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monster 2

 愛原夏美、九條翔とは旧知の仲で、運び屋兼取り立て人を勤めている。裏世界の超危険人物。『明るい暴力』、『略奪者』、『金剛力士』等の、あまり喜ばしくない渾名を複数持つ。身長195センチ、爆乳、ノーブラ。

 あの後、二時間程かけてトラックで博多市にあるアパートまで愛原さんに送ってもらい、引っ越しの手伝いまでしてもらった。

 荷物は制服と教科書、それから二つの鞄。鞄は二つとも中身がぎっしり詰まっており、1つは中身の入った何本もの注射器と下着類。ボクサーパンツとシャツが5日分。そしてもう片方の鞄は、金の延べ棒がぎっしり詰まっていた。どうやらこの金の延べ棒で生活しろと言うことらしい。後、奥に携帯電話もあった。

『んじゃ、アタシは帰るバイ。アンタは可愛いげがないし、可愛くもなかー。むさい男見とっても蹴飛ばしたくだけだけん後は勝手にしい。アンタには会いたくもないけんね』

 と好き放題言われた後、愛原夏美は俺の前から立ち去った。殴り倒したい気持ちがめらめらと沸き上がる言い種だったけど、九條翔の知り合いで、前々からとてつもなく強いと言い聞かされていた分と、愛原さん本人の暴君気質が相まって、なにも言い返せなかった。畜生、俺は昔からああいう暴君気質の女に勝てた試しがない。多分俺の姉貴が暴君気質の女で、小さい頃に何度も痛い目に逢っているからだろう。

 俺は憂鬱に浸りながら、日が沈みかけた博多の街をみた。

 俺はこの街も、ここの人たちも、何も知らない。その上に呪いにかかり、九條翔に飼われてから、一度として外を出ていない。

 見知らぬ土地とに対する不安と、九條翔からの解放に対する喜びの二つに圧され、何だか涙が出てきた。ヤバイ、何か止まらん。

 この世の地獄から一ヶ月が経ち、九條翔に飼われて三週間が経ち、止めの今日の博多移動で、何か色々とありすぎて 精神的に参っているんだろう。

 とりあえず俺は泣いた。満足するまで泣いた。泣きながら、離ればなれになってしまった家族のことを想った。お節介で優しい母さん、頑固で厳格な親父、憎たらしくて弄り甲斐のある妹の涼子、そして会えば喧嘩ばかりしていた姉貴。

 糞、嫌いで仕方なかった涼子と姉貴を思い出すだけで、もっと悲しくなる。

 ホームシックではないけど、とにかく悲しかった。

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