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邪神様、ヴェールはとても良い街です

 ヴェールに来てから三日。その間に街の散策を充分楽しんだ。


 ヴェールは古より女神様(マルデル)の本拠地で、大戦後もワルキューレにより維持、管理され街は発展してきた。

 そういう歴史から、他の地では邪神と畏れられる、我が愛しの女神様をこの街の人々は熱烈に信仰している。

 それはもう街の至る彼処で堂々と崇拝されている。

 なぜそんな事が許されたかというと実に簡単な理由だった。ワルキューレや精霊達を恐れて、他の女神達がこの地から手を引いたからだ。

 だが、形式上は水の公国領ということになっているらしいが、税などは一切収めていないらしい。


 ヒルデ曰く、あのお漏らし女神が勝手に言っているだけだそうだ。


 そんな訳で他の女神達にとっては忌むべき邪神信仰の本拠地なのだが、何処よりも豊かで平和だという皮肉な結果となっている。

 そんな素晴らしい土地に人々が殺到しないのを疑問に思ったのだが理由は極めてシンプルだった。まず、うちの女神様を信仰するのはもちろんだし、そもそも移住が簡単に認められないからだ。

 きちんと女神様を信仰し、この街での生活が二世代に渡り信頼にあたるかどうか試される。それらを認められれば晴れて正式に移住が認められて、なんら制限を受けることもなく街に出入りできるようになるのだ。そんな訳で、正式な住民になるまでに気が遠くなるほどの時を要する。そこまでして移住しようと考える方が稀なのだろうと思った。


 そんなヴェールの街は外壁が三重になっていて、その外壁間も広く、外壁で区切られたエリア毎に人々の立ち入りを制限している。けれど、この街で制限されるのはそれだけで、種族や人種などの差別は一切ない。


 そして散策して更に分かった事がある。


 この世界には猫耳、兎耳などの獣人が存在することを。

 獣人族の方は露出も激しく見目もいいので、たいへん目が癒される。

 ただ語尾にニャーとか、ワンとかがつかない。話し方も至って普通なので少し残念に感じた。


 また、歌劇場や遊戯場もあったりと、芸術や美術、文学に関しても文化レベルは高いと感じた。けれど、それもこのヴェールが他国よりも異彩を放っているだけで、クロノア曰く、あの御方が俺の生活をみて遊びなど楽しそうなものを真似て取り入れた、とのことだ。


 なので、マルデルがクロノアと遊んでみて面白そうな物は、ヒルデ達を通してヴェールの民に広められた。

 ちなみにトランプやリバーシ。俺の苦手なチェスとかはあったのたが、なぜか一番好きな立体四目並べはなかった。


 だが、この世界にも驚く物が存在していた。

 ウォッシュレットのトイレと、ジェットバスの浴槽だ。

 ウォッシュレットのトイレに関しては、ヴェールの全ての家庭に設置されているらしい。これはマルデルの強い要望により実現したとのこと。本当に女性の美や衛生に関しての妥協を許さない姿勢には畏れ入る。

 

 ということで、今日は庭でクロノアと二人で立体四目並べを作っていた。


 土台や棒の担当は俺が、玉はクロノアが担当した。

 作る前はクロノアの方が大変かと思っていたが、魔法でサクサク削ったり形を整えて、俺よりも早く作り終わっていた。


「ユータ、遅いよ。棒と土台だけにどれだけ苦戦してるの。不器用すぎて笑えるわ」


 ちきしょう、煽りやがって。


「笑ってもいいからさ、手伝ってくれよ」

「もう、仕方がないなぁ。私がやるよ」


 あっという間に残りの十本を完成させた。

 だが、俺の作った棒を見て溜息を吐くと、追加で六本の棒をクロノアは作成した。彼女と俺の出来が違い過ぎたのだ。


「これで完成ね、さすがわたし!」

「おう、ありがとう!」


 二人でハイタッチを交わして喜んだ。


「ところで、なんでこれだけは無かったんだ。俺が好きなの知ってただろ」

「ああそれね。ユータが一番好きなのだから、最初はユータと二人で遊ぶって言って、作ってそのままにしてたよ」


 そんなことを話しているマルデルの光景を思い浮かべ、つい、ニヤニヤしてしまった。


「ユータ、今とっても気持ち悪い顔してるよ」



 ◇


 夕食後、世間話をしながらみんなで立体四目並べをした。


「ミツキ、学校に行くんだ。友達たくさん出来たらいいな」

「はい。でも学校と言っても騎士学校ですけど。すごく楽しみです」

「楽しみならよかった。強くなったら俺を守ってくれよ」

「あっ、悠太。そこはちょっと待ってください」


 ヒルデが自分の見落としに気付いて、慌てて待ったを掛けた。


「ヒルデ、待ったは二回までだぞ。ただで待ったは出来ないな」

「うっ、悠太は初心者相手に大人気ないですね」

「まあ、どうしてもというなら、考えなくもない、かな」


 ヒルデは悔しそうに唇を噛んだ。だが、なぜか妙にセクシーだ。


「悠太、どうかお願いします。待ってください」


 その言葉で待ったを認めた。

 だがその後、あっさり形勢逆転を許し、無様に俺は負けた。


「ふっ、悠太は調子に乗り過ぎです。負けたのですから、早くこっちにお尻を向けてください」


 俺のお尻を叩くいい音が部屋に響き渡る。


 ヒルデとの罰ゲームで、今後これは禁止にしようと心に固く誓った。


 そしてその後も、夜遅くまでみんなと楽しく遊んだ。

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