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待望だった異世界人生を謳歌します! ~VRMMOのβテストをやっていたらいつの間にか異世界にいました~  作者: 影出 溝入


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信仰

「手も・・・足も治ったーーー!!」


ルーが治った右足を最初に地面につけてから立ち上がり、元通りになった左手を握り込んでから天に掲げるように上へと振り上げた。

そのポーズはまずいですよ。一片の悔いもなくなって真っ白になっちゃいますよ。


ルーがポーズを決めてから数瞬の間、周辺は静寂に包まれていた・・・が、


「うおおおおおお!!!すげええええ!!!!」


「切断された手足が本当に治ったぞ!!」


「使徒様バンザイ!!」


「サトル様バンザーーイ!!」


まるでタイミングを合わせたように唖然としていた周りの避難民達が一斉に我を取りもどしたと同時に全員が驚嘆と感嘆がないまぜになった声を上げていき、あれだけ静かだったのが一変し、怒号のような声が一気に広がった。


一部の人が俺を使徒だと認識して、崇めるような姿勢を取り始めてしまっているのはやめてほしいが、一部とはいえかなりの人数だし、その全員にいちいちやめるよう声をかけにいくのもめんどくさいのでほおっておくしかあるまい。


何でそれを知っているのかなんてのは、空から現れたことに始まり魔法で治療をしたりなんもない所から料理を出して提供したりしているのでそんなのは今更だよな。

それでも信じられなかった数人も食事中にカルロやその護衛に確認を取ってしまったもんだから、もうこの場で俺が使徒だという事に疑問を感じている者は皆無になってしまったのだろうな。実はまだ疑っているやつもいるかもしれんけど、俺自身がそうだと確信もしてないのだから本来はそっちの方が正しいとおもうんだけどね。


「ルー・・・本当に・・・本当によかった・・・」


今も尚世紀末辺りで覇者になったようなポーズをとっているルーの一番近くに居たリサがそのしっかりとした立ち姿を眺めて涙を流していた。

ん?こっちからの角度だとピッタリ重なってたから気が付かなかったけど、ルーの後ろに何か居ると思って少しだけ首を傾げて角度を変えてみたら、ココが全く同じポーズでドヤ顔をしてるわ。何をしとるん。


「サトル様。私達の為に食事を提供していただけただけじゃなく、あんな状態だったルーをも治療していただき・・・本当にありがとうございました。・・・あなたもルーと仲良くしてくれてありがとうね」


リサが流していた涙を拭いながらコチラへと振り返り、食事やルーへの治療に対するお礼を言ってきた。最後に見せたココへのウィンクは俺へ向けたものではなかったのだが、彼女の器量のよさのせいでちょっとドキッとしてしまった。可愛い。


「私からもみなを代表し、改めて礼を言わせてほしい。貴方様の施しが無ければどうなっていたことやら・・・。感謝するばかりで何も返せない自分を恥じるばかりですが、それでも言わせて下さい。この度は本当にありがとうございました」


リサがお礼を言ってきたのを見てガイードも一歩前に出て来て彼女に続き、深々と頭を下げると、ルーの治療を見学するためこの場に集まっていた全ての避難民達やリサ、ルーまでも一斉に頭を下げてきた。


「むふ~ん」


ルーの後ろでギャンブルなのにそれを頑なに認めない街中にいっぱいある日本独自の遊技場で、大当たりが一定数継続している者達が見たいけど見たくないシーンの格好をルーと一緒にしていたココがいつの間にか俺の足元で両手を腰に当てて胸を反らし、誇らしげな顔で鼻息を噴出していた。

いや・・・治したのも感謝されているのも俺なんですけど。まぁリサが感謝していたからちょっとは権利はあるのだろうけど。


返礼を恥じているけどそれが出来ない状況だというのは理解しているし、求めても無いので別に問題はない。これが大商人とか名のある貴族だったりしたのなら遠慮なく請求させてもらうんだけどな。


