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今回の任務はサルナ自身釈然としていない。
(察しの善し悪しで判断を誤ったらどうなるのだろうか。そうでなくても人の命がかかっている。私の判断に?)
ケリー長官は明らかに何かを隠しているとサルナは感じている。
不自然な事の運びも気になる。それは内務省のやり方だ。トルクの治療には易々と大金を掛けている。
本来は、普通の一般人ならば契約書を取り交わすところだがトルクは微罪とはいえ犯罪者だ。
トルクに対して何の担保も取っていない。とてもトルクの人間性を評価している時間も無かったはずだ。
(考えられることは・・・トルクを殺すことが目的・・・。マスターを探させた後始末する・・・・・・)
サルナは考えないことにした。
今の時点でサルナにはトルクを殺す理由は何も無い。
殺人を許可されたが命令されたわけではないことが救い。
サルナには結果として命令されたほうが捜査官としては精神的に楽だったことにならないよう思考を停止することしかできなかった。
「このことについて何か質問はないかしら」
「一つだけいいですか」
「いいわよ」
「彼は、トルクはこのミッションのキャスティングとして・・・つまり・・・巻き込まれはしていますけど・・・」
「NPCの彼がどうしてって云うことね。彼が殺されるストーリーであるならばそれもちょうどいいと結論付けられるわね」
「そもそも本当にNPCなのでしょうか?」
「それを突き詰めても今の私たちに確証を得る術はないわ」
「それではやっぱり・・・NPCではない・・・」
「知っているかしら。150年以上も前にデータサイエンスの権威が提唱した技術的特異点の理論を。NPCの成長の果てにしか訪れない到達点についての理論よ」
「知っています。荒唐無稽な理論としてだいぶ非難されたと・・・そして忘れ去られたと・・・当時は」
「NPCではないと決めつけることは早計よね」
「そうですね」
サルナはお辞儀をすると長官執務室を後にした。




