姉の物を欲しがって全てを手に入れた妹と虐げられたけど愛する人に救われて幸せになれる姉のお話
インフルエンザで高熱にうなされる中で思いついた作品です。つまり全部熱が悪いんだよ!
クムディニー・リリウム伯爵令嬢は父親であるジリオ氏に愛されていない娘であった。
そもそも両親が愛のない政略結婚で、父親には結婚前から愛人がいたと言うあたりでアレであるが、母親の方も入婿である父親を見下して「種以外に期待していない」とか公言していた時点でもはや両親の仲が良好になるなどとは誰も思ってなどいなかった。
当然、総領娘として母親に期待されていた彼女も母親側の人間として無視され、その仲は冷え切っていた。
とは言え婿養子であるジリオ氏の力は弱く、妻は勿論の事、娘に対してすら何かができると言う訳でもなく、結果的にリリウム伯爵家は平穏(何も起きないと言う意味では、だが)であった。
しかしクムディニーが16歳の時、その平穏は破られる事になる。
当主である母が視察先の港町で食中毒によって急逝してしまったのである。よもや初めて食べた生牡蠣にハマり従者が止めるのも聞かず100個もたいらげ、その夜に腹痛を訴えてそのまま感染性胃腸炎が重症化して亡くなったと聞いた時はクムディニーは思わず淑女らしからぬアホ面を晒してしまったものである。
王国法においてはリリウム伯爵家の後継者はクムディニーではあるが同時に家督継承は成人、すなわち18歳になってからと言う事で、父であるジリオが伯爵代行として家の全てを差配する事となった。
こうなればどうなるかなど火を見るよりも明らかである。
妻である前伯爵の葬儀の翌日、彼は嬉々として愛人である平民のショーシャンとその間に生まれた娘である14歳のスーサンを連れてきて屋敷に住まわせた。
後はお約束のアレである。
姉であるクムディニーは何かと虐げられ、妹であるスーサンは甘やかされる。
スーサンがクムディニーの身につけている物を見て羨ましがって「あれが欲しい!」と言うと父親と新たな義母はニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべて「姉なのだから我慢して妹に譲りなさい」と言ってクムディニーからそれらを取り上げてスーサンに与える、それがもはや日常になっていた。
クムディニーにはもはや何も残っていなかった。ドレスは奪われて今着ているのは使用人のお仕着せ、部屋も家具ごと奪われて今は物置で毛布にくるまって寝ている。そしてとうとう婚約者すら妹に奪われてしまった。……まあ婚約者に関しては妹に鼻の下を伸ばした挙句あっさり乗り換えるクソムーヴかました時点で愛想が尽きてしまったのであんまり悔しくなかったりするのであるがそれはそれである。
ふとクムディニーに無意識のうちに前の自分の部屋に帰ろうとしていた事に気づいて苦笑する。考え事をしていたせいで体に染みついた習慣が出てしまっていたようだ。
だがその部屋は今は妹のスーサンのものであり、下手に近づくとジリオやショーシャンに「妹に危害を加えるつもりだったな!」と因縁を付けられて折檻されかねない。
もっともクムディニーはあの半分しか血の繋がらない妹がいまいち嫌いになれないのでそれは本当に言いがかりなのだが。悪意しか見えない父親や義母と違いスーサンは初対面から金髪碧眼の絵本に出てくるお姫様のような容姿のクムディニーをキラキラした目で見つめており、身につけている物を欲しがるのもあくまで憧れからと言うのが透けてみえるからだ。両親の居ないところでは「自分は地味な茶色い髪だからお姉様の金髪にすごく憧れる」などと言っている。……もっともクムディニーから見ると明るくふわふわの髪は大層可愛らしく、小柄で幼い容姿と相まってぎゅうっとしたくなる衝動に駆られるのだが。
婚約者に関しても姉と言うものがありながら自分を口説く男にドン引きして固まっていただけであり、勘違いした父親によって勝手に決まって婚約であった。なおそれを聞かされて涙目でプルプルしていたスーサンをジリオは「感激で涙まで……お父さん頑張ったかいがあった!」とか思っているあたり色々終わっているのだが気づいていないうちは幸せであろう、きっと。なおそれを見ていたクムディニーは涙を堪えるような迫真の演技で走り去り、そのまま自分に与えられた物置部屋に篭って毛布を被って大爆笑していた模様。イイ性格してるね君……
さて、自分のうっかりに気づいて踵を返そうとしたクムディニーだが、ふと「……お姉様……」とスーサンに呼ばれた気がしてもう一度振り向いてかつての自分の部屋に目を向ける。
見れば部屋の扉が僅かに開いており、そこから何やら声が漏れているようだ。
自分でも「ちょっとそれはどうなのか」と思いつつも好奇心に駆られたクムディニーは、足音を立てないように扉に近づいてそっと覗き込み……固まった。
部屋には妹であるスーサンが昼間っからベッドに寝転がっていた。それはまあいい。彼女が下着姿だった事、それもまあ自室内であるのなら許容範囲だろう。
しかし、である。左腕で抱き締めるように取り上げられたクムディニーのドレス(今朝まで着ていたやつ)を抱え込んだ挙句クンカクンカし、右手が下着の中に差し込まれてモゾモゾしているのにはどう反応すればいいのだろうか?
