犬の日常 その壱
「ふっ・・・」
俺は家に帰ると猛烈に落ち込み、何故かため息が漏れていた
「また、そのようにため息などついて!姫様に何か言われたのですか?」
松は俺を見てそう話す
「聞いてくれぇ~松ぅ~」
俺が松の胸に飛び込もうとしたら、綺麗に、それはもう綺麗に、避けられました
槍の又左の突進を躱すだと、やるな松
俺は額から血を流しながら話す
「なぜ、避ける・・・」
「何となく・・・」
俺は深く、それは深く落ち込んだ
「で、何が今日はあったのですか?」
「それがのう、姫様が城下に、散歩をするたびに、儂はお供するではないか・・・」
「はい、それがお前様の仕事でしょ?何がいけないのです?まさか!職務怠慢ですか!そのような事で、姫様から首だと言われたら、どうするんですか!働かずして、子供の養育が出来るとお思いか!働け!死ぬまで働け!死んでもいいから働け!」
松、最後の方は凄くひどいと俺は思うんだな・・・
「違うわ・・・シクシク」
俺は泣いた、泣いてもいいと思う
「ではなんなのですか?どうせ、たわいのない事でしょう?」
そう言いながら、ご飯の用意を始めた松、なにそれ、旦那様が、あなたの愛する旦那様が、辛い目にあっていると言うのにその態度・・・おかしくない?
お前、本当に俺を愛しているのか?
「聞いてくれ、その時に姫様が「犬、散歩行くわよ」って言うんだ・・・」
茶碗にご飯を盛りながら、相槌は打ってくれる松
「それで?」
「はいって返事したら、無言のまま目で殺そうとするんだよ・・・」
「ふむ?」
お前・・・旦那様も食べてないのに先に飯食うのか!
まあ良い・・・
「でな、「ワンっ」って言ったらご機嫌になって出かけるのだ・・・シクシク」
俺は泣きながら松を見た、彼女は驚いたような顔して怒りに震えだした
「なんてことなの!」
おおっ、自分の愛する旦那様が、そのような理不尽な事をされていると知って、怒ってくれているのか!ういやつじゃ、今日は頑張ってやるぞぉ!
「いやいや、そのように怒るな。姫様のいつもの戯言じゃ、儂はもう気にしておらんからのう」
俺は大人の対応をして、松を見ると冷たい視線に変わっている事に気づく、なぜ?
「何言ってるの?貴方の躾が良くなかったから、姫様にお手を煩わせてしまったわ・・・」
「えっ?」
俺は、その夜・・・従順な下僕となるように躾けられたのだった




