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山ン本怪談百物語

百物語のうわさ

作者: 山ン本

こちらは夏のホラー2024&百物語百話の作品になります。


山ン本怪談百物語↓



https://ncode.syosetu.com/s8993f/


感想やご意見もお待ちしております

 「Iさん!百物語やりましょうよ!」


 プロデューサーのNさんから声がかかったのは、怪談ライブのイベントが終わった後のことでした。


 「僕なんかでいいんですか?全然怪談上手くないですよ…?」


 仕事で仕方なく参加していた怪談ライブの後、たまたま仕事で近くに来ていたNというプロデューサーに声をかけられたことが全ての始まりでした。


 Nさんはとても気さくな方で、全く受けていなかった僕の怪談にも魅力があると嬉しそうに話してくれた。


 「ウチのラジオ企画で『百物語』をやるんだけどさ、Iさんも出てくれよ!絶対面白くなるからさぁ!」


 Nさんの勢いに押されたこと、そしてスケジュールが空いていたことで参加を決めた僕は、マネージャーにも説明しないままその場で返事をしてしまった。


 「そうこなくっちゃ!今からやるから俺について来てよ!」


 僕はNさんに手を引かれながら、怪談ライブを行ったイベント会場の地下にあるという特別会場へ連れて行かれた。






 特別会場と言いましたが、ぶっちゃけ場所は会場とは名ばかりの場所でした。


 会場の地下にある倉庫の更に奥へ進むと「使用禁止中」と書かれた扉があった。


 その扉を開けると、すぐに「青い光」が目に入った。


 「あの火を中心に百物語をやるんだ。Iさんも開いてる場所に座って座ってっ!」


 演出であろう青い行燈とそれを囲むように置かれた座布団。先に呼ばれていたであろう人たちはそれぞれ座布団に座っており、神妙な表情で僕を見つめていた。


 「あの…Nです…よろしくお願いします…!」


 僕は近くの座布団へ座ると、黙って百物語の開始を待ち続けた。






 「さぁ、メンバーも集まったことだし…百物語を始めましょうか…!」


 用意されていた座布団が全て埋まり、Nさんが百物語の説明を始めた。


 「集まったメンバーは20人弱って感じですね。今から皆さんには、怪談を百話語ってもらいます。もちろん1人で百話ってわけじゃありませんよ。最低でも1人2話以上は話してください。僕も話しますんで。内容は体験談でも他人から聞いた話でも構いません。時間も短めでOKです」


 Nさんの説明は更に続く。


 「怪談を語り終わった人は、倉庫の中央にある百本の蝋燭の火を1本消してきてください。その火がすべて消えた時が百物語終了の合図です。何か質問のある人はいませんか?いなければ百物語開始です!」


 こうして、百物語は静かに始まった。






 「当時の私はN県のY市に住んでいて…」


 「俺たちが漫才のコンテストで新人賞を取る前…」


 「俺が司会をしていたローカル番組で心霊特集を放送した時の裏話だ…」


 百物語は思っていた以上にスムーズに進んでいきました。


 参加者たちは次々と怪談を披露していき、僕も自分をアピールする良い機会だと思い積極的に手を上げて持ちネタの怪談を披露していきました。


 「小学校5年生の冬…うちの小学校では…」


 「怖いお話というよりは、不思議なお話なんですよ」


 「大学時代、遊びで『配信者』というものをやっていた」


 次々と百物語は進んでいく。


 そして…






 「…っと私は思いました。これで私のお話は終わりです」


 九十九話目のお話が終わった。最後の百話目を誰が話すのか現場がざわついていると…


 「皆さん本当にお疲れさまでした。百話目は私がお話します」


 Nさんは倉庫に置いてあった最後の蝋燭を会場に持ってくると、中央にある行燈の隣に座り、静かに語り始めた。






 「皆さんは、百物語がどういうものか詳しくご存じでしょうか?これ、ただの怪談大会ではないんですよね。実はこれ…日本の古典的な『降霊術』でもあるんですよ」


 偶然だが、その時Nさんと目が合った。


 「百物語を終えた後、本物の『怪異』が出現する。百物語で百話目の怪談を語ることは、本来は禁止なんですよ。だって本物出ちゃうから」


 Nさんは言葉を止めることなく喋り続けている。


 「どんな怪異が出現するのかは不明。幸せになったパターンもあるし、死んじゃうくらい怖い体験をするパターンもあります。皆さんは、どっちを体験することになるんでしょうかねぇ。私はどっちかって言うと…」






