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Snowman Christmas

作者: 水無月

季節外れです。

Snowman Christmas     


ミキがやって来たのは冬に入って間もない頃でした。ミキは白い体をしたウサギでした。だから、茶色のウサギしか見たことのなかった森の動物たちはとてもビックリしました。

 それに元気いっぱいの森の動物たちと違って、ミキは非常に物静かでした。そしてミキの醸し出す雰囲気がどことなく不思議だったので、敏感な森の動物たちはミキにはあまり近づきませんでした。

 なのでみんなが広場で遊んでいるときも、ミキは一人ベンチで座っていました。

 ミキはその事をあまり気にしていないようでしたが、やはり少し寂しかったのか、たまに遊んでいる動物たちの方をチラチラと見ていました。

 ある日ミキがいつものようにベンチに座っていると、キツネのコン吉が話しかけてきました。

 コン吉は少しドジでおっちょこちょいなところがありましたが、素直で思いやりのあるキツネでした。

「ねえ、何で一緒に遊ばないの?」

ミキは驚いたようにコン吉を見ました。今まで進んでミキに話しかけてきた動物はいませんでした。

 それでもミキは黙っていました。そうすると、コン吉は言いました。

「ずっと、ベンチに座っているなんてつまんないよ。だから遊ぼうよ。遊んだ方が体も温まるよ。」

そうしてコン吉は半ば強引にミキを遊び仲間に入れたのでした。

 ミキはウサギでしたから、とても足は速かったので、みんな鬼ごっこをやってもミキを捕まえることはできませんでした。

 そこでみんなが走る練習をはじめました。もちろんコン吉もやりました。

 また、ミキはかくれんぼをやっても負けませんでした。体の色が白いので雪にまみれると、見えなくなってしまうのです。

 みんながズルいと言いました。そこでコン吉はある日、鈴のついた赤いマフラーをミキにプレゼントしました。

 これでかくれんぼをやっても、ミキはマフラーのおかげで見つけやすくなり、鈴の音のおかげで何処にいるのかが分かりやすくなりました。

 もう、ミキに不満を言う動物はいませんでした。

 結局は、ミキも自分たちと同じ動物であることを認識したのでしょう。

 ミキは普通に動物たちに溶け込めました。

 それはある意味、コン吉のおかげだったので、ミキは1週間に一度、日曜日にコン吉の家に行き、コン吉に不思議な話をしてくれました。

 それは遠い外国の話であったり、雲の上にある国の話であったりしました。

 コン吉はその話を聞くのが楽しみで、日曜日になると窓から身を乗り出してミキが来るのを今か今かと待ち続け、マフラーの鈴の音が聞こえやしないかと耳をすましたのでした。

 

 

その年のクリスマスイヴの日のこと、コン吉はミキの家に朝早くから遊びに行きました。

 すると、驚いたことにミキの家の前に何かが立っていました。

 それはよく見ると、雪のかたまりで、2つの丸い雪のかたまりを重ねたような形をしていました。

 ミキは下の方の雪のかたまりに、雪をつけて何やら補強していました。

 コン吉はミキに聞きました。

「これ、なあに?」

ミキは言いました。

「雪だるまだよ。」

その頃この森には雪だるまを知っている人はいませんでした。

 そしてミキは悪戯っぽく笑って言いました。

「あれ、コン吉君。知らなかったの?」

「え?何を?」

「サンタさんはねえ、雪だるまのある家にしか来ないんだよ。」

とミキはでたらめを言いました。本当はコン吉に雪だるまを作って欲しかったのかもしれません。

「え?本当なの?」

とコン吉はビックリして言いました。というのも今年、コン吉はサンタさんに格好いい色のマフラーを頼もうとしていたのです。もちろん、それはミキに見せて自慢するためでした。

