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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第2章 サルナ来訪
12/35

(3)

 「ウソだろ・・・落したばっかりのマテリアルを・・・」

 この業界では当たり前のことだが権利を買うわけではない。純粋にデータを買う。壊れたデータは直す術がない。

 ・・・

 ・・・

 ・・・何事もなかったように立ち上がるコンピュータ。

 ・・・真っ白に固まって動けないでいるトルク・・・


 動かなくなってしまったトルクを見てとても悪いことをしてしまった気分になったサルナ。

 「ごめんなさい。悪気はなかったんだけど」

 「い・・いや、いいんだ。気にしなくて・・・たか・・・、たかが有名画像収集家TASIROの傑作コレクションの原版で・・・」

 ショックは隠しきれないトルク。

 「ふうーん。なんか違和感のある画像だったから。意味わかんなかったけど。そういうことなのね」

 「いや、そういうものとは・・・違うし。興味もないし・・・」

 「やっぱり情報通りの特別警戒マニア体質ね」

 (なんか変な情報多いな。まあ、間違ってないけど・・・その情報はどこから流れたんだよ。こりゃ盗聴されてるな・・・いつから盗聴の対象になるほど名前が売れたんだよ)

 トルクにしてはなんだか感慨深い。


 そして今度は配管のあった穴から隣の部屋を見るように覗き込む。

 「だめだ、動かないで。その場所から、じっとして!」

 (まずいんだよ、この時間帯にその辺は!)

 「今度はなによ、突然」

 (突然現れたのはあなただ!内務省のサルナさん)トルクの突っ込みも声にならない。

 職業柄なのか、それともドジなのか反射的にその場所から飛びのいた。


 一番まずい場所に・・・。


 通電する音がして、轟音とともに強烈な衝撃波がサルナを背後から貫いた。

 配管とケーブルだらけの部屋の隅にあるグリルからその電磁波由来の衝撃波は照射された。

 その間約コンマ5秒ぐらい。

 普通電磁波なんて大して人体に影響なんか与えない。普通に強いぐらいならの話だが。

 どのくらい強烈かっていうと波動が見えるぐらい。不経済な衝撃波として使えるぐらい。

 壁の反対側には緩衝装置までついている。

 まず普通の人なら3日は立ち上がれない。記憶も若干飛ぶだろう。体調の悪い人ならあの世に旅立ってしまう。


 とりあえずは生きてるようだ・・。胸が、いや上着の胸が大きく上下している。

 「やっちまった・・・だから言ったのに」トルクはあんぐりと口を開けて呟いた。

 (やっちまったものは仕方がない。結構好みだったから悪いことをした。ひとしきり写真でも撮ったらチャネルローズの派出所の前にでも捨ててこよう。そうしよう。)

 「ローグランのネットワークに流すのはもったいないな。売るか・・それとも引き伸ばして壁にでも貼るか・・・」つい煩悩が独り言となって出てしまった。


 「いたーい。何するのよ。引き延ばして何を貼るのよ」

 若干ふらついた感じながらもよろよろとサルナは立ち上がった。胸を気にした感じでスーツを整える。

 「えっ、ウソ。何で動けるの。そんな筈は・・・」

 「小出力の衝撃波ぐらいじゃ参りません。あなたを拘束します。」

 (記憶が飛ぶどころかピンピンしてやがる。そもそもそんな小出力のはずないんだけど。もともと地下にあるメインフレームのシステム維持のための定時通電なんだが・・・システム壊れたかな)

 「どうやって拘束するの」

 「このビルごと拘束します。このビルにはあなたしか生物はいなかったわ。空間拘束装置を使う。ビルの四隅に配置済みよ」

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