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待望だった異世界人生を謳歌します! ~VRMMOのβテストをやっていたらいつの間にか異世界にいました~  作者: 影出 溝入


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乱射

「あるじ様すごいよ!おっきなてーとがあんなに小っちゃい!ルーとリサが住んでたのはね、あそこ!ほらっ!あのはしっこの方だよ!でもおうちはかいたくに向かうときにヨタおばちゃんにあげたの!おばちゃんはやさしかったんだよ!たまにごはんを分けてくれたのっ!」


「そ、そうか」


「見てココ!あれがてーとだよ!てーとはいっぱいの人が居るの!」


「ふむふむ」


ルーのマシンガンっぷりが凄い。

ココもココで会話で返すことこそほとんどないのだが、そのマシンガンのすべてをちゃんと受けきって反応を返すもんだから、ルーは弾丸を止めることなく放ち続けていた。

おしゃべり弾倉にドラムマガジンでも使っているんじゃないだろうか。

何という装填数。しかも発射レートまでかなり早いときた。


リサによると、たしかにルーは普段からよくしゃべる子らしいのだが、それでも今日はいつもよりかなり冗舌となっているらしい。

目を細めて「よっぽど嬉しいんですね」とまるで孫を見るおばあちゃんみたいな菩薩顔でルーを見るリサ。


しかも安全対策の一貫でさっきと同じようにフライをかけて体を浮かせてココに手を引かせていたのだが、帝都に向かいながらココに飛行の制御方法を少し教えて貰うと、ルーはあっという間に飛び方を覚えてしまった。


っていうか、ココの「びゅ~んってやってぎゅ~ん」とか「ガッからのグン!」っていうどっかのミスターみたいな擬音と変な身振りばかりの指導方法で、何故全てを理解してすぐに制御できるようになるのか・・・俺には全く分からん。ルーもきっとココと同じ超感覚派なんだろうな。


おかげで今は荷車を担ぐ俺の周りを何故かココと一緒になってグルグルと回りながらず~っと話しかけてきているのだ。まぁ今は飛ぶのが楽しくてテンションが上がっているのだろうから、もう少しすれば落ち着く・・・といいなぁ。さすがにこのままずっと左に右のみならず、上や下からと全周囲スピーカーをこのままずっとやられるのは少しきついものがある。


「あるじ様は凄いねぇ!魔法が使えるなんて!ルー初めて魔法見た!ピカーってなってキラキラ~って凄かった!」


「そうか、ルーもがんばって勉強したら使えるようになるかもしれんぞ」


魔法使いの取得条件をクリアできたのは今の所ミーナとウィドーさんとアンジュ、それにユウキだけだからな。ユウキは現代日本の義務教育を修了している上にちょっと前まで高等教育を受けていたのだから当たり前なのだが、それでもオリヴィエは魔法使いの取得条件を満たせていない。


まぁオリヴィエの場合は難しい話をすると急にやることが出来たとその場から離れていくか、夢の中へ逃避行しちゃうからなんだけどね。バレバレの嘘をついてその場から逃げるのも、科学の話を一生懸命聞こうとしているうちに寝ちゃうのも可愛いんだよなー、これが。

難しいって言っても物質の何故なにの基本的なことなんだからちょっとがんばればいけると思うのだが、やはり教育というもの自体を受けたことが無い者がそういったことを理解するというのはかなり難しいものらしい。

アンジュも第二職業を魔法使いにするために取得条件をクリアするのには結構苦労したもんだ。


「ほんとう!?ルーもキラキラ~できるの!?」


「ルーにはまだムリ。ココもダメだった」


ミーナとウィドーさんに挟まれて恒星と惑星について教えている時のココのあの眉間に皺が寄って眉を八の字にしている顔は今思い返しても面白い。

ミーナは魔法使いを取得してからも色々な事を知りたがっていたので、ちょっとした空き時間が出来た時に今でもたまに俺のなんちゃって科学講座を開いているのだが、ココも毎回参加している・・・んだけど、紙も黒板すらないこの世界では文字や絵で伝えることが難しく、どうしても口頭主体の講義になってしまう上に、教師を勤めているのが科学への理解度が高いと言えない俺なので、受ける側の生徒力がかなり高くないといけない。


