アリス①
「だ、堕落プログラム」
「はい」
まっすぐに俺を見つめる目。
そこには優しい光。
こんな目で見られたこと、なかった。
会社では凍てつくような冷たい目。
親からも見放され、友人たちからもどこかマウントをとるような態度の数々。
「か、神谷 純」
「それが俺の名前。です」
自然と名前を言っていた。
「覚えました」
「では、神谷さま。わたしの名前はアリス。とお呼びください」
いまいち実感が湧かない。
未来の英雄? そんなこと。信じるほうがおかしい。
だけど、俺は。
「では、神谷さま」
「早速、甘えてください」
おんぶのポーズ。
それをとる、アリス。
「歩く。という苦行。それを神谷さまに負わせるわけにはいきません」
「さっ、はやく」
無機質な顔。
それをこちらに向ける、アリス。
「あ、あのアリスさん」
「なにか?」
「いくらなんでもそれは」
「いえ。徹底的に甘えてください」
「神谷さまの足。それを疲れさせるわけにはいきません。さっ、はやく」
ウィーン…
と、音をたてるアリスの背。
そして発光する。
「な、なにこの光」
「これは未来の技術。理想的な母のぬくもりを再現する光。わたしの背におんぶされることにより。神谷さまは懐かしく理想的な母の温もりを感じることができるのです」
す、すごい。
「さっ、神谷さま」
「わたしの背に」
「う、うん。ちょっと恥ずかしいけど」
おんぶされる、俺。
うわ。
ほ、ほんとに懐かしい温かさ。
「では、神谷さま。あなたの家に向かいます」
「あ、あの」
「なにか?」
「お、俺の家の場所。知ってるの?」
「既にプログラムされていますので、ご安心を」
歩き出す、アリス。
こうして俺は、アリスにおんぶされ家へと運ばれていくのであった。
〜〜〜
「神谷さま」
「ここが」
「うん。俺の部屋。ありがと。俺、重かったでしょ?」
「いいえ」
「ほんとに?」
「はい。数十トンの重さにも耐えられるボディですので」
さらっとすごいことを言う、アリス。
「神谷さまもすごい」
「素直にお礼を言えるなんて。すごい」
「そ、そんなすごいだなんて」
ぴぴぴ…
「分析中。神谷さまの心拍数の上昇を確認」
「えっ?」
「神谷さまが。今、求める甘えを解析」
ぴぴぴ…
「結果。膝枕」
「膝枕モードに移行します」
「さっ、神谷さま。わたしのお膝の上をお使いになってください」
ごくり。
多分、赤くなっていたであろう俺の顔。
それを見つめーー
にこり。
と、アリスは笑ったのであった。




