(3)
「ああ、そうねアントニって運び屋ね。ふんふん」
サルナはスクロールを続ける。
「散々アントニには世話になった癖しやがって奴らはマフィアにアントニを売ったのさ。今頃殺されてるにちがいねえ」
伯父麿の眉間に皺が寄る。
「でもあなた広域マフィアの支部を一つ潰したわね。やるじゃない」
「ローグランじゃでかい顔はさせやしねえ。例えそれがマフィアでもな」
「たいしたものね。気に入ったわ。別にトルクコンカラットを捕まえに来たわけじゃないわ。それは私たちの仕事じゃないの。まあ、向こうの出方にも拠るんだけど」
「・・・なんだ、そうなのか・・・捕まえに来たわけじゃないのか・・・そういうことなら・・・」
いとも簡単に軟化し始めるのは伯父麿の悪い癖だ。
「それと・・ローグランから情報が入らなくなって困ってるのよね。捜査局に次の情報提供者として推薦してもいいわよ」
「なにっ、本当か!」
正直伯父麿は心がかなり揺れた。
「当然罪も消せる。お金も2倍払うように言っといてあげる。どお?おいしいでしょ」
もうダメ押しである。伯父麿の心は震度7くらいに揺れていた。
ミカジメ料としてお情けに近い寄付のような収入を得ているが何せポールとポップが食うのだ。
追剥もさして金にならない。子分を養うにはそれなりの収入が要る。
新しい商売を考えていたところだ。
だがここはぐっと堪えて。
「・・・だがな、アントニはもう帰らねえ。今頃コンクリートに詰められてどこかの海の底で・・・暗く寒い海の底で・・・くそっ」
「おかしいわね。ホントおかしいわね」
「おかしいなんてあるものか」
「だってアントニと奥さんとお子さんはなんか元気っぽいわよ」
サルナはブックタブをスクロールする。
「なぬ・・・そんな筈は・・・」
「マフィアに追われてて保護されたようね。ほら、これネズミーランドかしら。はにかみながら三人でピースサインしてるわ」
なんだかお揃いでネズミのカチューシャまでつけている。
伯父麿は動揺を隠せない。
「だっ、だがな、はいそうですかってそう簡単に軍門に下るわけにはいかねーのさ。俺も頭張ってる以上は下の者に示しがつかねぇ。なおかつ知っちゃならねえ俺様の本名まで知ってしまった」
「残念だけどそれはどうでもいいわね。受けるの受けないの」
「くそっ、そう言う事は俺様を倒してから言うんだな。俺様を倒したら潔く軍門に下ってやる」
「なんかよく判らないけどなんとなく判ったわ。で、どうやってあなたは倒されるわけ。まさかレディ相手に喧嘩ってわけじゃないでしょ。まあ、私は構わないけど」
「いい自信だ。そのまさかだ。男も女も関係ねえ。腹割った殴り合いさ。くらえっ」
ボクサースタイルから繰りだされる伯父麿の拳。
サルナはスタンスを広めに取った軍隊スタイルで迎え撃つ。
・・・・・・・
男相手にはそこそこ強い。見た目以上に。そうでなければ子分を率いていけない。まあ、普通の格闘家程度じゃ引けは取らない。
だがいかんせん相手が女。
伯父麿のパンチは虚しく空を切ってばかり。かするのがやっと。
無意識に拳が女を認識し空を掴むのだ。
そうこうしている間にサルナの手加減パンチandキックでタコ殴りにされていく。
・・・
・・・
累計HITが120発を超えたころ伯父麿の意識は9割消えていた。
「なかなかやるじゃねーか。俺・の・・負け・・だ・・・」
伯父麿の意識のうち最後の1割がぷつりと切れた。
前のめりに倒れる伯父麿。
この一言の為に最後の1割を残して置いたようなものだ。
伯父麿は自分が負けた理由を一生知ることはないだろう。女には勝てない性格なのだ。
「アニキ~生きてますか~だいじょうぶですか~」ジャマイカとポップ、ポールが駆け寄る。
「大丈夫よ。軽い貧血ね」
「えっ?(貧血っ~!)」ポップ、ポールが顔を見合わせる。
「軽い貧血よね。ね。そう・で・しょ」サルナが睨みつける。
「はい~」(ひどい~)
「でっ、案内するんでしょ。もう一回聞くわ。どっち」
「向こうです!」
ポップ、ポールが素早く3番街を指差した。




