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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第2章 サルナ来訪
13/35

(4)

 「やめたほうがいい。ルームフィックスは放射性物質を使うから体に悪い。まあ、微量だけどな。でも訴訟問題になるぜ」

 「えっ、ウソ。そんな筈は」

 空間拘束装置は対象生物の周り四隅に配置して牢屋をつくる。

 裁判所の発行するキー以外では内外からは開けることは基本できない設計だ。


 「国と武器商人の利権に騙されてるのさ」

 「ウソ、世界中の犯罪捜査で使われてるのよ」

 「だっておかしいだろ。何の電力供給もなく何十年も空間を固定するなんて。そもそも空間を固定するなんて嘘っぱちでね」

 「そっ、そんな筈ないわよ」

 「空気組成をいじって対象生物の活動を減衰させるのと同時に簡単かつ強固な空間バリアを作るだけさ。持って歩くのも気持ち悪い」

 「まあっ、まあいいわ、難しい話はとりあえず割愛して私が拘束通知後約30分で有罪が確定します。そうすれば悪くて5年はここから出れないわ」


 「で、どうやって通知するの」

 「いまするわよ・・・、あれ、あれ、おかしい・・・、あれ、あれ。こま、困るのよね・・・最新の電子機器は・・・試・・試作品を現場に押し付けるから・・・おかしいわね」

 サルナは懐から出した小型の端末を振ってみたり、端末中のボタンを押してみたりした。

 「衝撃波で壊れたんだよ。で、どうする」

 「そういうのは大丈夫の筈なんだけど・・・。機械は・・調子悪いのかしら。外と連絡が取れるものは何か無いの、あったら出しなさい」

 サルナは銃をまた構えなおした。

 「その銃動くの」

 「えっ、ウソ」

 天井を撃とうとするが銃は虚しくカチッと音がするだけだった。


 「電子機器の入ってるものは全部だめになってるよ。尋常な強さじゃないから普通人間の方がヤバイけどね。で、どうする」

 かわいそうだが笑いが止まらない。

 サルナの顔が青くなっていくのがわかる。

 「大丈夫だよ取って食ったりしない。おとなしく引き上げてくれ」

 捜査官とは言え、うら若き女性がゴーストタウンに乗り込んで来たのだ。身の危険の一つも普通に感じるというものだ。

 「任務をしくじるとまた長官に始末書を書かされるのよ」

 「そっちかい」(こっちにも少しは身の危険を感じて欲しいもんだよ)

 「お願い、何でもいいから動くもの貸して」

 暫くの沈黙の後、踏ん切りがついたようである。

 実力行使に出るつもりか。”お願い”という言葉とは裏腹になんとなくサルナの目が据わった感じがトルクにも伝わる。

 結構徒手空拳にも自信があるに違いない。天下の内務省の捜査官、文武両道であることは間違いない。だがそんな徒手空拳も必要ない。

 貧弱なトルクには逆らう気力すらそもそもなかった。


 「屋上に出れば衛星が捕捉してくれるよ。職務中なら追尾されてると思うけど」

 内務省は秘密のベールに包まれた組織だ。マニアにはたまらない。この手の情報は直ぐに流れる。

 ミッション中なら常に監視されているのは事実らしい。

 「私より詳しいじゃない」

 「マニア受けする組織だからね。ここから出るならその窓から梯子づたいに上っていけば直ぐだよ」

 「嘘おっしゃい。正直に屋上に案内しなさい」

 「無理さ。この部屋から屋上に出るには普通にはいけないし」

 「何でよ」

 「トラップだらけだから」

 「トラップ止めなさいよっ」

 「メインフレームの主電源は地下の水槽の中なんだ。泳ぎに自信がないとちょっと無理かな。プログラムもそう簡単に停止できないんでね。それよりよくこの部屋に入ってこれたな」

 「なんてことはないわよ。腕利き捜査員ですからね。私にかかれば」

 (自分で言うな!見るからにドジそうなくせに。でもやっぱりおかしいな。やはりシステム異常かな?)

 ワットモニターの電源供給状況は99.9%を指している。問題ない。


 「途中ビリビリしたり、体が急に重くなったり、なんだか眠そうになったり、ドアを開けたら落ちそうになったりしたけどどおってこと無かったわ」

 「ドアをあけたら?そんなトラップはここにはないよ。でも普通はどおってことあるんだけどね・・・」

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