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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第-1章 ステーツシティ
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(5)

 画面が動き始める・・・。

 低いファンの音が消えた。これは三千世界コンソールモードに切り替わった証拠。

 つまり三千世界との接続準備状態になったということだ。

 (ビンゴ!)

 そして荒廃都市ローグランとの接続。接続は三千世界のオープンエリアに展開される。

 ローグランのメインフレームラプラタが主を出迎えた。ラプラタはトルクが飼育するコンピュータだ。


 [WELLCOME BACK MY BOY THIS IS LA PLATA;


 真っ黒な画面に波紋が広がった。

 この波紋はラプラタが活動を開始した合図。

 そしてレイヤコントロールシステムへの接続。


 [INPUT PW;”INITIATION LA PLATA”;


 ”イニシエーションラプラタ”それは膨大なパターンDBと改良素数DBを備えたパスワードクラッカー。

 頻繁に変更されるPW。

 1アタック毎にジェネレータの傾向解析が世界中で成されてしまう。ハッカーの間で共有され蓄積されてしまう。

 最近の傾向解析とその蓄積を侮ってはいけない。

 驚くほどの的中率を誇る。

 一流のメンタリストが人の心を簡単に読むように。

 キャラクタ上は長大なPW文字列を高速で照合していくように見える。

 高速かつ熱を出さず0から1ヘ。偽を真へ変えていくように。

 そして本来人が決して見ることができないであろう三千世界のレイヤ制御画面がものの数十秒で表示された。


 [PW INPUT COUNT(1.026ts);OK

 [ID SEARCH;OK

 [ANATHERWORLD MONITORING MODE;ON

 [LIST OF LAYERS;・・・・・


 「親レイヤだけで数千も存在する。慎重に・・・フレームを・・・間引いて・・・壊す!」

 ・・・・・

 世界が一瞬歪む。それは瞬電したときのモニタを思わせる。

 世界が瞬電した瞬間。


 人がこの瞬間の”0”を認識することはない。けれど”0”から”1”へ立ち上がる瞬間の0.99や1.01を物理的に拭い去ることはできない。

 時間や数字がデフレーションを起こしはじめる。

 一が百になり、”1”と”0”や”on”と”off”の間にも人間は何かを感じ始める。

 零という暗闇に敷かれたシーツが次第に持ち上がり、隙間から無機質な目がこちらを覗く。

 これは召喚された悪魔なのかそれとも今際の際にみる幻影か。


 「何か一瞬息苦しかったんだけど・・・」

 サルナが素っ頓狂に違和感を訴える。

 「気のせいだよ」トルクは目をそらす。


 [LAYER** RELOAD OK・・・・・


 「それに何か変なの見えたんだけど・・・一瞬周りが暗くてなんか足元が持ち上がって・・・寒気がして・・・あれ何?」

 「壊しちゃいけないところを壊したかな。まあ、大丈夫そうだし。滅多に襲ってこないし」

 「えっ、おそっ、襲うって・・それってどういうこと・・・」サルナは背筋になにか冷たいものが走る。

 「気のせいだよ。それよりバスルームだ」


 バスルームにはバスタブで汚れた水に浸かったアーノルドが苦悶の表情を天井に向けていた。

 不思議と臭いはしない。

 それもそうだ。レイヤ内では腐朽菌が繁殖するはずもない。

 サルナは思わず目を逸らす。

 再構成されてレイヤから分離されたのは上半身のみだった。

 しかも皮膚は水レイヤのゴミと解釈されたらしく、水から出ていた顔以外のものは全てなかった。

 きれいに皮膚のみがバスタブの水と同化しきっていた。

 「確か・この人は・・フォーリナー・・・だったのか・・・」

 トルクは思い出した。ハンドルネーム=コミュニティコードを。

 彼のコミュニティコードはフォーリナー。コミュニティで何度か見かけた男。

 ハンドルネームで全てが完結する世界中のコミュニティ。名前では解るはずもなく。

 皮肉にも大口を開け天井を見つめる顔は科学を熱く語る男のものだった。

 もっともモニタ越しでだが。


 フォーリナー、進化物理学をテーマにありとあらゆる論客を論破し続けた男。派手な論述とは裏腹に清貧な生活を欲していた。

 以前フォーリナーの講演を覗いたことがある。世界中の学者の熱狂し、そして今後の学会を牽引するであろう才能を誰もが認めていた。


 その男がバスタブで殺されていた。

 トルクは背筋に冷たいものが流れると同時に怒りが込上げる。

 (そうだ、この殺人鬼とすれ違っている。やつだ)

 トルクの中で推測が確信に変わっていく。

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