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面接(?)

 「それじゃカグラ、シュナイザーの後ろに乗って。コイツは⋯⋯持ってくれる?」


 「理解した」


 蒼の塗装をされたメタリックなバイク、シュナイザーと言うらしい。

 フィリアの相棒なのだろう。


 俺はバッシュを担いで、後ろに乗る。


 「はいヘルメット。それとしっかり捕まってね。⋯⋯変なとこ触ったら殺すから」


 「納得した」


 俺はバイクの乗っている部分を握る事にした。

 大きめのバイクだからそれで問題ないだろう。


 「振り落とされないでね」


 ブォンっとエンジン音が鳴り、加速する。

 俺は顔まで隠れるヘルメットを被ったがフィリアは被っていない。

 そのせいで長い髪が風に煽られ俺の視界を埋める。


 ヘルメットの使い道は髪で窒息しないためだったか⋯⋯。

 なんてくだらない事を考えていると前から声が飛ぶ。


 「国に入る時は魔法石は見える位置に装備しておいてね〜」


 「それは俺のいた国でも一緒だった」


 武器を隠し持っているのは悪意があるから⋯⋯その認識を前提に作られた法律。

 武器を所持する場合は国の許可、相応しいギルドへの所属、他の人にも見える位置に装備する事。

 人に知られたくない隠し武器を持つ場合は肌身から離し入れ物などに入れる必要がある。

 俺のような所属していたギルドを無くした場合、二週間の間猶予が与えられる。それを超え無所属で武器を携帯すると犯罪となる。


 だから魔法石をアクセサリーにする人は多い。

 魔法石は色鮮やかで綺麗で装飾品に向いている。

 手も空くので他の武器を持つ事も可能だ。


 「コイツを門番の兵に引き渡したらそのままギルドに向かう。手続きは後回しでも大丈夫だよね?」


 「それは構わないが、問題無いのか?」


 「私はこれでもA級、エリートなの。多少の融通は利くのよ。今日はギルマスがギルドに居るから早めに済ませたいの」


 「理解した」


 フィリアのギルドのマスターは忙しいのだろう。

 会えるうちにやるべき事をやっておきたい、その考えは分かる。


 「何か質問ある? しばらく掛かるからなんでも聞いて」


 「なら初めに⋯⋯その格好は何か意味があるのか?」


 戦闘者にしては露出の多い服。寒いのかコートを羽織っている。

 正直不思議で仕方ない。


 「全身で風を感じたいんだよ。シュナイザーと一体化している感じがして気持ちいいの! このコートは静電気を抑えてくれるの。私の魔法石は微弱な電気を空気中の魔力を使って常に出しちゃうの。それ対策」


 静電気による被害がどれくらいか分からないが、コートにはそんな理由があったのか。

 魔法石が常に動いているとすぐに劣化してしまうだろうから、大切な事か。

 実際に今、魔法石が動いている気配は無い。


 てかこの人、何でもかんでも教えすぎじゃないか?

 これは俺を信用している証なのだろうか?


 「次の質問だ。スピードを上げないのか?」


 バイクの音はしているはずなのに、世界が静かになった気がした。

 ⋯⋯変な事言ったか?


 「どうしてそう思うの?」


 「勘だ。俺に気を使う必要は無い。振り落とされないから」


 「へぇ〜」


 軽く横顔が見えた。

 その口元はニヤリと笑っている。


 「それじゃ⋯⋯行くよ!」


 シュナイザーに電流を流し加速する。

 かなりの速度で気を抜けば振り落とされそうだ。

 これでも全速力じゃないと感じる⋯⋯なんて速度だ。

 シュナイザーの底力が分からない⋯⋯。


 数分で国の外壁が見えた。

 門に到着してからは予定通りに事を運ばせ、俺も身分証を提示した。

 シュナイザーでゆっくりと車道を進む。


 「それじゃ、まっすぐギルドに向かうからね」


 宣言通りすぐに目的地と思われる場所に到着した。

 木造建築を想像していたが、立派な石造りの建物だった。

 でかでかと掲げられたエンブレム。

 車庫と思われる横の建物にシュナイダーを運んだフィリアが隣に並ぶ。


 「ようこそ、傭兵ギルド『フィストリア』へ!」


 フィリアが両開きのドアを開け、俺を中に招待してくれる。

 中は酒場のような構造になっており、二階建てだ。

 俺達が入った瞬間に中の人全員の視線が俺へ集まる。


 「面白い子連れて来たよ。カグラはこの辺で待ってて。話通して来るから」


 俺は近くにある椅子に座って待つ事にした。

 他の人は普段通りの生活を装いながらも俺を観察するように見て来る。

 これは⋯⋯どう対応すれば良いんだ?