今思うと、やはり教師の話を聞きながら目でもその内容を文字情報として見ることというのは重要なんだなぁと感じた。やはりなんの教育も受けていない状態で物理や科学の基本的な知識を理解するというのはかなり厳しい。


ミーナは羊皮紙のような質の悪いものを使っていたが、あれはノートのように授業内容を事細かに書けるものではない。そもそもそんな数ないし、かさばるしな。

ミーナも重要な単語だけを記入しているに過ぎなかったからね。あれじゃ、後でそれを見返しても復習することは難しい。


では基本的な教育を受けていないウィドーさんやアンジュがそれなしで魔法使いを得られたのは何故かというと、それはおそらく一緒に学んでいた生徒にミーナが居たというのが大きいんだと思う。


ミーナは聞いた話をすぐ理解した上でその話の中で疑問に感じたことをすぐに質問してくれる。そしてそれに俺が返答することによって、俺が説明不足でわかりにくかった部分の情報がいい具合に補われ、実にわかりやすくなるのだ。この補足情報が基本的な下地のない状態のカチカチ脳に科学知識を浸透させるため柔らかくさせる役割を果たし、星が丸いことも知らなかったような人に、ゆっくりとだがそれを理解させるに至ったのかもしれない。

ただただみんなのIQがめっちゃ高かっただけかもしれないけどね。


事実、一緒に一応その補足情報も聞いていたオリヴィエとココはまだ魔法使いの取得条件を満たしていないからな。


「そうかぁ~。ルーもキラキラ~したかったな~」


「だいじょぶ、まほうがなくてもあるじまもれる」


そういうと、ココは俺に背を向けて腰に付けている自分の短剣を抜き、まるでこちらに誰かが襲いかかってくる敵を迎え撃つような動きで


「シュッシュッ!・・・シュシュシュッ!!・・・こうっ!」


短剣を振るう度にシャドーボクシングをしているボクサーみたいに口で擬音を発しながら素早く鋭い動きで何もない空間を連続で切っていった。

どうやらココが想定した敵は複数だったらしく、攻撃を繰り出した後には何かを回避したような動きまでしつつ、反撃したりする動きを見ているうちに、なんだかその何もない場所には本当は誰かが居てココと戦っているんじゃないかと思ってしまうくらい、ココの動きは真に迫力があった。


「カルロ様・・・あの動き・・・」


「うむ・・・あの幼子・・・おそらくワシよりも強いぞ・・・」


「まさか!?さすがにそれは・・・」


「いや、あの子もサトル様のメェンバーなのだろう。ワシは一日加護を賜っただけでかなりの

強さを得られたのだ・・・あの子や彼女達はそんなワシよりもサトル様と共に過ごしている時間が遥かに長い。当然のことだ」


「使徒様の・・・加護・・・」


やはり少しでも戦闘経験のあるものならあの動きを見るだけでもココの実力は充分に伝わるのだろう。

カルロとその護衛達はココが空中で見せる見えない敵との戦いを見て、固唾を呑んでいた。


カルロは先のスタンピードの時に通常では有り得ないような連戦ボーナスを得ることによって一気にレベルを上げている。なので実は今のココと比べてもレベル的にはそう変わらないのだが、ココは俺のパーティーに入っているのでな。その補正値分、かなり実力差が出ているのだ。


普通のパーティーだったら同レベル帯の人間に圧倒的な実力差が出るような補正など入らないのだろうが、なんせ俺はマルチジョブというチートを使っている上、今は更にオリヴィエ達にも精豪の特殊能力で二つ職業を持っている状態だからな。






「わ~!ココすご~い!なんでそんなうごきができるの!?」


「あるじといっしょにいればルーもすぐできる」


「ほんとう!?」


いるだけじゃムリだけどね。


ま、ルーもウチに来るんなら安全担保のためにもダンジョンには連れて行くからそうなるのは間違いない。

ふとしたことで死んじゃう率が日本よりも格段に高いこの世界でレベル1のままなんて危なくてしょうがないからな。


気が早いけど、帰ったらすぐダンジョンです。

大丈夫。もうみんなパワーレベリングはお手のものだからねっ!

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