 スゥッ…






 その時、最後の蝋燭の火が目の前でいきなり消えてしまった。


 「あっ?やっちゃいました?」


 「まだ話の途中なのに…どうして…?」


 会場の中は行燈の青い光だけが不気味に輝いており、Nさんの声もそれっきり全く聞こえなくなってしまった。


 「おい、誰か電気つけろよ!」


 その言葉を聞いた途端、僕を含めたゲストたちが次々と会場の電灯のスイッチを探し始めた。しばらくすると、誰かがスイッチを見つけたらしく、会場の中が一気に明るくなった。


 「良かったぁ。ちゃんと電気がついて…あれっ?Nさんどこ行ったの…?」


 ゲストの1人があることに気がついた。


 それは、司会者であるNさんの姿が部屋のどこを探しても見当たらなかったのです。


 「外へ出たんじゃないか。いや、でも収録中に出て行くなんでありえないか…」


 その場にいた全員が困って動けないでいると、会場の外からいきなり声が聞こえてきた。






 「ちょっとっ!こんなところで何しているんですかっ!?」






 声の主はイベント会場を巡回している警備員さんであった。私たちは警備員さんへ事情を話してみたのですが…


 「ラジオの収録で怪談大会?聞いていないですねぇ…事務所へ問い合わせてみますが、こんな場所で収録なんて普通やらないと思うんですけどねぇ…」


 警備員さんがすぐに事務所へ問い合わせてくれましたが、驚くことに「ラジオの収録なんて聞いていない。しかも何故使われていない倉庫の鍵を持っているんだ?」という返事が返ってきました。


 怖いことはまだ続きます。


 僕たちはNさんというプロデューサーに誘われて番組に参加したということを話すと、更に驚くべき返事が返ってきました。


 「Nさんは昨日から海外ロケの収録に行くって言ってましたよ。今は日本にいないはずですが…」


 後になって問い合わせてみると、当時Nさんは香港までロケに出ており、このイベント会場で今日出会うことはあり得なかったのです。


 「とにかく今は解散してください。ここは火気厳禁なのに火まで使って危ないなぁ…」


 僕たちは警備員さんの指示に従い、すぐに解散することになりました。


 会場を出る時、僕はあの行燈を見て奇妙な違和感を覚えました。その違和感というのが…






 「火が青くない…」






 行燈の火は青ではなく、普通の火に変わっていました。






 結局、Nさんを見つけることができないまま、僕たちの百物語は終焉を迎えました。


 当然ですが、Nさんはこの時のことを全く覚えておらず、僕のことすら「そんな人いたっけ?」みたいな感じだったそうです。


 奇妙な出来事を体験した僕ですが、後になって怪談好きの知り合いにこの時のことを話してみると、とても興味深いことを話してくれました。






 「それってたぶん『青行燈』かもね」






 知り合いが口にした「青行燈」とは、百物語に関係する日本の妖怪である。


 青行燈は百物語のメインである百話を話し終え、蝋燭を消した時に現れる妖怪であるという。


 その姿は鬼のような女性、或いは蜘蛛のような姿をした妖怪だと思われている。


 僕があの時見たNさんは、人の姿に化けた妖怪青行燈だったのでしょうか。


 真相は未だ闇の中です。






 そして百物語を今からやろうとしている皆さんへ…






 決して百話目を語らないでください。






 もし語ってしまったら、もし聞いてしまったら、もし見てしまったら…






 「闇に潜む住人」があなたたちの元へ現れてしまうかもしれません。






 鬼を談ずれば、怪にいたるといへり。






 どうか、百物語にはご注意を…

どうも 作者の山ン本です。


まず最初に…


ここまで山ン本怪談百物語を読んでくださった方々、本当にありがとうございました。


現在「あとがき」みたいなものを書いているので、仕事がもう少し落ち着いたらすぐに投稿させていただきます。語りたいことやお話したいこともたくさんあるので…


山ン本怪談百物語は「一旦」これで最終回となります。


本当にありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 百話全て語り終えると何か起きると評判の百物語ですが、この場合はスタート時点で既に怪現象が起きていたのですね。 知らないうちに怪現象に巻き込まれていて、気付いた時には全て終わっていた。 これ…
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