「うん、そうそう。だからコン吉君の家にも雪だるまを作ろうよ。」

「うん、作ろう作ろう。で、その雪だるまを作るには何が必要なの?」

とコン吉は聞きました。

 ミキは雪だるまを見上げて言いました。

「えーっと、まずバケツと、黒い木の実と、ニンジンと、木の枝と、ボタンだね。」

「分かった。木の実と、木の枝と、ボタンは僕が用意するよ。他のはミキが用意してくれる?」

「うんいいよ。じゃあ、後10分くらいしたらコン吉の家に行くね。」

とミキは言いました。


 コン吉は家に帰るとまず机の中を探しました。

 昔、コン吉は木の実を集めていたことがあったので、机の中にまだ幾つか残っているはずでした。

「うん?」

すると、コン吉は木の実ではなく、別のある物を見つけました。

 それは少し埃をかぶった手紙でした。

「これは・・・。」

それはコン吉と仲良しだった、タヌキのポン太君が引っ越してしまった時に渡してくれた手紙でした。ちょっと下手な字で「こんきちくんえ」と封筒に書かれています。

「ぼくのことわすれないでね。ポン太。」

と手紙には書いてあります。

 コン吉はそれを見ると少しだけ胸が痛みまあした。もちろん、コン吉はポン太君のことを忘れてなんていませんでしたが、下の方にポン太君のお母さんが書いたらしき引っ越し先の住所が書かれていたのに、コン吉は手紙を一度も出さなかったのでした。忘れてたわけではないのに・・・。

