表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学校の死神  作者: 國沢梨保
入学編
2/5

入学式ー1

入学式当日。雲一つない晴天に恵まれたその日を、新入生の誰もが心待ちにしていた。

二本の柱からなる校門を潜り抜ければ、そこはもうサンヘルム魔法学校の中。道行く生徒たちは気を引き締めて歩みを進める。石畳が敷き詰められた一本の道の路傍に咲き誇る桜の木々は、風に煽られ花びらを散らしながら入学を祝福している。

その中を、カルムもゆったりとした足取りで進んでいた。

舞い散る桜、吹き抜ける暖かな風。春の趣を全身で感じつつも、カルムは地面に注意しながら進む。


ここサンヘルムにはある風説がある。それは“セルギールの穴”と世間に呼ばれている。その内容は、魔法学会で名が通った人物、セルギール・ウォレットが実力試しの名目で落とし穴を作っているので気をつけろ、というものだ。

一般に、魔法をかけた所には微細ながらもその痕跡が残る。しかしながら、彼の作った落とし穴にそういったものは見られない。全神経を集中させてようやく気付けるかどうか…というレベルの痕跡など、もはや見分けられる人間の方が少ないと言える。


「きゃあっ!」


カルムの後ろで甲高い悲鳴が響く。振り返ってみれば、案の定一人の女子が穴にはまっていた。彼女は周囲の人にクスクスと笑われ赤面している。

カルムが「かわいそうに…」と思いながら再び歩き始めると、左から声をかけられた。いきなりの声かけに驚きつつも声の方を向けば、そこには背の高い男子がニヤリとしながら立っていた。自分の身長も一般的には高い方だと思うが、その子と比べると低く見えてしまう。


「本当かわいそうだよなぁ。セルギールってヤツ、頭のねじ外れてるんじゃねえのか?あんなの誰も

 気づけないっての。お前もそう思うだろ?」

「え、あ、うん。」

「だよなぁ。 …あ、いきなり話しかけられても困るよな。オレはレスター・ベルン。レスターって  

 呼んでくれよな。」

「俺はカルム・エルトライト。カルムで良い。よろしく、レスター。」

「おう! よろしくカルム!」


レスターはそう言って右拳を突き出す。それに合わせカルムもまた左手を突き出し、小突き合う。


「よし、行くか。」


満足したのか、レスターは足早に進みだす。気の良い奴だ、などと考えながらカルムもその背を追う。

今二人が進んでいる道は長さにして500メートルを超える。しかし、この道だけが特別長いというわけではない。単にサンヘルムの敷地が異常なほどに広いというだけだ。校舎はもちろん、運動場や図書館をはじめビオトープや飼育場、訓練場など様々な施設がこのサンヘルムには設備されている。

その結果、施設と施設をつなぐ道が長くなっていったのだ。


二人は出身や趣味などの他愛もない話をしながらしばらく道を進んでいると、やがて開けた場所に出た。大きな噴水を中心に円状に整備されたこの場所は、最初の集合場所になっている。周囲は壁に囲われており、今歩いてきた道からしか入ることは出来ない。

集合時刻より少し前だが、すでに多くの人が集まっており、2・3人で集まって会話をしている姿が散見できる。

しかし、一番目を引くのは中央の噴水だろう。噴水と言ってもただ水が噴き出るのではなく、吹き出した水が渦を巻いたり、動物や植物の形になったりするのだ。


「すげぇな、これ。」

「ああ。」


カルムの横でレスターが口をぽかんと開けながら感動している。少々間抜けな様相だが、カルムにもその気持ちはよく分かる。水のように決まった形をもたない物質を意のままに操るには相当な技術力がいる。さすがはサンヘルムの教師といったところだろう。


「カルムだったらこんなことできるか?」

「まさか。というより、それを学びに来ているんだろう?」

「ハハッ。違いねぇ。」


二人は集合時刻までの時間を、雑談をしながら楽しみに待った。










 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