「さすがご主人様です!」


「サトル様なら当然ですよねっ!」


「お人好しが過ぎるよなぁサトルは」


「旦那のやることはいつも常識外れだけど、それに慣れてきている自分もちょっと恐ろしいさね」


少し離れた場所で横並びになってこっちを見ているウチの面々がそれぞれの感想を口にしているが、いつも通りの反応のオリヴィエにミーナが呼応し、その横でアンジュが少し困ったような顔で笑い、褒めているのかどうか微妙な線のことを口にしているし、ウィドーさんは俺の非常識さに順応しつつある自分を嘆いていた。


「ふっふっふ、今回のでこの世界にもだいぶカレーの美味しさが広がるんじゃないかしら」


そして一番右端に居たユウキは怪しい笑みを浮かべてカレーの布教が進んでいる状況を喜んでいた。

・・・なに、キミはただ好きなだけじゃなくてカレー教の信者かなにかだったのかい?それに入信した場合に崇める神はインドで一番信仰されているヒンドゥー教の神なのか、それともカレーそのものなのか。・・・うん、外国でスーパーヒーローのコスプレをしたやつが高いビルを登ったとかいうニュースくらいどうでもいいな。やめよう。


「礼は受け取ったからそろそろ頭を上げてくれ。今回の事は宝くじにでも当たったと思うといい。きっとみんなの普段の行いが良かったからどこかの誰かが俺らに発見させたのさ」


ガイード達を発見したのはココだし、それもただの偶然だったからな。

今回のように街道に沿って飛んでいたわけでもなかった状況で彼らを見つけたのは本当に運が良かったのだろう。


たまたま飛行の列から離れて一人遊びしまくっていたココがたまたまその下で列を成していたガイード達を発見し、ギリギリ命を繋いでいたルーを治療した。

ルーは俺達が発見しなくても、見捨てろという指示を拒否して無理矢理ルーを連れてきていたリサが普通の判断をしていても命が危なかっただろう。


「使徒様と御身をお導き下さった神に感謝します」


そう言って避難民が全員片膝を突いて目を瞑り、胸の前で両手を重ねて握り、祈りの姿勢をとった。

どの世界でも神へ祈る時は同じような姿勢を取るんだなぁ。っていうかキミ達の下に導いたのは天上の存在じゃなくて、俺の横でふんぞり返っているココなんだけどね。

見えない謎の運命力みたいなものを行使されていたらその限りじゃないけど、そんなの知りようが無いし、たぶん違う。

そもそもそんな力があって彼らを助けるのなら俺を寄こすんじゃなくて、そもそもこの状況の原因となった魔物の襲撃を無くした方がいいしな。


だが、きっとこういう色々な幸運が重なった時、人は神という見たこともない存在への信仰心を高めるのだろうな。しかも助けたのがその使いとされる使徒の俺ならば尚更だ。

今ならきっとユウキがわけのわからんカレー教を布教してもかなりの成功率を叩きだすんじゃないかな。


「螂ウ逾槭い繝ェ繧キ繧への信仰心向上に成功しました。ステータスに修正値が加わります」


「へ?」


俺が祈り続ける避難民達をボーっと見ながらその対象となる存在のことを考えていたら、突然シスの声が頭に響いた。


・・・なにそれ。

っていうか文字化けしていて隠しているような感じになっているけど、この状況で信仰心とかいう言葉が出てきたらその対象なんてゴッド以外になくない?伏字にする意味がまるでないと思うんだが。


しかもそれによってステータスに修正値が加わるってなんだ?まさかマイナス補正じゃないよね?信仰心を上げてステータスを下げられたらたまったもんじゃないんだけど。・・・まぁさすがにそれはないか。






「どうされました?」


「あ、いや・・・なんでもない」


「?」


突然のシスによるシステムメッセージ的な声とその内容に驚いて変な声を上げてしまった俺に反応してきたリサになんでもないと告げると、不思議に思ったリサが首を傾げる。


うん、やっぱ可愛いね。この娘。

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― 新着の感想 ―
信仰値の上昇で身体能力に上方修正…遣わした存在の正体はまだわからない物のガチの使徒なんだなぁ
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