら、国元に戻りまする・・・今度会う時は、敵やも知れませぬな」

三人を代表するかの様に風魔小太郎が話し出す。

「なっ・・・まっ待つがゃ!」

三人は猿の静止を無視して、その場から消え去る。

そこに残った者は猿と百地だけであった。


京より離れた場所にある屋敷にて高笑いをして、一人の女に酒を注がれながら、呑む男達がいた。

「まさかこのような土産を持ってくるとはな・・・」

「まっこと、まっこと、最高の土産じゃ!」

「我らを顎でこき使っていたあの女子が、儂らに裸で酒を注ぎ回るとはのう・・・信長に見せたいものじゃ」

愉快そうに笑う京極高吉、一色義道、武田義統の三人

「しかしこのような姿を見せられると・・・抱きたくなるのぉ」

「・・・確かに・・・そうじゃな!」

義道と義統は二人で話し合うと市の体を触ろうとする・・・その時。

(パァーン・・・シュ、トッスッ・・・)

二人の足元に銃弾と棒手裏剣が、床に穴を開ける。

「私も堪能しておらぬのに・・・触らないで頂きたいな」

不愉快そうな顔をした惟政が二人に殺気を放つ。

「ざっ戯言じゃ、気を悪くするな・・・惟政」

「そっそうじゃ、戯言じゃ・・・戯言」

二人は惟政に謝罪する。

「よくやったな、惟政・・・してどうするかのう」

高吉が惟政に問い掛ける。

「分かりきった事を・・・最早、織田は分裂するのも時間の問題、今神輿を担ぎ上げれば、我らの元に馳せ参じる者も多かろうて・・・」

「そうじゃな・・・若狭に参るとするかのう」

その後、四人は夜遅くまで飲み明かすのであった。

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