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獣達から見た天下  作者: 女々しい男
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長良川の戦の裏話

稲葉山城にて評定が開かれていた

「最早、先代様の謗言聞き捨てなりませぬ!」

長井道利が義龍の前に躍り出て話し出す

「叔父上、父上も悪気があって言っておるのではなかろう。我らに確りして貰いたいと思っての諫言ではないか?」

義龍は道利を説得しようとしていた

「何を呑気な!先代はあのマムシですぞ!殿を廃嫡し、弟の孫四郎、喜平次を跡目に考えておりまするぞ!」

「なっ、さようなことはあるまい・・・」

義龍は少し狼狽えて視線を泳がせる

「しかし、もう手は打っておりますれば、ご安心を・・・」

「何!それはどういう意味じゃ!」

義龍は一瞬怒りに身を任せそうになる

「それがしがお二人を始末致しました・・・」

日根野弘就が進み出て、辛そうに義龍にそう告げる

「なっ・・・」

絶句し、唖然とする義龍

「最早、先代様は殿がどのように考えようと、刃を向けまするぞ」

囁くように道利は義龍に向かって話す

「・・・・・・」

「この期に至っては先代様を亡き者とせねば、殿が食われまするぞ」

そう言って義龍を急かす道利

「皆、殿がたたれるのを望んでおりまする」

道利がそう言うと、その場にいた家臣が数名を残して、頭を下げる

「皆が同じでは無いが、殆どが父上を討てと言うのか・・・」

義龍が家臣達を前にして呟く

「殿!これは長井道利殿の考えが強う御座います。斎藤家の実権を握りたい道利殿の策略にございます!」

頭を下げ無かった数人の中の一人が前に出て話す

「光秀か・・・」

義龍は光秀を見ながら悩む

「黙れ!明智!なんの根拠があって、そのような戯言を申すか!お主など加わらなくて良い!城に戻って震えておれ!」

道利は光秀にそう言い放つ

「お主に言われとうはない!殿の命に従うだけじゃ!殿!」

光秀は義龍を強い視線で見つめる

「すまぬな。光秀、この期に至ってはどうにもならぬ。城に戻って謹慎致しておれ・・・」

義龍は光秀から目を逸らせながら話した

「安藤殿も稲葉殿も氏家殿も竹中殿まで同じ考えか!」

そう言って明智は彼らを見つめる

「・・・殿が決めたのなら仕方なし」

稲葉良通がその言葉を出すと、残りの三人は揃って頭を下げた

「・・・くっ」

光秀はその場から立ち上がると、義龍に一礼してからその場から去った

「後は殿が覚悟を決めて頂けたら・・・」

道利はにやりと笑いながら義龍に迫る

「・・・兵を集めよ、速やかに父上を討つ!」

義龍は静かに立ち上がり、静かに言葉を発した

「御意!」

稲葉山城で集めた兵はそのまま道三が居る、山下の私邸に向かった

道三はすぐに兵を集めると城下に火を放ち、大桑城に向かう途中の長良川周辺で義龍軍に追いつかれた

両軍は長良川を挟んで睨み合いの状態になった

「義父上、如何いたしますか?」

竹中重治が安藤守就に話しかける

「うぬ、この期に至っては仕方なかろう・・・」

守就は苦虫を噛んだような顔をしていた

「織田の姫との確約もまだ先と思っておりましたが、ここでたつのもありかと・・・」

重治が守就に囁くように呟く

「なっ!」

守就は驚いたように重治を見る

「義父上の事は全て分かりますれば・・・」

重治は微笑みを浮かべる

「今、動いても勝てぬわ。織田も援軍には間に合うまい」

守就はそう言って顔を顰める

「そうでしょうか?多分織田の姫が動くと思いますぞ」

「なっそんな馬鹿な・・・このような突発的な戦を予想などできるものか!もし現れたら、それは天に愛されているとしか言えぬわ!」

守就は重治に無理だと遠回しに伝える

「では愛されておるのでしょうね。あそこを見られよ」

重治が指差す先に、一騎の騎馬武者が、小さな女子を乗せて、槍を縦横無尽に振り回し、義龍軍を真っ二つに割っていく姿があった

「あれは戦の女神か・・・」

守就はその光景に目を奪われていた

「義父上、今が好機ですぞ!動きなされ。私が文を、稲葉殿と氏家殿に持っていきましょう」

「うむ!」

守就は頷くと懐に入れてあった文を重治に手渡す

重治はその文を二人に届けて、二人に裏切りを確約させる

明智が道三軍の援軍に来ると反撃に転じて、義龍軍が手をこまねいている時に、織田の先発隊に奇襲をかけられて混乱。西美濃三人衆がその際に、道三側に裏切った事が義龍軍の敗北を決定させる

その後、表向きは、義龍は信長に斬首されたことになり、義龍の幼い嫡男喜太郎は、敗戦の混乱に紛れて、逃げ出した通利に連れられて、美濃を脱出。行方が分からなくなっていた

義龍は名を熊田熊五郎と改めて、お市の付き人となる

「熊、この辺掃除しといて・・・」

市はゴロゴロとその辺を転がりながら、指示を出す

「はい、姫様」

熊は片付けをしながら市を見て、自分の息子を思う

「何時か、生きておれば会いたいものだな・・・」

熊は今日も市の世話を甲斐甲斐しくするのであった

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