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「じゃあ上着と靴がほしい。かっこいいやつ」
「今度は極端に現実的ね。」
「ローグランでヒッキーしてると、まともな服なんて必要ないんだよ」
「なるほど・・・まともじゃない服・・・普段は防護服とか宇宙服とか・・・」
「ローグランを何だと思ってるんだよ」
「それじゃあ・・・普段はぼろきれ・・・それともハダカ・・・ってことでいいのかしら」
「・・・そんな訳ないだろ」
「先進文明都市にもそういう嗜好の人は少なからず・・・」
「ち・が・う。ちゃんと服着てただろ」
「まあ、いいわ。服はまかせといて。それから一応言っておくけど・・・その端末はパーソナルID無しでは動くはずないんだけどね」
「自分のパーソナルIDは持ってないけど他人のモノは三つほど持ってる。親切な人が良心価格で譲ってくれたんだよ」
「あきれた」
高層ヘリポートからはチャネルローズが一望できる。
多くの高層建築はその中層まで促進緑化で覆われていた。
気温が上がる日の朝は大量に水蒸気が放出され、朝霧でチャネルローズは朝日の散乱と流れるもやに包まれる。
そして高層ビルが幾つも霧から顔を出していた。
「準備はいい?行き先はステーツでいいのね」
そう言いながらサルナは何やら詰め込んだショルダーバックを肩に掛けた。
画面をタッチし、行き先座標をセットしたブックタブを確認する。
トルクが医療ラボに搬送されてから3日が過ぎていた。
内務省のヘリポートに立つ二人。
到着は医療ラボのヘリポートだが出ていくときは内務省の大理石仕様のヘリポートだ。ぴかぴかに磨き上げられている。
しゃんとしたサルナに病み上がりで貧相でだらしないトルク。
傍目には婦人警官と補導された少年。
風に煽られサルナの髪がなびいているしトルクはブカブカのトレーナーを風に膨らませていた。
「ステーツの中心部までは行けないわ。パラシュートなんて無理でしょ。私はかまわないけど。まあ都会だからヘリも使えないわね。生保会社のヘリポートを使って地下鉄から接近っと。いいわね」
再びサルナはブックタブで何かを確認している。
「だってまだアーノルドの死体も出てないんだろ。なにか殺し屋の手がかり見つかるよ」
「それは綿密なサーチングアルゴリズムの結果。それとも心当たりが?」
「野生の勘さ」
トルクはサルナから貰ったジャンパーを回し着た。
「野生児だったなんて情報は聞いてないわ」
静音モードから切り替わったMAVは高周波を響かせてサルナの声をかき消した。




