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待望だった異世界人生を謳歌します! ~VRMMOのβテストをやっていたらいつの間にか異世界にいました~  作者: 影出 溝入


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【求】チーズ 【要】ミルク

「おおお!!?なんだこれはーーー!!」


「はぐはぐっ!!むぐむぐっ!!んふぅ~~~」


「ビロ~ンってのびるよっ!それですっごくおいしいのっ!ほらっ!リサも食べてっ!!」


「はわぁ~・・・。こんなものが食べられるなんて・・・夢みたい・・・ハッ!もしかしてほんとに夢なのでは!?」


「おいひいでふぅ~~~」


作ったチーズを使い、以前に俺が作った手作り感満載だったものよりもいつの間にか完成していた豪華でしっかりとした窯を使用してピザを焼き、キラキラした目で待機していたみんなに切り分けて振舞うと全員がその美味しさに様々なリアクションを見せてくれていた。


「自作なんてほんとに出来るのかちょっと不安だったけど、かなり上手くいったなぁ」


ま、万能酵母とドロップアイテムのミルクという特殊なものが揃っていたからこそこんなに

上手くいったのだろうけどな。


というのも、チーズは本来ならば生乳をちゃんと加熱殺菌したりしなければならないのだが、ドロップアイテムであるミルクは既に無菌状態だということだったのでその工程を必要とせず、ただ寸胴にミルクと万能酵母をちょっと入れただけでチーズ作りの成功にこぎつけることができた。

アイテム・・・ほんと便利よねぇ。


「チーズを作る際にホエイができて、色々なことに利用できるというのは知っていたけど、ただ牛乳に混ぜるだけで飲むヨーグルトみたいになるなんて知らなかったわ」


自分のコップを小さく回すように揺らし、中にまだ半分程残っていた白い液体が波打つ様子を眺めながらそんなことを感心したように言っていた。

チーズを作る為には生乳を殺菌し、その後に乳酸菌やレンネットを加えることでタンパク質を固めるのだが、その際に水分が抜ける。その水分がホエイというもので、チーズだけを目的とするならば不要なものなのだが、実はこれ自体も色々と利用価値があったりする。


これに肉を漬けてから焼くと柔らかく仕上がるし、やっすい鶏肉でもこれに漬けてからあげとか作るとめっちゃジューシーで美味しくなったりするが、今回は牛乳と1対1で割るだけで簡単にできる即席飲むヨーグルトを作ってみんなに振舞った。結果は・・・、


「あるじっ!おかわりっ!」


「ルーもっ!ルーもほしいのです!」


と、ご覧の通りの大盛況である。

二人は俺が座っている椅子の両脇へと駆け寄り、空のコップが置かれたテーブルの端に手を置いてぴょんぴょんと跳ねている。その小さなお尻が上下する度にそれぞれの尻尾がふわりふわりと追従しながら嬉しそうに左右にも揺れていた。

ココのは短いながらもふわふわでモフモフ好きの俺には魅惑の触感を与えてくれるものではあるが、俺を挟んで反対側にいるルーのものも、ネコ科のそれと同じでツルツルとした触り心地で実に素晴らしい。ココのよりも少し長めのやつがくねくねと動く様子もなんかいいよね。


だが、ココやルー達だけでなく、尻尾持ちの種族全般的に尻尾は敏感な部分であるため、むやみやたらに触るのは駄目だとミーナとアンジュに揃って怒られたことがあるから、たま~にお願いして触らせてもらうくらいに留めている。

え?怒られたのなら触るなって?馬鹿を言うな。あんな魅力的なもん、我慢できるわけがないだろうが。それに、オリヴィエはいいって言ってるもんねっ!今回は我慢してやるけども。


ホエイはあまり日持ちのするものではないが、ストレージに入れて置けば問題ないので残りはそのまま不思議空間に収納して保管を・・・しようかと思ったが、今作ってやったちびっ子二人のみならず彼女等に続いて自分のコップを持ち、集まりかけていたみんなも俺のストレージへと消えかかっていたホエイにとても悲しそうな視線を集中砲火されてしまったので、仕方なく全員分の飲むヨーグルトを作り、今回のチーズ作りの副産物として生まれたホエイは全て彼女達の胃に消えていった。


