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獣達から見た天下  作者: 女々しい男
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暗殺の影

京から少し離れた場所にある館に、三人の男達が集まって話し合っていた。

「義秋様もフロイス様と共に、九州に逃れられた。朝廷も最早、織田のいいなりじゃ・・・」

一人の高齢な男が話を切り出す。

「高吉殿の仰る通り、織田の増長は留まる所を知らぬ勢いじゃ。それに、織田の政策で丹後一色家臣団も解体され、今では家臣だった者に、儂が顎で使われるようになるとは・・・」

「義道殿の苦労、儂にもわかる若狭武田家臣団も同じ様なものだ」

京極高吉、一色義道、武田義統の三人は苦痛の表情を浮かべて話し合う。

そこに一人の男が入ってくる。

「御三方、その様に悲観することも御座いますまい。力が無いと思われておるのでしょう・・・それ故の待遇かと」

「なんじゃと!」

「和田!そのような事がよく言えたのう。お主の主家は織田の諜報に組み込まれておったにも関わらず、お主に情報を流さなかったが為に、義秋様がお逃げにならねばならなくなったのだぞ!」

「惟政殿・・・言葉が過ぎよう」

三人は、いきなり入ってきて、話し出した和田惟政の言葉に怒りを現す。

「その様にお怒りになると、尚更滑稽に感じますぞ」

「「なにっ!」」

惟政が三人を煽るように話すと義道、義統が反応する。

「ふっ、相変わらずじゃな惟政・・・お主がその様に申すと言う事は、何やら考えがあるのであろう」

高吉が真剣な目で惟政を睨みつける。

「流石は、高吉様ですな・・・義秋様は将軍の器では無かったのですよ」

惟政は顔をにやけさせながら、真剣な目をしながら話す。

「誰か、足利将軍の跡目にを担ぎ上げるつもりか・・・それは無理じゃ、織田に対抗出来る器も力も無い者だらけじゃ」

高吉が呆れたように話す。

「いえ、居るではないですか。織田の中枢で力を持った方が・・・」

真剣な眼差しで、高吉を見つめる惟政。

「なっ、それはまさか・・・」

「ふふふっ、やっとお分かりになられたか・・・義輝様の弟であり、前将軍義昭様の兄君である御方・・・」

「なっそのような方が居られるのか!」

「だっ誰なのじゃ!」

高吉は顔を下に背け、義道と義統は目を輝かせながら、惟政を見つめる。

「足利将軍十二代将軍義晴様のご落胤、若狭国軍政長官細川兵部大輔藤孝様ですよ」

「「・・・!」」

「惟政・・・その事誰に聞いた」

高吉は惟政を睨みつけながら、呟く。

「私は元は忍びですよ。その様な事、将軍家にお使えしてから、直ぐに分かっておりましたよ」

「・・・・・・」

高吉は沈黙し、惟政は笑みを浮かべる。

「確かに・・・藤孝殿、いや・・・藤孝様ならば、器も力もある!織田に内部から対抗する事は出来ようぞ!」

「おおっそうじゃな!」

義道と義統は共に笑顔になるが、高吉は苦しげな表情をして話し出す。

「藤孝様ならば、異議など唱えんが・・・本人が了承するとは思えぬ。本人の了承も無ければ、机上の空論じゃ」

「「確かに・・・」」

高吉の言葉に、二人は現実に戻されて暗い顔をする。

「ふっその様な了承など必要無いでしょう・・・藤孝様がそうなさる様にしてしまえば良い」

微笑みながら話す惟政に、三人は恐怖を感じる。

「しかし、そう上手く行くのか・・・藤孝様は、女狐のお気に入りだぞ」

「今の我らの力ではやれる事など、たかがしれておる」

「織田での我らは下っ端役人じゃぞ」

三人は懸念を惟政に伝える。

「皆さんには、昔の伝を使って頂き、織田に対して決起を促してくだされ・・・」

「それは可能だが、直ぐに露見して潰されようぞ・・・」

惟政の言葉に答える義道。

「なれば、露見しないように騒動を起こしましょう。我らにとって目の上の瘤である市を消せば、織田は天地が引っ繰り返る様な騒ぎになり、露見などしませんよ。これこそ一石二鳥でしょう」

微笑みを増す惟政に、高吉が問題点を突きつける。

「何を言い出すかと思えば、市の周りには、警護の者が犇めいて付いておる。最近では女狐の命を狙う者が、後を絶たんと言うからな・・・上手く行くとは思えぬ」

「確かに、普通に殺れば無理だろう・・・出てこい」

惟政は右手を上げると何処からともなく、忍びの者が数十人現れる。

「「「なっ!」」」

「ふっ儂の子飼いの者達よ。それに助っ人も頼んだ・・・御三方に挨拶せよ」

いきなり現れた忍びに驚く三人に、惟政が話すと一人の男が前に出る。

「杉谷善住坊と申す」

言葉短く自分の名前を名乗り、挨拶する善住坊。

「この男の火縄の腕は天下一だ、必ず市を仕留めてくれるだろう・・・しかしじゃ万が一もある。そこで儂の子飼いが、市の警備に付いた時に行動を起こせば良い。この者らは儂の本家からの出向したということにすれば、諜報に潜り込めるからな」

「しかしそれでは和田殿の立場が危うくなろう・・・」

「そうじゃ、そうじゃ」

義道と義統は惟政の事を心配する。

「良いのです、どうせ闇に帰るつもりでいたのです。女狐の首を取り、天下に名を残すことが儂の願いになった・・・それが叶えば、後の事などどうでも良い」

無表情な顔付きになり、三人を見つめる惟政。

暫く思案した三人であったが、高吉が代表するかのように前に出ると惟政に話しかける。

「分かった、お主のその願い、叶った暁には、闇で行う全ての権限をお主に与えよう」

高吉が惟政の手を握り締めて話す。

「お任せあれ・・・」

こうして、お市暗殺の計画が秘密裏に実行されようとしていたのである。

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