表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第4章 サルナ襲来
21/35

(4)

 ”サルバドール財団”聞いたことが無いわけがなかった。ネットワークの世界では最もポピュラーな都市伝説。


 正体不明の財団。絵にかいたような秘密結社。

 秘密結社でありながらその存在を公言する大金持ちも後を絶たない。地下ノートではその存在がほぼ認知されているといってもいい。

 戦争に出資しているとか、テロを支援しているらしいとか、三千世界を作ったとか、そんな都市伝説が絶えない。


 「そんな怪しい都市伝説が何で俺を…」

 「だいたいあなたのその病気なんの病気か判ってるの。ウィルスはウィルスでも自然発生したウィルスじゃないわ。よっぽど変なところに出入りしないと、って言うか生物兵器よ、それ」

 「せ・い・ぶつ・・・へ・い・・き・・・」

 新たなキーワードにトルクは事態が飲み込めていない。


 地下ノートでは格好のスレッドだが実際のところトルクにとって他人事か陰謀論の範疇をでることはない。

 「証拠は無いけどサルバドール財団謹製。正確には財団にもタカ派とハト派があってタカ派から開発資金が出てるって噂よ」

 「ちょっと待て、タカとかハトとかさっぱりわからん」


 都市伝説を前提に話をされても理解できる筈もなく・・・


 「発病から概ね2年以内に死ぬわ。オーソドックスウィルスに限れば基本的に空気感染とかはしない。直接ターゲッティングされない限り。症状が緩やかだったり早かったりまちまちだから気づいた頃にはもう遅い。後は周りに恐怖を振りまいて死んでいく」


(そうなのか・・・本当にそうなのか・・・だとしたら・・・やられた。全然気づかなかった。世界銀行に入った時か、それとも三千世界に侵入した時か・・・)

 「多分ネットワークでの直接感染ね。本来あり得ないけど」


 本来ネットワークから人体への直接感染など起こりようもない。

 何らかの形で疑似双方向通信やもっと高レベルの通信が偶然、もしくは大いなる力や比類なき能力で人体と意図的に確立したような場合を除いては。


 (感染してからどれくらい経った。どれくらい経った・・・。昔のことなのかそれとも最近のことなのか。特定できない。とにもかくにもやられた・・・)

 暗い渦の中に真っ逆さまに落ちていく感覚に支配されていく。


 「助からなくも無いわよん」

 サルナが一転ニヤニヤし始めた。

 「もう時間が無い。時間さえあれば・・・」

 (自然の摂理で死んじゃうならしょうがないと思っていたけど、生物兵器にやられるなんて悔しくて夜も眠れない。体調が崩れたときからだとすると恐らくもう2年ぐらい経つ。リミットはもうすぐじゃないのか)


 「助からなくも無いわよん」

 (そう言えば最近よく夢にじいさんが出てきたな。昔のこともよく思い出す。コミュニティにいたころのクロスリアリティゲームで窮地に追い込まれた時の記憶だ。あれは天国に近づいたからか、それとも走馬灯の一種か・・・)トルクの独り言は止まらない。


 「だから助かるって言ってるじゃない」

 「もう時間が無い。いったい何時感染したんだ。どこのどいつだ、意地の悪いもん開発しやがって」

 (ネットワークで感染したならログ解析してワクチンの作りようもある。なにより無様なのはそれに気づかなかったことだ。くっそー。こんな間抜けな俺は生きてる資格ない。でも悔しくて死ねない)


 「だから助かるって言ったわよねっ」

 「どうしよう、どうしよう。最後は身体中から血を噴出すんだっけ。それとも肌が乾燥してミイラになるんだっけ。乾燥肌はかゆくなるんだよなぁ。判った、自意識と痛覚を無くしてさ迷い歩くんだ。痛覚無くても痒いよなあ、きっと」

 「そうなのよね、背中のすんごく痒いミイラが町中に溢れちゃって困ってんのよ・・・って、ちっがーうっ。こらーっ」


 「良いんだよ。どうせ死ぬんだほっといてくれ」


 「ウィルスってのはワクチンとセットで商業効果をもつのよ。国防会議が恐らく持っているわ。サルバドール財団から売りつけられたものを」

 「国防会議もグルなのかよ」

 「違うわ、ワクチンを入手しても解析と暗号解読に何年もかかるわ。複製することもできない。だからウィルスも遅効性。その間に小国の国家予算程ワクチンでお金を稼ぐ。そしてまたウィルスを作る」

 「俺なら4ヶ月で解読する」

 「そんなあなただから狙われるのよ。きっと。で、どうする。報復はしなくていいの。人間屈辱が一番のスタミナよ!。生きる気力がちょっとは沸いた?」


 サルナが顔を近づける。トルクが目を逸らすとそこには胸の谷間があった。


 (近い、寄るんじゃない!いや、それどころじゃない。どうする、このまま殺されるのを待つか、悔しくておちおち死んでもいられない。内務省の犬になるのもムカツク感じだ。何をさせられるかも分からないし。サルナ捜査官の胸も気になるし。きっと運命が未だ死ぬなと言ってるってことか・・・)


 「ああ、わかった、わかったよ。そのかわり無罪放免忘れるなよ」

 しばらく思案に暮れた挙句、トルクはふて腐れた表情で静かに横を向いた。

 「あら、必要ないって言ったじゃない」

 「せっかくだしな。くれるっていうなら・・・」(好きなように誘導されてるような気もするが・・・、くそっ。煮るなり焼くなり好きにしやがれ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