 コン吉はそれをそっと、机の中に戻しました。


 コン吉は次に木の枝を探しに外へ出ました。

 冬になると、木の葉も落ちて木は枝だけになります。その枝を取ろうと思ったのです。

「よお、コン吉何やってるんだい?」

と不意に上から陽気な声が聞こえてきました。

 コン吉は上を見上げました。木の上に立っているのは友達のキツツキのツキ夫君でした。

「ああ、ちょっと木の枝を集めにね。」

「木の枝?そんなもの何に使うんだい?」

ツキ夫君は朝から大声で言います。いつも元気いっぱいなのです。

「雪だるまを作るんだよ。」

「雪だるま?何だいそれは?要するに雪でできたダルマかい?ははあ、そうかそうか。」

何やらツキ夫君は納得したようです。

「ん?待てよ。ダルマってことは、転がしてもまた起き上がるんだよな。あれ?でも雪でできたダルマでもまた起き上がるのかな?うーん。」

するとツキ夫君、何やら考え込んでしまいました。ツキ夫君はこうやって考え込むことが多くて、長いときは30分も考え込んでいるのでした。

 なのでコン吉はツキ夫君に気づかれないように、地面に落ちていた何本かの木の枝を拾うと、そそくさと立ち去りました。

「んーと、やっぱり雪でできたダルマじゃあ、起き上がらないんじゃないかな。なあ、コン吉。あれ?」

ツキ夫君がコン吉がいないのに気付いたのはそれから10分後のことでした。


 コン吉はお母さんに頼んで余っているボタンを何個か貰いました。

 これでミキに頼まれた材料、木の実・木の枝・ボタンが揃いました。

 間もなく、ミキがやって来ました。手にバケツとニンジンを持っています。

「さあ、作ろう。」

「うん!」

 まず、ミキとコン吉は辺りに積もっている雪をかき集めました。そして、なるべく丸い形にします。

 これが意外と難しいのです。

「えーと、こうやって。」

「丸く、丸く。」

そしてある程度の大きさとなったら、雪の積もった地面の上で転がします。すると、面白いことに雪玉は段々と大きくなっていきます。

「わー、ほんとに大きくなってく!」

こうして二つの大きな雪玉が出来てきました。

 そこへクマのマー君がやって来ました。

 マー君はとても力持ちで、体も大きいのでみんなのリーダー的な存在です。コン吉は彼が少し苦手でした。

「おい、コン吉。何やっているんだ?」

「雪だるまを作ってるんだよ。」

「雪だるま?」

マー君は首を傾げました。

「聞いたことがないな。何だ?それは。」

コン吉は説明しました。すると、マー君は興味なさそうに

「ふーん、そうなんだ。それより雪合戦をしようぜ。そっちの方が面白そうだし。」

「え…。いや今は雪だるまを作ってるから…。」

「えー、何だよ。そんなのつまんないだろ。ほら、みんな待ってるし。」

とマー君が指差す方向には確かに、何人かの動物たちがマー君の方を見て待っていました。

「いや、いいよ。雪合戦は明日でもできるし。」

本当はミキの言った「雪だるまのある家にしかサンタさんは来ない」という言葉が念頭

にありましたし、こんなにも面白そうな雪だるまに興味を示さないマー君にいらいらしていたこともありました。

「ふん。じゃあいいよ。」

とマー君は言い捨てると、待っている動物たちの方へ走っていきました。

 その後二人は無言で作業を続けました。しばらくしてミキがポツリと言いました。

「コン吉はどうして雪合戦に参加しなかったの?」

「え?」

ミキは、楽しそうに雪合戦をやっているマー君たちの方を見て言いました。

「別にわたしに合わせなくても良かったのよ。」

「いや・・・。だってその・・・。」

コン吉はもごもごと何やら呟いていましたが、やがてキッパリと言いました。

「遊んでもいないのに、雪だるまより雪合戦の方が面白いと言ったマー君がおかしいと思ったからね。」

 それを聞いてミキは驚いたように目を大きく見開きました。そしてにっこりと笑いました。

「そうだね。」

そしてまた二人は作業を続けました。

 二人の作業は順調に進みました。しかしある所まで進むと問題が発生しました。

 雪玉を大きく作りすぎたのです。

 雪だるまの頭の雪玉を、雪だるまの体の雪玉に乗っけるのですが、肝心の頭の雪玉が持ち上がりません。

「もう、もちあがらないよ。雪玉の雪を少し減らそうよ。」

とコン吉は疲れて言いましたが、ミキは

「ダメ。」

と言いました。何故ならミキはあきらめるのが嫌いなのです。それに

「雪玉の雪は、丸めた時点で雪だるまの体の一部なんだよ。それを削るなんて可哀そうだと思わない?」

コン吉は閉口しました。こういうときのミキは頑固です。

 そうして二人でウンウン唸って何とか雪玉を持ち上げようとしていると、誰かが後ろからひょいと雪玉を持ち上げました。

「「え?」」

と二人はびっくりして後ろを振り向きました。

 何と真っ赤な顔をして重い雪玉を持ち上げているのはマー君でした。

「よっこいしょ。」

や、と言うとマー君はドスンと頭の雪玉を体の雪玉の上に乗っけました。

 コン吉はびっくりしてマー君をじーっと見つめました。マー君は照れたように頭をかくと、言いました。

「いや、やっぱりこっちの方が面白いかなって思ってな。」

コン吉はまだびっくりしていましたが、ミキはにっこり笑って言いました。

「ありがとう、マー君。今度はみんなで作ったらどう?」

「あ?ああ、そうだな。おおうい、みんな。」

とマー君は、マー君が抜けて雪合戦を一時休戦していた他の動物のみんなに呼びかけました。

 それからは大賑わいでした。みんなが一斉に雪だるまを作り始めて、誰が一番早くできるか競争していました。

 その間にミキとコン吉は雪だるまのお腹にボタンを、雪だるまの目には大きい木の実を二つを、口には小さい木の実を並べました。そして鼻にはニンジンを立てて、腕に木の枝を差し込みました。

 最後に帽子の代わりにミキの赤いバケツを乗っけるのですが、小柄なミキとコン吉では届きません。

「どうしよう。」と思っていると、マー君がやって来てひょいと乗せてくれました。

 コン吉が

「ありがとう。」

と言うと、マー君は頭をかいて

「まあな」

と言いました。そして、他の動物たちの手伝いに行きました。

「マー君、雪合戦の方が面白いって言ってたけど…どうしたんだろ?」

とコン吉が呟くと、ミキが言った。

「マー君は最初から雪だるまを作りたかったのよ。」

「え?」

「気が付かなかった?マー君は最初に雪だるま見たときから、面白そうだなって目で見てたのよ。」

動物たちにとって、目や表情はとても大事です。相手がどんな気持ちでいるかこれを使うのが一番です。

「気が付かなかったよ…。」

「コン吉はその時『雪合戦の方が面白い』って言ったマー君に腹をたててたから気付かなかったのね」

とここまで言うと、ミキはコン吉の方をまっすぐ見て言いました。

「コン吉の言うとおり、やってもいないのに、面白くないか否かを決めつけるのは良くないと思う。だけど、そうやって少しでも腹をたててると、相手の気持ちに気づかないことが多いから注意しようね。」

コン吉はその言葉を胸に刻み込みました。

「マー君はここの動物たちのリーダーよ。あの時点で雪だるまを面白いと思える人はそういなかったでしょうから、マー君は多数派の雪合戦に参加せざるをえなかったけど、本当は雪だるまをやりたかったのよ。コン吉、次からは気づいてあげるといいわ。マー君の気持ちを、そして彼という人柄にも。」

