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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第7章 死に至るプログラム
24/35

(1)

 その”理想”の一角に内務省は促進緑化に覆われて聳えていた。

 樹齢数百年相当の蔦に囲まれた複数の高層階段状建築。

 その一棟に医療ラボは存在する。

 内務省医療ラボはガラス張りの建物だがこれも蔦で覆われている。有害光線からの負荷を和らげていた。

 中では白衣マシンが忙しそうに動き回っている。

 一機の大型高速ヘリは屋上のヘリポートへ取りつくとそのまま蔦に飲み込まれていった。

 トルクは冷凍こそされないものの痩せたマグロのように直送された。


 「おーほほほっ、あなたがミスターコンカラットね、可愛そう。ミス・東郷にコテンパンにやられたのね。丁重に御迎えしなさいって言ったのに」

 「違います!」サルナが強く否定する。


 「想像していたより物凄く貧相ね。みぐるみ剥がれたハウスロボット並みに。捜査室のABCを可愛がってくれてどうもありがと。ちょっと精神に異常を来しちゃっているのもいるけどみんな元気よ。うちは終身雇用だから彼らには今トイレ掃除をやってもらっているわ」


 移動ベットに横たわるトルクは眼鏡のドクターと、ケリー長官、サルナを見上げていた。

 内務省医療ラボに自ら出向いたケリー長官は、痩せ型で性別は男、長身にオフゴールドのボタンをあしらったクリーム色のワンピーススーツ。ゴールドチェーンのイヤリングをしていた。


 「ケリー長官、彼はUSW017α5に感染しています。彼はワクチンの投与が必要です」

 「あーら大変、感染らないのかしら。ソレって。ねえ、遷るの、触ったら感染るの?」

 「USW017シリーズはそのままでは空気感染も接触感染もしません。意図的に感染させようとしない限りは」

 「悪い人がいるものね。世の中には」


 「彼は感染後およそ16,535時間経過しています。非公式声明では16,560時間で死に至るプログラムと言われています」

 眼鏡のドクターがカルテを見ながら冷静に答える。


 「USW017は国家機密よ。権利取引に莫大なお金がかかってるんだから。まあ、いーわ。そもそもミス・東郷にお金に糸目はつけないって言ったの私だから」

 「ちょっと待ってくれ、取引の内訳をまだ聞いちゃいない」トルクは目を閉じたまま言った。

 「あら、起きていたのね」

 「・・・」無言のトルク。


 「そうね。あなたには人探しをしてもらいたいの。あなたのリテラシーとハッキングと、何よりサーチングを非常に高く買っている人がいてね。高名な学者先生から推薦を受けたの。大体察しがつくと思うけど」


 「でたよ。やつか」(本当はコラージュの方がハッキングとかサーチングより自信があるんだけどな・・・)

 「やっぱり知っているのね。そうよ、アカデミーのチェアマンよ」

 「知ってるもなにもそもそもアカデミーに在籍したこともないし会ったこともない」

 「おかしいわねぇ。チェアマンはあなたのことをとてもよく知っているように話してらしたけど・・・おほほほ」

 「さあな」


 「アカデミーの人材でコミュニティに籍を置いている人も多いと聞くわ。どこかで関係を持っているのではなくって?」

 「どこのチェアマンだか判らないけどそいつは俺を買いかぶってる。俺じゃなくてもいいだろ」

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