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獣達から見た天下  作者: 女々しい男
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三好の闇

元就が画策した反織田包囲網という名の罠・・・。

次々と織田に敵対する勢力が表立ってくる。

その中の一角を担う勢力、三好家は織田から、近畿内にあった勢力を駆逐され、阿波、讃岐、淡路の三ヶ国にまで追い詰められていた。

そんな三好家は、四国で力を持っていた亡き三好実休の子で、幼い三好長治を旗頭に団結し、織田に立ち向かっていた。

そんな三好家を裏で実権を握って操った、一人の女性が居た。

その名は小少将、実休の妻であり、長治の実の母でもある。

怪しげな魅力を持ち、その時代の権力者に取り入り、自身の欲望を叶える事に執着した女であった。

そんな小少将は隣に居る男に、一糸纏わぬ裸のままで、項垂れかかりながら、男の耳元で呟く。

「自遁、この様な田舎に何時まで居なければならないのですか・・・京が堺が恋しいわ」

「小少将様、今は織田の勢いが強いのです・・・暫くの我慢を」

「嫌よ、そう言えば、毛利からの使者が来たのでしょう?良い機会じゃないの・・・打って出ましょうよ」

「いや・・・兄が乗り気じゃ無いのです、それに安宅信康様も同意しておられます。それで長治様も・・・織田に立ち向かうのは愚策と思われたようで・・・」

顔を歪めて話す自遁。

「じゃ・・・殺ればいいじゃない」

何事でもないかの様に呟く小少将。

「まさか・・・お子である長治様すら殺すおつもりか」

驚きを隠さず、話す自遁。

「ええっ、十河を継がせた存保を担ぎ上げれば、いいじゃないの・・・あたしの考えに、逆らう子なんていらないわ」

「恐ろしい御方じゃ・・・」

「貴方は逆らわないわよね・・・自遁」

震える自遁を、抱きしめながら押し倒すと、二人は体を重ね合うのであった。

その後、小少将が自分が住む館に、自遁の兄である篠原長房、淡路水軍を率いる安宅信康、三好家の旗頭である三好長治の三人を食事に誘い、呼び出した。

「母上が我らを招くなど珍しい、しかし織田とは戦えませぬ。その事ははっきりと言っておきます」

長治が小少将を前にして、強い視線で訴えると、追従していた二人も頷く。

「出会って直ぐに左様な事を言わなくても、母も分かっておりますとも、良く来てくれたわね。仲違いしても敵が喜ぶだけだわ・・・」

小少将が怪しく微笑むと、長治は背筋を寒くする。

「ほら、貴方が好きな物を選んで用意させたのよ。良く味わってお食べなさい」

「・・・はい」

長治は食べたくは無かったが母の申し出に嫌とは言えず、食事に手を付ける。

「ほら、長房も信康も食べなさい・・・よく味わってね」

「「・・・はっ」」

二人も長治が食べているのを見て、断れなかった。

暫くして、三人が食べ終わると、一人の男が入ってくる。

「んっ?自遁ではないか、何故此処に・・・まさっ」

長房は弟を見て、悟る。

すると長治が体を震わせながら、横に倒れる。

それを見た信康が長治を介抱しようと立ち上がると、いきなり口から泡を出しながら、倒れこむ。

それを見た長房も体が震えだし、倒れこむ。

「ふふふっ、遅効性の痺れ薬よ。良く効くでしょ?あたしの師匠でもある松永弾正久秀直伝の薬よ。声は聞こえてるでしょうから、冥土の土産に教えてあげる。この薬、無味無臭なのよ。しかも摂取しすぎると、信康みたいに薬で死んじゃう事もあるのよ。凄いでしょ・・・」

小少将が自慢気に三人を見ながら、話しかける。

「なっ・・・なんという、、、おろかっ」

長房が小少将を睨みながら、声を絞り出す。

「だって・・・邪魔なんだもの、あたしは京や堺に行きたいの。帰りたいのよ、邪魔するなら死んでもらうしかないじゃない」

微笑みながら、話す小少将。

「はっ、、、ははっう・・・」

長治が胸を抑えながら、小少将を見つめる。

「苦しそうね、長治・・・貴方の父の元に逝きなさい」

小少将は呟くと、長治が持っていた太刀を拾い上げ、抜くと長治の胸に突き刺す。

その後、自遁に残りの二人を切らせると館に火を放ち、その場を去った。

この一連の騒動は織田の計略による暗殺だと風潮し、十河存保を旗頭に篠原自遁が表の三好を牛耳り、織田に対して侵攻を指示し、動き出そうとしていた。


三好が織田領内に攻める事を、画策しているという情報を掴んだ市は、直ぐに動き出す。

「姫様、お呼びですかな?」

弾正が勝手に部屋に入って、市に声をかける。

「弾正、ごめんなさいね。急に呼び出して」

市が筆を進めながら、弾正の顔を見ずに話しかける。

「相変わらず、お忙しそうでございますな。三好の一件ですかな?」

「流石、弾正ね、当たりよ。長治達が纏めて、暗殺されたわ」

「そうらしいですな、三好の者共には、織田が裏で指示して、行われた事になっておるようで・・・」

筆を止めて、弾正を睨む市。

「・・・冗談でもやめて」

「はっはっはっ、心に余裕が無ければ・・・過ちを犯し易いですぞ」

「もう、弾正にこの手の話では、勝てないわね・・・」

「年季が違いまする」

微笑みながら話す弾正に、毒気を抜かれ、呆れた顔をする市。

「織田に対して、柔軟な姿勢を示してきた長治とその様に画策していた重臣二人も纏めて始末されちゃうとは・・・中々痛いわ」

「でも良いではないですか。柔軟な姿勢を、織田が取る必要は無いと思いますぞ。織田が行っている事は、前代未聞。修羅の様な道を突き進む事が最善かと・・・理解させるには、時には恐怖や怖さを知らしめる必要もあると、儂は考えておりますがな」

「分かってるわ・・・だからその準備を進めてる最中よ」

「姫様に悪名がまた付くのですな・・・」

「仕方ないわ、あたしが望む世を実現させる為に、必要なのだから・・・」

「・・・・・・」

暗い顔をして、呟くように話す市を見て、何も言えなくなる弾正。

「そこで、弾正には三好の相手をして貰いたいのよ」

「姫様の頼みとあれば、断れませぬ。この弾正、死すら喜んで賜りましょう。」

「摂津、河内、和泉、紀伊の織田兵の裁量権貰ってきたから、使って。兄様にも許可もらったから大丈夫よ」

「なっ・・・それは儂に南西近畿地方軍長官に、任命されるという事で御座いますか」

驚いた顔をして、市を見る弾正。

「まっ臨時なんだけどね、でも三好を消したら、淡路、讃岐、阿波は貰えるんじゃない?大和は没収されるだろうけど・・・」

「この儂は梟雄と呼ばれた男ですぞ・・・もし儂が裏切ったら、どうなさるおつもりですかな」

「あらっ、裏切るの?でもそれなら・・・あたしの見る目が無かったって事で、仕方無いって諦めるわ」

「・・・敵いませぬな。姫様の為に、速やかに平定してみせましょう」

二人は見つめ合うと、二人で楽しげに笑い合うのであった。

話が終わり、弾正が部屋を出ると振り返り、市がいる部屋を見ながら弾正は呟く。

「姫様、闇に心を囚われぬ様に・・・」

弾正はこれから市が起こす、何かが分からず、不安を覚えるのであった。

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