確かにコン吉はマー君のことはあまり快く思っていませんでした。だけど、ミキの言うとおりです。

 次からはマー君とも仲良くなれると思ったコン吉なのでした。


 夢中で遊んでいると時を忘れるもので、動物たちがみんなそれぞれの雪だるまを完成させると、もう真っ暗になってしまいました。

 もっとも、冬なので日が落ちるのが早いというのもありました。

 マー君や他の動物たちは雪だるまを残していくのが、少しばかり残念そうでしたがコン吉とミキに手を振って、それぞれの家に帰りました。

 さっきまでガヤガヤしていたコン吉の家の前は嘘のようにシーンっとしてしまいました。

「ねえ、ミキ。雪だるまってやっぱり春になると消えちゃうのかな?」

とコン吉が聞くと、ミキは虚を突かれたように目をぱちくりさせました。

「そりゃそうよ。でもどうして?」

 コン吉は出来上がった雪だるまを見て言いました。

「いや、あんなに苦労して作ったから、消えちゃうのが勿体ない気がしてね…」

 ミキは頷いて言いました。

「確かにそうね。でも、世の中にはいつかは無くならなきゃいけない物は沢山あるのよ。雪だってそう。」

 でもね、とミキは付け加えて言いました。

「その無くなった物をいつまでも残しておく方法もあるのよ。」

「その方法って?」

ミキは言いました。

「忘れないことよ。」

「忘れない?」

コン吉は復唱しました。

「そう。」

ミキは強く頷きました。

「無くなっていく物は忘れられたくないはずなのよ。忘れ去られたいって思ってるものはないはずよ。」

コン吉の胸に何か罪悪感のようなものが浮かんできましたが、それが何だかよく分かりませんでした。

 冬の夜空はキレイなもので、コン吉もミキも黙って見とれていました。

 すると、ミキが思い出したように言いました。

「そうそう、コン吉君。言い忘れたけどね、サンタさんは遅くまで起きている家には来ないんだよ。」

「え、本当なの?」

とコン吉はビックリして言いました。というのも、コン吉は今年こそはサンタさんの姿を一目見ようと企んでいたからです。

「そうだよ。サンタさんは姿を見られちゃいけないから、みんなが寝てからコッソリとプレゼントを届けるんだよ。だからずっと起きてたらサンタさんはプレゼントを渡そうにも渡せないのよ。」

「へえー。」

とコン吉は納得しました。

「それじゃあ。」

「バイバイ。」

とミキは家へ帰っていきました。

 コン吉は家に帰るとお母さんに言いました。

「ねえねえ、お母さん。」

「なあに?」

「あのさ、サンタさんは遅くまで起きてる家には来ないんだってね。」

「へえ、そうなんだ。」

「うん、ミキが言ってた。だから、お母さんもお父さんもなるべく早く寝てね。」

「そうかい、じゃあなるべくそうするよ。」

 そしてコン吉のお母さんとお父さんは夕食を食べ終えると、コン吉と同じ頃に寝ました。


 コン吉の家族がみんな寝静まったってから約一時間後…

 雪だるまに向かって歩いていく動物がいました。

 ミキです。

 ミキは今日コン吉と一緒に作った雪だるまの前に立ちました。

 ミキはコン吉がくれたあの鈴のついた赤いマフラーを雪だるまにかけました。そして手を合わせて、目をつぶりました。

その姿は祈りを捧げる天使のようでした。

そして一言二言何か呟きました。

 それが終わると、自分の家の方向へ去っていきました。


 それからまた一時間後、サンタさんがコン吉の家にやって来ました。

 サンタさんはソリからひょいと降りて、屋根に着地しました。そして耳をすましてコ吉の家族がみんな寝ているのを確認しました。

 そしてひとつ頷くと、煙突に袋を担いだまま入りました。

―コン吉君はマフラーだったな。

 暖炉に着地すると、袋をごそごそと手探りして白と黄色のマフラーを取り出しました。 

 そして寝ているコン吉の枕元までソロリソロリと歩いていき、そうっとマフラーを置きました。

―よし、次の家へ行くか。

とサンタさんは思ったその時、

 のし、のし。

何か音が聞こえてきました。

―ん?何の音かな?

 しかしもう音は止んでしまいました。

―気のせいかな。

とサンタさんは思うと、また器用に暖炉からするすると煙突を登っていきました。

 そして屋根につくと、トナカイに引かれたソリにひょいと乗ります。

 するとサンタさんを乗せたソリはトナカイに引かれて上へ上へと、登って見えなくなりました。


 サンタさんがいなくなってから数分後、

 のし、のし。

とまた音が聞こえてきました。

 一体何でしょう?

