官兵衛の臣従
まずは播磨統一を目指す為の策を考える事、数日・・・
主である小寺政職の居る、御着城を二人の男が見つめていた。
「本当に行かれるのか?」
半兵衛が私の顔を真剣に見ながら問う。
「はい、どのような結果になっても後悔はしたくありませんから・・・」
私は覚悟を決めて、御着城に居る小寺政職の元に向かった。
「おおっ官兵衛遅かったのう、して織田家の返答はどうじゃった?儂を播磨の主と認めさせてこれたか?」
政職は身を乗り出して話しだした。
「織田よりの返答は、殿のお考え次第で御座います」
私は頭を深く下げて話す。
「なに?考え次第じゃと、どういう意味じゃ?官兵衛」
殿は首を傾げ、周りで聞いていた重臣達も呆気に取られていた。
「織田に降る気は御座いませぬか・・・」
私は頭を下げたまま、問い掛ける。
「降る?何を言っておる!お主を織田に行かせたのは、そのような事を言われる為に行かせたのではないぞ!」
殿が私を睨みつけ、叫ぶ。
「殿、周りの現状を認識して、播磨に住む民の事を考えて頂きたい」
顔を上げ、殿を見つめながら、私は嘆願した。
「ふむ・・・」
悩む殿を見て、呆気に取られていた重臣達が騒めく。
「殿!織田に下るなど認められませぬ。織田に降れば、我らに居場所など無くなりますぞ!」
「そうですぞ、織田に降っても使い捨てられるだけです!織田には敵が多い、上様も織田には不快感を顕にしておるとの事。織田など恐るるに足りませぬ」
「民を考えるなど笑わせる。武士の世に何を言っておるのやら、弱き民など気にしては、この世を生き抜く事など出来ませんぞ!」
重臣達が次々と政職に諫言しだす。
「相分かった、官兵衛下がれ、もうお主に期待などせぬ。小寺の姓も剥奪致す!姫路も召し上げる!とっとと出て行け!」
政職は吐き捨てるように叫ぶと、近習の者が私を取り囲む。
「殿、これにて、お暇致します。姫路は受け取りに来られよ・・・弓矢にてお出迎え致しましょうぞ」
静かに立ち上がり、その場を去る。
「その様に素直に返すと思うのか!捉えよ!斬っても構わん!」
一人の男が叫び、近習が私を取り囲む。
「義兄上か・・・」
「お主に兄などと呼ばれたくはないわ!」
政伊が私に斬りかかってくる。
「ふっ、義兄上に斬られる程、弱いと思っておられますか?」
私は素早く避けると、政伊に刀を差し出して柄頭を鳩尾に当てる。
「グフッ・・・、官兵衛」
「退け・・・」
蹲る櫛橋政伊に背を向け、周りを取り囲む者達を威圧しながら呟く。
周りを取り囲む者達は私の威圧と行動に恐れれ慄き、道を開ける。
その中を無言で歩きながら門に向かう。
門の前に火縄銃を構えた兵が待ち伏せをしていた。
「ここまでするのか!だが、いっそ清々しい・・・かかってこい!」
私は刀を抜き、火縄を構えた兵に向かっていく。
「今は、儂に任せ、引かれよ」
私の前に一人の忍びが現れ、煙幕を兵に投げつける。
兵達は煙幕に巻かれ、混乱する。その状況に助けられ、その場から去る。
「流石は半兵衛殿か・・・全て読んでらっしゃるとは」
私はその足で、姫路に戻る道中で黒田の旗を立てた兵が集まっていた。
その中に居た善助に私は声をかける。
「善助!御着が姫路に攻めて来る!」
「殿!ご無事で何よりで御座います。兵ならば、大殿と半兵衛殿が用意致しました。準備も配置も終わっておりまする」
「流石だな・・・」
私は用意された兵を見て呟く。
「良く戻られました、忍びの者は役に立ちましたか?」
兵に指示を出していた半兵衛が、私に気付き、近づきながら声をかけてきた。
「はい、一人の忍びに助けて頂いた。礼を言いたいのだが、半兵衛殿の手の者で御座いますか?」
「いえ、彼は姫様から、私達の助けにと遣わされた方です。伊賀の百地丹波殿です」
半兵衛がそう告げると一人の忍びが、私達の前に現れる。
「今、紹介された百地じゃ。半兵衛殿の指示に従ったまで、礼は半兵衛殿に申されよ」
百地が顎髭を撫でながら話す。
「助けて頂き、有難うございます。まさか伊賀三領主の百地様が、着ていらっしゃるとは思っておりませんでした」
私は半兵衛と百地に頭を下げながらお礼を言う。
「様付には慣れておりませんでな。様は要りませぬ、百地と呼んでくだされ」
百地は微笑みながら、私に話しかける。
「話は流れたようですな、如何いたしますか?」
半兵衛が私に問い掛ける。
「御着が兵を集めるのに時間が掛かりましょう・・・攻めます」
「そうですね、それが一番良い手でしょう。百地殿にもお手伝い頂きたいのですが、宜しいですか?」
「良いぞ、我ら伊賀百地衆の力をお見せしよう」
半兵衛と父上に用意してもらった兵を連れて、御着城を攻める。
百地が御着城に忍ばせていた配下の助けもあり、戦らしい戦も無く、御着城は陥落するが、小寺政職と櫛橋政伊は既に退去して志方城に逃げ込んでいた。
その後、官兵衛は正式に織田に臣従し、播磨の攻略に乗り出して行くのであった。




