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新次元紀行  作者: 木戸攘夷
第2章 サルナ来訪
11/35

(2)

 その部屋は配管とケーブルが汚れた壁から壁へ、天井へ延びていた。


 配管してからろくに補修していないから壁には古い大きな穴が幾つも空きっぱなしになっている。

 穴を縫うようにラインモニタやらワットモニタやらが処狭しと取りつけてある。


 通りに面した壁際に寄せられたテーブルには複数のビンテージプラズマ。埃を被ったフュージョンHJ。

 背後の作業テーブルには配線された剥き出しのブラウン管モニタに手作りの真空管。卓上アセンブラ、ナノコンプレッサ、マイクロブラスタetc・・・顕微鏡と量子回路のジャンクが散乱していた。


 そしてどうやって使うのかも分からない3連ピカピカチタンキーボード。

 マグカップ、雑誌。テーブル脇には硝子のないショーケースが多段に積み上がり、大量のフィギュアが詰め込まれている。


 後はベット。鳥のいない小さな鳥かごと裸電球が天井に渡された配管からぶら下がっている。

 薄暗く殺風景な部屋でデスクライトが白ともオレンジ色とつかない色を発していた。


 「私は内務省捜査官サルナ東郷です。あなたを国際情報保護法違反、サラミ法違反、動力窃盗罪で拘束します」

 「こくさい、さらみ、せっ・とう・・・」

 「それからそこのコンピュータから離れなさい。証拠隠滅は刑を重くするわよ」


 サルナ東郷と名乗ったスーツ姿の女はよくわからない細かい字がびっしりと並んだ書面をかざした。


 書類は上下逆さま。右手を突き出し、左手は腰。斜め仁王立ちにトルクを見据える。


 (なにやら変なのが迷い込んできたな。それにしてもなんだか突然、やぶからぼうに・・・って・・・でもなんだか迫力のある女だなあ・・・)


 「あら、いけない。逆さまね。でも効力に変わりはないわ。おとなしくしてちょうだい。残念だけどあなたには弁護士を呼ぶ権利も与えられないわ。これは逮捕じゃなくて拘束よ」


 サルナは書面をひっくり返す。

 「いったいなんだって・・・」


 (内務省に睨まれるような悪いことはしちゃいない。先回のゴシップだって犯人はばれちゃいないはず。そしてケチなハッカーを追い回すほど内務省は暇じゃないはずだ。っておとなしくしてくださいなんておとなしくしなさそうな人に向けて言う言葉だ)


 「さあ、手を上げて床に伏せて」

 (特定の人に恨まれるような証拠は残しちゃいないから被害届けだって出ちゃいないはずだ・・・)

 色々と捜査官のサルナが何か話しているけど一向に耳に入ってこない。

 トルクはどうしてこうなったか頭をフル回転させている。


 (それに何だって銃なんか構えてるのさ。凶悪犯扱いかよ。凶悪犯扱いかよ!スーツの短いスカートとブラウスに無理やり詰め込んだ感じの胸がいいけど・・・)

 トルクは煩悩まで総動員して頭をフル回転させている。


 「それにしてもリビングにしては生活感ないわね」

 サルナは床に散らばるコードやら床にも空いた穴やらを避けながら部屋へ不用心に踏み込んだ。

 ひとしきり配管だらけの部屋をしげしげと見渡してモニタに目をやる。


 「わっ、わっ。だー、やめろ、見るなー」

 「なっ、なによ。犯罪を隠してるわね。怪しい匂いがするわ。見せなさい」

 トルクは手でさえぎろうとするがスポーツと訓練でならした機敏なサルナに追いつくこともできず・・・


 「・・・情報通りのムッツリさ加減ね」サルナの感想はこれである。

 なおもモニタに取りつこうとするサルナ。


 「お願いだーもうやめてくれー」

 モニタの前で交錯する二人の腕。勢い余って電源タップが空を舞う。コンピュータが火花を散らしてプツリと音を発てた。

 ・・・

 電源タップがバウンドすると同時に再起動とロールバックが始まってしまった。

 ・・・

 ・・・

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