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「彼は本当に何も知らないのでしょうか。自分の立場を」
サルナが執務室を去った後、ロボットのような女性秘書がケリー長官に問いかける。
「トルクコンカラットは本当に何も知らないわ。今の段階では。パーソナルIDが無いそうね。彼」
「はい、そうです。かなりレアな存在です」
「IDが無ければ当然、政府の注意喚起も当然届かない。注意喚起が届けば自分で調べたでしょうに・・・。なぜ自分が狙われたかということを・・・」
「教えなくていいのでしょうか?」
「ミス・東郷といいあなたといいトルクコンカラットは心配されて羨ましいわね。ちょっと会っただけで。何処にそんな魅力があるのかしら」
「いいえ私はただ・・・アジェンダを遵守すべきかと・・・」
「電子的成長物にも色々与えるという22番目のアジェンダ、あれね。いい心がけだわ」
「社会のルールですから」
「まあ、それを知るのも時間の問題よ。当然サルナ捜査官もね。任務の都合そのうち判るとは思うけれどあくまでも最重要レベルの国際機密よ。私の口からは言えないわ」
「それにしてもIDが無い人間をよく見つけられましたね」
「彼はミスを犯したのよ。まあこの場合不幸中の幸いでしょうけど。大統領を由緒正しいハッティスバーグの病院に追いやったのは彼よ」
「・・・あの写真はじゃあ彼が・・・」
秘書の顔が赤くなる。大統領と女性秘書官とのゴシップ写真だ。
「あなたいつもは澄ましてるくせに結構純な反応見せるわね」
「恐れ入ります」
「通常は改ざん不可能といわれる写真をその痕跡を一切残さず偽造しきったわ」
「ではどうやって見つけたのでしょうか」
「野党の議員がオイルマネー界隈の大物と作者の名を明かした。後はその石油王を詳細に調べた結果ローグランに通っていたことが判ったらしいわ。衛星動画からね」