 とりあえず、見られている事を気づいている事に気づかれないようにするか。

 数分後、二階からフィリアの声が飛ぶ。


 「カグラこっち来て〜」


 「ああ」


 俺が案内された場所はギルドマスターの部屋だった。

 部屋に入ると、真正面にソファーに頬杖を付いて深く座っている優男が目に入る。


 耳の長さ、緑色の長い髪、何より纏う気配。

 エルフだ。


 細い目で俺をじっくりと観察して来る。


 「ほら、並んで」


 フィリアが隣に呼んで来る。

 左右の壁に二人づつ、ギルマスと思われるエルフの斜め後ろには秘書のような女の人が立っている。

 かなりの警戒態勢。


 俺はフィリアの斜め後ろで足を止める。


 「どうしたの?」


 「⋯⋯いや、俺とフィリアが並べる立場じゃないと思ったんだ」


 「はい?」


 フィリアは疑問に満ちた表情を浮かべるが、ギルマスが口を動かす。


 「話は聞かせて貰ったよカグラくん。僕はフェルベルト=ローレライ。見ての通りエルフで傭兵ギルドフィストリアのマスターをさせて貰っている。よろしくね」


 「よろしくお願いします」


 「ちゃんと敬語使えた!」


 フィリア、俺は普通に敬語を使えるぞ。


 「話を進めようか。君はこのギルドに入りたいのかい?」


 「入りたい⋯⋯と思っています。行く宛てが無く仕事が欲しいんです」


 「ふむ。実力は聞いているが懐疑的でね。あのバッシュに武器を使わず制圧したと⋯⋯」


 あの男、そんなに高い評価を受けているのか⋯⋯知らなかった。

 

 フェルベルトは考えるフリをしながら、俺の言葉を引き出そうとしている。


 「どうしたら強さを信じて貰えますか?」


 だから俺は直球に質問する。

 驚く素振りもなく、冷静に返事が来る。


 「そうだね。例えばこの中の誰になら⋯⋯勝てそうかな?」


 入ったら入ったで問題が起きそうな事を聞いて来る。

 だが、信用を得るには素直に答えるべきか。

 そもそも、フェルベルトに嘘は通じないだろうしな。


 「貴方以外ならこの場で銃殺が出来ます」


 ザワっと全員が反応する。

 フィリアも疑うような、敵意の籠った視線を向けて来る。

 全員が「舐めるな」と視線で訴えて来る。


 「銃殺⋯⋯か。一体なんの銃で?」


 冷や汗を流したフェルベルトがそんな質問をする。

 常に余裕そうだった彼の初めての動揺だ。細かった目も大きく見開いている。


 俺は隠すつもり無い。

 俺はハンドガンをガンケースから⋯⋯あれ?


 「⋯⋯無い」


 「「「「え?」」」」


 「銃が⋯⋯無い」


 ザワザワした室内が静かになった。


 「カグラ⋯⋯どう言う事?」


 フィリアの言葉で俺は考える。

 ギルマスに追放されてから放心状態で、何も考えずただ言葉に従って外に出ていた。

 ギルマスに会うのに銃は不要でギルド寮に置いてある。


 ⋯⋯常に身につけて体の一部のようで、装備しているのが当たり前だった。

 装備している時も装備してない時も感覚が一緒に思える程長く愛用していた。

 だから気づかなかった。


 俺は真顔で言う。


 「今のは忘れてください」


 「⋯⋯そ、そうか」


 フェルベルトは一度深呼吸してから、次に魔法石に視線を向ける。


 「もし良ければ魔法も教えてくれないかな?」


 「もちろんです」


 「素直だね」


 「俺の恩師は信用を得たいなら信用しろと言っていました。なので、お答えします。信じて貰いたいので」


 その恩師に捨てられたのは⋯⋯言うまでもない。

 なんでだろう。自分で心の傷を広げている気がする。


 俺は魔法石を見せながら、答える。


 「これは俺の魔力で作った魔法石です」


 「なるほど」


 魔法石は魔石に魔力での加工を加え魔法を覚えさせる。

 自分の才能を魔法にしたいなら、数ヶ月掛けて魔石に自分の魔力を流して加工する。

 それによって自分に最適の魔法が手に入る。中には他に類を見ない特別な魔法もあったりする。


 俺の魔法もそれに該当する。

 俺の魔法。そして、効果と照らし合わせて付けた名前がある。


 「それで、その魔法は?」


 俺は3本の指を伸ばし、顔の前に持って来る。


 「俺の魔法は『3m(メートル)』です」

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