(3)
「い・や・だ。金なんて今の俺に必要ありません」
「じゃあこういうのはどお、あの巨匠、20世紀最大の好事家ダンオニハチコレクションとか」
「なに!!・・・」
「最近密輸しようとして大量に押収されたみたいなのよね。貴重品過ぎるから美術館も引き取り手がなくて困って話題になってるのよ。こういうの好きでしょ。なんかすんごいらしいわよ」
(パーソナルターゲッティングの基本よね)サルナはそのコレクションが何かも判らずにほくそ笑む。
「どっ、どれくらい”すんごい”んだよ」
「んー・・・(困った。わからないわ。ここは適当に)球団オーナーがそのためにトップ選手の売却を考えるくらいらしいわね」
「なぬ・・・(そこまでとは・・・)」
「どお、心が揺らいできた?」
「いや、興味・・・興味ありませんから」目を泳がせながら何とか踏みとどまるトルク。
「あら、残念。そうなの。ふーん。じゃあ解かった。そういうことね。ふーん。まだ若いからね。そーいうことね。何となく分かるわ。ズバリ、リアル女性でしょ。何時かはね。お金があれば何とかなるわ!」
「ちっ、違うっ」(コラーー!。変な解釈するな。あんたオヤジか!)
「ほんとに。困ったわね」
サルナはベットに横たわるトルクの顔を覗き込む。言葉とは裏腹にそんなに困った様子ではない。
(だから顔が近いんだよー。寄るなっ。またいい匂いがするじゃねーか)
トルクは顔を赤くしてサルナから目を反らす。
「俺みたいなケチなハッカーは現世に何の望みもない。やることはやった。殺したきゃ殺せ」
大胆に啖呵を切った割に語尾は沈んでいた。
「しょうがないわね。刑期を1,2年受けてもらってから恩赦って手もあるのよね。やりたくなるまで待つって手が。へへっ、どお、やりたくなった?」
実際はそんな時間がないことをサルナは知っている。
「ケチなハッカーなめるなよ。物理的に投獄しない限りクラックするから」
「クラックなんてそんなこと無理に決まってるじゃない」
「ルームフィックスならこの前もらったやつを解析済みです。そして自ら命を絶ちます。逃げ切るのは無理そうだし疲れるからな」
「差し上げたつもりはないんだけど。驚いたわね。すごい自信。脅しには屈しないって事ね。さすが内務省が超法規取引持ちかけるだけあるわ」
反らした顔を再度サルナが反対から覗き込む。
「ほっといたってどうせ長くない。どんな仕事かわかんないけど、仕事が終わるまで生きてる保証もない。ということでほっといてくれ」
「はぁ、もう良いわ、隠して連れて行くつもりだったけど、言うわ。そもそもあなた何したのよ。ただの犯罪者じゃないわね」
「いや、ただの犯罪者ですからっ」(啖呵をきるのはどうかと思うが・・・)
「この取引はあなたの命を保護する目的もあるのよ。あなた命を狙われてるわ。そういう情報が入った。そして今日ハッキリしたわ。あなたは命を狙われてる。その病気が証拠よ」
サルナの表情が急に変った。美女の眉間にみるみる皺がよる。
「何で…」トルクには心当たりが無かった。ケチなハッカー。それ以外の肩書きは無かった筈だ。
「あなた自覚が無いの?恐らくサルバドール財団から狙われてるわ」




