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獣達から見た天下  作者: 女々しい男
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対策と発覚

元就との話が纏まると、市は岐阜に戻り、内密に人を呼び出す。

呼ばれたのは付き人衆と織田軍事機関陸軍部、諜報機関の重臣達。

市付きである者からは、

筆頭に犬(軍事陸軍部将補前田利家)

猿(諜報将木下秀吉)

熊(市親衛隊長熊田熊五郎)

蜂(諜報三佐蜂須賀正勝)

雉(市親衛副長雉出雉麻呂)

虎(市親衛女人衆筆頭井伊直虎)

鴉(軍事陸軍部一佐鈴木重秀)

の順に七人が、市に向かって、右の席に座る。

左の席には信長付きである者達が座っていた。

筆頭に明智光秀(軍事幕僚長、行政将補、兼任)

竹中重治(軍事二尉、行政一尉、諜報将補、裁判幕僚長、兼任)

堀秀政(軍事一尉、行政三佐、裁判将補、兼任)

百地丹波(伊賀市軍政長、諜報一佐兼任)

藤林正保(伊賀市軍政長、諜報一佐兼任)

望月出雲(甲賀市軍政長、諜報二佐兼任)

の順に六人座っていた。

左右の席に呼び出されていなかった男が一人、市の目の前に座る。

男の名は柴田権六勝家(軍事陸軍部幕僚長)であった。

「姫様、お呼びと聞きまして、急ぎ罷り越しましたが・・・」

部屋に居た者の顔ぶれを見て、戸惑う勝家。

「権六、久しぶりね、これから話す事は他言無用よ。もし漏洩したら・・・分かってるわよね」

市は冷たい声で勝家に話しかける。

「・・・御意」

目付きを鋭く変えて、頷く勝家。

「これから話す事は、兄様も知らないわ・・・」

「!・・・」

苦痛な表情を、表に出しながら話す市に、驚きで目を見開いて、口篭る勝家。

「家康が・・・十中八九、織田を裏切ると思う」

「なっ!」

勝家は思わず、声を出す。

周りで聞いていた者の中にも、驚きが隠せない者達が居た。

「毛利の翁が、炙りだしてくれるそうよ・・・織田の不穏分子をね」

「しかし!徳川様は信長様の盟友ですぞ、何故に裏切るなどと・・・織田に逆らう事の愚かさは分かっておりましょう!」

驚いていた秀政が市に反論する。

その言葉に頷く、勝家、犬、猿、蜂、虎、百地達。

「菊の言う通りだよ、あの竹千代にそんな事は出来ねぇ!幾ら姫の読みでも、今回ばかりは外れる」

犬が真っ赤な顔をして、市に叫ぶ。

「やっぱりね・・・多分兄様に伝えた処で、相手にしては貰えないでしょうね。それに露見すれば、竹千代はもっと用心深くなる。上辺だけ、服従されても困るのよ」

「・・・・・・」

反論していた者達が下を向く。

「あたしだって、竹千代を裏切らせたいなんて思わないわ・・・でもね、あの子には闇がある。生まれた時から、常に上に人が居て、顔色を伺って生きてきた。それがあの子の闇、力を欲しているわ」

「すまぬでおじゃる、その闇の一因を担っているのは、間違いなく麻呂でおじゃる。麻呂が義元であった頃、民を考える事を教え無かったでおじゃる」

雉麻呂が土下座をして、頭を下げる。

「いえ、人は状況に応じて、変わらねばならぬもの。雉麻呂殿が心痛める事は無いですよ。天下が治まれば、治めた者の考えに、応じなければならない。織田ならば民・・・なるほど、家康様は武家の世をお望みか」

半兵衛が呟くと十兵衛も頷いた。

「そうよ、半兵衛の言う通り、武家の世を願っているわ、あの子は・・・でもね、もし毛利の口車に乗らなかったら、改心して民の事を考えれたら、信濃、上野を与えて、東北を治めさせてもいいと、私は思ってる」

「なっなんと・・・」

「徳川は周りを、織田の友好国に取り囲まれてるからね。もう領土を増やせ無いと思ってる・・・だから、試すのよ」

市が悲痛な顔をして話すと、皆が市に向けていた顔を背ける。

「つまり、我らにそうなった時に対処せよと仰せになるのですね・・・」

十兵衛が、市の顔を真面に見ずに話す。

「それに間違いなく、あちらこちらで火種が飛び交うわ・・・覚悟しておいてね」

「「「「「御意」」」」」

皆に話が終わり、庭先に一人出て、月を見る市の前に、二人の忍びが現れる。

「あらっ半蔵じゃないの、久しぶりね。そっちの忍びは・・・毛利の翁の忍びね、確か、お面?とか言われてたっけ?」

悲しげな笑顔を、二人に向ける市。

「お久しぶりで御座います・・・姫様」

半蔵は苦痛な表情を浮かべて、頭を下げる。

「我は顔の表情を出す事が無いので・・・名は杉原盛重、座頭衆の頭領をしております」

無表情な顔で話すお面。

「そうなの・・・じゃあたしもお面って呼んでいい?」

「元就様より、お市様の言葉は、元就様の言葉であると言われておりますので構いませぬ」

「そんなこと言ったの?食えない翁だこと。でも、二人でここに来るという事は、乗ったようね。竹千代は・・・」

「・・・御意」

「まだ分かりませぬ!本多正信殿、酒井忠次殿が居られます!」

お面は肯定し、半蔵は望みを繋げる様に叫ぶ。

「無理よ・・・元就の手に乗った時点で、反省する事はないわ」

「しかし・・・」

「半蔵、もし私が知っていると伝えたら、どうなるか分かってるわね・・・」

言葉を繋ごうとする半蔵を無視して、無表情な顔をして、冷めた声で話す市。

「くっ・・・」

「・・・話しませぬ」

市の声を聞いて、お面は顔を歪め、体を震わせると、半蔵は唇を噛み締め、苦痛な表情を浮かべながら、同意する。

「逐一、情報を持ってきなさい・・・いいわね」

市の言葉に無言で頷き、姿を消す二人。

辺りに誰も居なくなると、市は呟く。

「御免ね、竹千代・・・」

市の頬には一筋の雫が、流れ落ちていた。


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