ま、殺菌の必要が無いアイテムのミルクと万能酵母があれば、チーズは思ったよりも簡単に作れるということがわかったから、また作ればいいだろう。

だが、ミルクの八割ほどがホエイになるし、チーズも大好評なので、いくら簡単に作れるといったって道具も施設も十分に整ってない現状ではとても有り余るほどには作れはしないから、今のところはたまのご褒美って感じかな。ミルク自体の在庫もそこまで大量にあるわけじゃないしね。

とかいう話をみんなに伝えたら・・・、



「こうなるわけか・・・。なるほどね」


「さあ、ブライトブルの音はもう覚えました!たくさん連れてきますよ!」


「んふぅ~。がんばるっ!」


欲望に忠実な我が愛しのプリティー達は、午前中もダンジョンへ出かけていたご主人様を引っ張り出し、再び同じ場所へやってこさせられた。無理矢理ではなく同意の上ではあるが・・・あんな顔を目の前に並べられて断れる奴なんかいるだろうか。いや、いない。


チーズとホエイという人参をぶら下げられたオリヴィエ達のやる気は凄まじく、普段から素晴らしい動きが更に冴えわたって圧倒されるほどだった。

オリヴィエだけじゃなく、ココまでちゃんとブライトブルを優先して釣ってくるもんだから、数時間だけでかなりのミルクと共に大量の角、そしてレアドロップの牛肉まで少なくない量を確保してしまった。相変わらず美味しいものがかかった時の彼女達は恐ろしい。


まぁたしかにこの世界のあの味気なくて美味しくない料理を食べてきた人生を生きてきて、突然ピザなんていう最強クラスのジャンクフードを与えられたら、ああなっちゃうもんなのかもね。食い慣れた俺だって久しぶりに食べてめっちゃ感動したもんな。チーズがあれば料理の幅が更に広がる。ちょっとレーダーチャートの不健康の目盛りがグンと伸びちゃうけどな。


「ユウキさん!これであの時言っていた物はたくさん作れますか?」


ダンジョンから引き上げる際、ユウキの下に駆け寄ったオリヴィエがワクワクした表情で彼女の顔を覗き込みながら話しかけていた。


・・・・・・なるほど。

オリヴィエ達の異様なやる気の原因になったのはピザや飲むヨーグルトだけじゃなく、俺の知らない所で話していたユウキの発言もその一端を担っていたというわけか・・・。


ユウキはオリヴィエに「そうね、いっぱい作れると思うわよ」と返事した後、


「なによその目は・・・確かにみんなの食いつきは凄かったと思うけど、私の話なんかなくったってきっとこうなっていたと思うわよ」


俺がユウキの方へ視線を送っていたのを敏感に感じ取ったユウキが、少し気まずそうな顔になりながらもこっちから送った無言の抗議に反論してきた。

たしかにそうだろうが、種火に油を注いだのは間違いなくお前だろうが。


ココが「ちーず」と言い、そのすぐ後にルーが「けーき」と続く輪唱を延々と続けながら手を繋いでスキップしている様子を見るに、間違いなくチーズケーキのことを話したんだろうな。

でもチーズケーキって今回俺が作ったナチュラルチーズじゃなくて、クリームチーズを使って作るんじゃなかったっけ?


「正確な作り方は知らないけど、たしか牛乳に加えて生クリームを材料にすれば出来るって聞いたことがあるし、大丈夫なんじゃない?それに、熟成期間もほとんどとってないのにあんなチーズが完成するんだもの、万能酵母ならきっといい感じにしてくれるでしょ」






そんなに適当で・・・と言いたいところだけど、ホントにそうなんだよねぇ。


マジで万能酵母さん。


ッパネェッス!


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