 のし、のし。

段々大きくなってきます。

 ギィーっとドアが開く音がします。

 何かが家に入ってきたようです。でも一体誰が?

 それは何と雪だるまでした。あのコン吉とミキが作った。

 雪だるまは玄関に入ってくと、マットの上にトンと飛び乗りました。

 すると、不思議なことにすーっと玄関マットが雪だるまを乗せたまま滑っていきました。

 向かう先は台所です。

 台所にはコン吉君のお母さんが洗い残した食器がありました。

 普段、お母さんは寝る前に洗っておくのですが、今日はコン吉に急かされて早く寝てしまったのでやり残してしまったのです。

 雪だるまはそれをじーっと見つめると、木の枝で出来た腕を器用に使って食器を洗い始めました。

 そして全部キレイに並べておきました。

 次に向かう先はお父さんの部屋です。

 お父さんの部屋は、散らかってました。こちらも同じくいつもは寝る前に片づけているのですが、今日は早く寝てしまったので、片づけられていません。

 雪だるまはこれもじーっと見つめると、また木の枝の腕で部屋の片づけをしました。

 雪だるまが部屋を出たときには、部屋はすごくキレイになっていました。

 それが終わると雪だるまは外へ出ていきました―。


 翌朝、プレゼントに大喜びしているコン吉でしたがお母さんとお父さんはすごくビックリしています。

 やり残していた食器洗いも、部屋の片づけも、全部完璧に済まされていたからです。

 一方でコン吉は玄関マットがびしょ濡れなのに気が付きました。

 ふと、予感めいたものを感じて外へ出ると、昨日ミキと一緒に作った雪だるまが溶けているのが目に入りました。

 それを見るとコン吉はビックリしました。

 おかしなことに、雪だるまの位置が作ったときと変わっているのです。

 そして他の動物たちの雪だるまはあまり崩れていないのに、その雪だるまだけ少し解けていました。おまけに頭のバケツもありません・

 まるで何か大仕事を終えたかのように…

 コン吉は台所の流しの中に、一枚の木の葉が落ちていたのを思い出しました。

 そして、雪だるまの手を見ます。確かに四枚ついていたはずの木の葉が二枚になっていました。

 コン吉は庭のまわりをぐるぐる回ってみると、もう一枚の木の葉を見つけました。

 間違いありません、あの雪だるまの木の葉です。

 見ると、その横の雪の上になにやら文字が刻んであります。

 メリークリスマス

とそこにはそれだけ書いてありました。

 そして当たり前のように、赤いバケツもそこに置いてありました。

 コン吉の耳に昨日のミキの言葉が蘇ります。

―無くなっていく物は忘れられたくないはずなのよ。

 もしかしたら雪だるまも忘れられたくなかったのかもしれません。

 雪だるまも雪ですから、いつかは溶けてしまいます。そしてまた次の冬が来たとき、動物たちはまた別の雪だるまを作るでしょう。

 そうすると、前に作られた雪だるまは忘れ去られてしまいます。

 それが寂しくて嫌だったのかもしれません。

 コン吉は少し考えると、雪だるまの帽子のバケツの中にせっせと土を入れ始めました。

 そして雪だるまの口にある木の実を一つ取ると、土の中に植えました。

 バケツの植木鉢の中に入った木の実は春になれば芽が出るでしょう。そして成長していくでしょう。

 そしてそれを見る度にコン吉は、一番最初に作ったその雪だるまのことを思い出すことにしました。

 コン吉は雪だるまを見ました。雪だるまが笑っているようにも見えました。

 冬の朝の寒い風が吹き抜けていきます。不意にコン吉はポン太君に手紙を出そうと思い立ちました。

 お母さんの朝ごはんの時間を知らせる声で、コン吉は走って家に帰っていきました。

 コン吉が植えた木の実は春になると、「雪だるまの花」として、成長し、花も咲かせました。


 世の中には「メリークリスマス」や、「ホワイトクリスマス」という色んなクリスマスがあります。

 ですから、雪だるまが作られるクリスマス、「スノーマンクリスマス」というのがあってもいいかもしれませんね。

                               

 でも一体どうして雪だるまは動いたのでしょう?ミキは一体何と唱えたのでしょう?

 それを想像するのも楽しいかもしれません…




-Fin-




この駄作を最後まで読んでいただき本当にありがとうございます…。

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