クムディニーの表情は「無」である。しばし固まったままスーサンの痴態を眺めていると、やがて周囲を伺って人目が無いのを確認すると、決意したように頷き扉の中へと身体滑り込ませ、後ろ手にゆっくりと扉を閉めて鍵をかける。その時僅かな音が出るが色々盛り上がっているスーサンは気づかない。
「……お姉様……お姉様……っ♡!」
「……スーサン」
「んんんっ♡!……ん?………ひゃわわわっ!!!」
いきなりベッドの横に出現した(ようにスーサンには思えた)クムディニーの姿に、スーサンは文字通りベッドから飛び上がった。
「ねぇスーサン? 貴女今何をしていたの?」
「ひぅっ! そ、それはぁ……」
「ねぇ、私が今朝まで着ていたドレスをクンカクンカしながら、いったい何をしていたのかしら?」
「…………」
容赦ないクムディニーからの追及に、涙目でプルプル震えながら無言で俯くスーサン。
だがクムディニーはその頤に指を添え、クイっと顔を上げさせる。そしてクムディニーは冷たい表情で命令するようにスーサンへ告げる。
「答えなさい」
「オ、オ◯ニーしてましたぁっ!」
羞恥で顔を真っ赤にさせるスーサン。その様子にクムディニーは満足そうに頷くと、一転して優しい声色で尋ねる。
「ねぇスーサン? 貴女どうして私の物を欲しがったの?」
「お、お姉様を近くで感じたかったからです……」
「ドレスや装飾品を欲しがったのも?」
「身につけていればお姉様に包まれている気がして……」
「部屋や家具も?」
「お姉様の匂いが染みついた部屋やベッドで過ごしたかったんです!」
齢14歳にして立派な変態さんである。
「……本当に……仕方ない子」
呆れたようにため息をつくクムディニーの姿を、泣き出しそうな顔で見つめるスーサン。大好きな(ただし性的な意味で)姉に嫌われてしまった、そう思って絶望に囚われてしまう。
「ねぇスーサン……貴女が本当に欲しいモノは……何?」
「……え?」
だから柔らかな声で尋ねられたクムディニーの質問が、一瞬理解出来なかった。
「ねぇ、答えて……?」
そっと耳元に口を寄せて囁かれる言葉に乗せられた響きは何処か甘さを感じる。それに気づいたスーサンは、ゴクリと唾を飲み込むと、覚悟を決めた。
「お姉様が……お姉様が欲しいです……////」
「良く出来ました♡」
ぽすん、とスーサンの両肩を押してベッドへ押し倒すとその上に馬乗りになるクムディニー。
「本当に仕方のない子……欲しがりでいやしんぼな妹には……お仕置きしないとね♡」
「お、お姉様……あっ……♡////」
クムディニーはゆっくりと上体を倒して行き、やがて二つの影は絡み合うように一つになり……
余談ではあるがその後の話をしよう。
次の日、貴族院に「正当な継嗣の虐待と家の血を引かない子供によるお家乗っ取り」を訴え出たスーサンによりジリオとショーシャンは捕縛。スーサンは罪には問われなかったが、リリウム家の血を引いてないと言う事で平民となり家を出る事になった。当然婚約も無くなったのだが、今度はその婚約者がクムディニーとよりを戻そうとひと騒動あったりしたが、まあ今更もう遅いと言うものである。
当主代行は母方の叔母の旦那さんの名前だけを借りる事となり、領地経営は代官と家令が手伝いつつも、実質的にクムディニーが行う事になった。
成人まで学生と兼務で非常に忙しい日々を送る事になったクムディニーだが、その傍らには甲斐甲斐しく世話を焼く小柄でふわふわの明るい茶髪の可愛らしい平民メイドがいたそうな。
(大好きなお姉様の愛を含め)全てを手に入れた妹
愛する人(妹)に救われて(色んな意味で)幸せになる姉
タイトル通りだなヨシッ!
クムディニー:ヒンディー語で百合
ジリオ:イタリア語で百合
スーサン:ペルシャ語で百合
ショーシャン:ヘブライ語で百合
家名のリリウムはラテン語で百合だぜ!
インフルエンザで38.6°の高熱に頭が茹だりながら読んだ欲しがり妹ものを読んで「何故姉の物を欲しがるのか」を論理的思考で考えたところ「ん? 欲しがりやさんな妹……エロくね?」と言う謎の結論に辿り着いた結果です。
一時期危うく夜想曲へと旅立ちかけましたが、自分の描写力でエロは無理だったのでなろうへ無事帰還しました。




