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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第6章 地獄門
23/35

(1)

 内務省の地下深く。大深度傾斜装置で辿り着く先にはもはや宗教施設と化した大きな遺構が安置されている。


 遺構の門をくぐると大理石のアーチが訪れる人をまず静かに威嚇する。

 大理石のアーチには天使の彫刻が施されていた。

 天頂には14人のフロンティア、マスター達の彫刻。

 そしてそれを囲むように煌びやかなステンドグラスが天井を彩っている。

 この施設は天頂の一番右の人物フラムボンによって開発された。


 僅かな光の中でたった一人で佇む人物がいる。

 その男は両の手をワンピーススーツのポケットにいれ、マスター達を見上げている。

 ともすれば心の中で何かを語りかけているかのようだった。


 「ケリー長官お時間です。トルクコンカラットがまもなく到着します」

 自動ドアが開いてスーツ姿の男が歩み寄る。


 「ありがとう次官。よくここが分かったわね」

 「秘書官が教えてくれました。よくこちらに居られると」

 「次官はどう思うか知れないけれどここに来ると何か落ち着くのよね」


 大理石アーチの奥は急激に光が吸収され視界は数センチも無いようだ。

 よく見ると大理石の棺桶のようなものが幾つも並んでいる。


 「長官には申し訳ありませんがどうも薄気味悪くて。ここにある古い器械は動くのでしょうか」

 「動くという噂よ。でも使っている人はいないわ。逃避のネスティングがどれほど罪深いか」

 「逃避のネスティング・・・ですか。いつもながら長官の言葉のセンスには感服します」

 「あら、ありがとう。褒めてくれるのは次官だけよ」

 「めっそうもない」


 「ここはね神共が神の世界を模倣しただけのものに過ぎないわ。自らの出自を見失わないようにね」


 「温度、湿度、音圧さえ管理されています。遥か昔から。菌類・ウィルスなどの入る隙間もありません。毎年莫大な予算をかけて厳重に維持されています」

 「ここに入る前に分厚い自動ドアを3箇所通ったと思うけどあれは全部この遺構を守るための外殻よ。ハードもシステムも多重構造。外部電源が切れたとしても内臓電源で100年は稼動し続けるそうよ。この施設は」

 「戦争やテロリズムを想定してのことですね」

 次官が棺桶の側を過ぎて薄暗い先へ進もうとする。


 「その先の自動ドアは開かないし近づかないほうがいいわよ。私も一度しか入ったことがない。厳重保護エリアに指定されいるのよ。そしてその先にはまだ自動ドアが2枚もある」

 「ヘブンズドア・・・」

 「どうかしらね。地獄門のほうがふさわしいかしら」

 「一体なんの為に」

 「何を望むか・・・それは次の世界へ行くためよ」

 「野に下る神ですか・・・」

 「この門をくぐる者は・・・」

 「一切の・・・」次官が続ける。


 「ウソかホントか分からないけれど入った人間は死んでも帰ってこないそうよ。僅かな廃棄物が吐き出されるだけ」


 次官は緊張した面持ちで地獄門を眺めながら交互に時計を見始めた。そして何かを思い出したように言った。

 「お時間です長官」

 「わかったわよ」

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