2話 侵略者
〚モンスター侵入
該当種有り
モンスター名
【寄生蟻[女王]】
【寄生蟻[兵]】✕5
迷宮への危険度Cと判明〛
再び聞こえたシステム音、頭の中に本が現れて勝手にページが捲れていく。
モンスター名【寄生蟻】
捕食数 女王✕3 兵✕2813094
特定の巣を持たず迷宮を渡り歩く蟻
階層事に劇的に環境が変化する事多い迷宮に膨大な繁殖力により適応する。
迷宮内を自身に適したものへと作り替え、訪れたモノや迷宮内の宝を食い尽くすこともあり、迷宮そのものまでも食い散らかすため【迷宮喰い】とも呼ばれる
どうやら本は図鑑のようで、その説明を読むかぎりでは早々に駆除すべきモンスターのようだが、現状私には何一つとして対抗する術がない。
仮に駆除出来たとして、次のモンスターがいつ来るか分からない以上、どのみち駆除するのは得策じゃない。
しかし、此処から彼等にどう接触するか……
〚樹木子が【蜜 E級】を放出しようとしています。
放出には〚迷宮核∶貴女〛の承認が必要です。
承認しますか YES/NO〛
〚依代【樹木子】が樹液を放出 寄生蟻【女王】、寄生蟻【兵】エリア①を突破 エリア②を突破 迷宮最深部への到達を確認 樹液の捕食開始〛
明確な意思疎通が出来ないが、アレも依代と言うくらいだから私という迷宮の一部なのは確実……
迷宮荒らしに近い生物に私の今後を委ねるのは分が悪い賭け……鬼が出るか蛇が出るかというのはまさにこのことか……
〚迷宮蟻【女王】と【兵】が完治しました 迷宮蟻【女王】が“号令“を発動 迷宮蟻【兵】が迷宮から撤退しました〛
直ぐ様敵対というわけでは無いのは有り難いが、【女王】を残して【兵】が撤退……流れからしてあの“号令“というのが女王のスキルと見て良さそうだが……
〚迷宮蟻【兵】が枯木片を持って迷宮に侵入 最深部へ到着 枯木片を落としました 迷宮蟻【兵】が迷宮から撤退しました〛
この破片の山、少数が集めたにしては中々の数なのだろうが、巣にするなら時間がかかり過ぎるな。
試してみるか……
〚迷宮にガラクタ∶【木】✕1500を放出〛
Side∶迷宮
迷宮内では女王と兵の一匹が運ばれてきた木片や土を使って巣を作ろうとしていた。
通常なら巣作りを役目とした蟻が行う作業だが、それらが居ない群れには至難の業である。
丁度材料集めに行っていた兵が戻ってきた時、樹木子の根元が盛り上がり、人間が使っていたであろう道具や家財の木片が山のように出てきた。
最初こそ躊躇って居た蟻達は直ぐに木片を砕いては唾液と外から運び込んだ土を混ぜて作った繋を使って樹木子を囲むように総出で巣を作り始めた。
兵が巣作りに専念出来るようになると女王の腹が膨らみ始め、樹木子の根本や幹に卵を産み始める。
産み落とされた卵は黒ずんだモノと白いモノ、綺麗な楕円形や萎れて歪なモノと様々だが、全部合わせると100無いくらいの数が産み落とされた。
それから数日が経った頃、卵の半数は羽化する事なく、産まれた半数の餌となった。
半月程これを繰り返し、迷宮内は迷宮蟻の巣窟とかしていた。
迷宮蟻の性質とでもいうのか、一定の勢力を回復した彼等は樹木子の独占と迷宮主への攻撃を開始した。
Side:???
『最悪の展開ではあるが、そう来るのは数ある予想の範疇だな。
一部の蟻が根元を掘っているのは何故だ?』
〚迷宮蟻のスキル【迷宮侵食】が発動。
これより迷宮蟻がマスタールームへの侵攻を開始します。
マスターは持てる全てを使ってコレを撃退してください。〛
目の前のモニターには樹木子が排出している樹液だけには満足出来ず、表皮に新たな傷を作っては、より多くの樹液を求める迷宮蟻と樹木子の根元を掘り進み、現れた穴に次々入っていく蟻の姿が映っていた。
『マスタールームは言わずもがな此処の事だろう……それに、撃退と言われてもやり方が分からない状態での、この展開はまさに詰みってヤツだな。
穀潰しの引きニートだった私が自分から立ち上がるのなんて"アノ"1回で十分だ…望んだわけでも、望んでもない転生生活これにて終了だな。』
自分が死んだであろう日が脳裏に浮かんだ。
感傷一つ、感情一欠片も湧かない自分。
今まさに2度目の死が迫っているにも関わらず、同じように何かを思うことも無く、まさに無感情にモニターを消し、あるのか無いのかも分からない瞼を閉じた気になった。
〚迷宮がスリープモードに入りました。〛
〚第一陣がソウル枯渇により全滅しました。〛
〚迷宮疑似核:樹木子の樹液が停止〛
〚第二陣がソウル枯渇により全滅しました。〛
〚迷宮疑似核:樹木子が停止〛
〚第三陣が恐怖しています。〛
〚迷宮内施設維持システムが停止〛
〚第三陣がソウル枯渇により全滅しました。〛
〚選別開始〛
〚第四陣が侵攻開始しました。〛
〚迷宮エリア①破棄〛
〚第四陣が恐怖しました。〛
〚迷宮エリア②破棄〛
〚第四陣が降伏しました。
救助を求めています。
助けますか?
YES/NO〛
〚選択されませんでした。〛
〚第四陣がソウル枯渇により全滅しました。〛
〚迷宮蟻の侵攻が止まりました。〛
〚迷宮蟻【女王】がコンタクトを求めています。
承認しますか?
YES/NO〛
〚選択されませんでした。〛
〚迷宮蟻【女王】がコンタクトを求めています。
承認しますか?
YES/NO〛
〚選択されませんでした。〛
〚迷宮蟻【女王】がコンタクトを求めています。
承認しますか?
YES/NO〛
〚選択されませんでした。〛
〚迷宮蟻【女王】がコンタクトを求めています。
承認しますか?
YES/NO〛
〚選択されませんでした。〛
・・・・
・・・
・・
・
〚迷宮蟻【女王】、その群が隷属を選択。〛
・
・・
・・・
・・・・
『んっ……まるで電源のONとOFFみたいな唐突な目覚めだな。
…………………お前達はなんだ?』
目を覚ますと半透明な小さな蟻、と言っても赤ん坊程の大きさの蟻が目の前でじっとこちらを見ていた。