わたしは“サエナイオトコ”に、であった!
はっ!と、すると。
キレイなドレス着たキレイな“オネエサマ”が、前の方に、いらした。その横のさえない“男”は、なんだろうね? 見れば見るほど、サエナカッタ……………“場違い”って、いう。…………………………
× × ×
「まあ! アゲラタム様! 和希様がいらしてらしたのでしたら、仰っていただけたら! 直ぐに御茶の用意を致して参りますね! お待ち下さいませっ」
と、“ケイトウ”は言ったので在った。其の言葉を聞いた“男”は、優しい微笑みを彼女へと傾けた。そして、
「お久し振りです、“ボンベイレッド”嬢。相変わらず“御綺麗”ですね。“傅”いても?」と、伺いを立てた。ボンベイレッド“嬢”の横の“新米”の宮仕えはぎょっとしたのだ。××××
ボンベイレッド嬢が“まあ”と照れ、歓喜すると、更に笑みを柔らかくした男は、冴えない容姿とは裏腹に、優雅な仕草で慣れた行いをした。歳も四十代へと突入した、本人曰く“歳を取った”婦人、“ケイトウ”嬢は、久々にどぎまぎした。“和希”の優しさに。“ああ素敵”と。彼女には勿論“夫”が、在たが、和希とは彼女に取っての別格だった。下賤な例えを使えば“別腹”で在ろう。謂わば“若き日の憧れ”なのだからだ。いつ迄も“尊きもの”で、あったのだ。変わらない“若さ”も、それを加速させた。解り易く例えるならば“アイドル”の様な、ものだ。ケイトウ嬢に取って、の。そんな存在なのだ。
「まあ、ケイトウったら。私の、和希ですよ? 和希、此方にも。」
と、傅いた“和希”を立たせた“女王”は、己の領域に彼を引き寄せては、うっとりとした瞳で彼の“頬”を愛でては堪能した。“乙女”の様に。××××和希とやらは“妃”アゲラタムから甘い言葉を投げ掛けられ、その度に頬や髪等を撫でられながらも、嫌がる素振りも見せずに柔らかな微笑みで返すだけだった。主人が可愛がるペットを撫でる様でも、在ったのだ。××××××ただ、“新米”の瞳にはそうは映らなかったが。
× × ×
………………、これは? ………………、なに?
“余り時間が無いので、お茶は又の機会に御馳走になります”と、サエナイオトコは、答えた。私は茫然とした。まさか………………。こんなサエナイ・ヤツが、王太子だったら、ナキマス・ケド? ……………………
“チガウ”・ヨネ? ×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××
「“アゲラタム”様、」
「“御義理母様”でしょう? 和希。 ほら、呼んで?」
「はいーー“義理母上”様、ところで其方のお嬢さまには見覚えがありませんが、新しい方ですか?」と、サエナイオトコが“ウツクシイ・ヒト”へ、言ったのだ。ふむ? 私の事? って。え?
アゲラタムさまっ?! うそ! “王妃”さま?! うぇえ?! どうしよっ あいさつっ うわわっ
ぎゃ〜!!!
「あら? そうなのかしら? ケイトウ? そうなの?」
「はい、王妃様、和希様。 この者は“サクラ”家の“ウメ”と申しますーー今日あがったばかりでして…………どうか御無礼、お許しくださいませ…………よく指導致します故…………申し訳ございません…………」
“オバちゃん”さまが、頭を下げた。えぇ? 事前に言わないのが、悪いんじゃない?! まるで私に問題があるみたいに……………ヒドイ。はっ! とりま! あたまを下げねば! ぺこりっ
× × ×
男爵令嬢“サクラ”は、慌てて頭を下げた。実はアゲラタムは此の男爵令嬢の事を既に把握して在た。惚けたのは勿論演技だった。何でも。“貴族令嬢”にしては珍しく。“品性”の欠片も無いとか、何とやらで。ーー彼女の父から相談を受けたのだ。幸いにして今“王宮”では、人手が要る。王太子“イチゴ”の、婚礼の儀に向けてだ。此の令嬢役には立たないだろうが、“行儀見習い”の為に此方に来させるには、良い“隠れ蓑”に為ると、アゲラタムは考えた。そして其の旨男爵へ伝えると、快く了承したのだった。それこそ“是非に!”と。
粗忽故に此のままでは嫁ぎ先にすら困ると、男爵は頭を抱えていた、事案だったのだ。“ウメ”は、四女だった。サクラ男爵家は羽振りも良く、特に男爵領域の“スィート”は、他国にも評判だった。国外流出分も多く、男爵家は潤って在たのだ。とは云うが此の“ハナ王国”に置いて、そんな貴族領は他にもある。兎に角此の国は農産物が良作で、潤って在た。豊かな国だった。隣国“ガイサース”王国とは、農産物の出荷国故に、友好的な間柄だ。代わりにガイサース王国から、“鉱石”類が豊富に入国されて在る。あちらの特産品なのだ。過去の大災害に置いて此の辺りの“地形”は、大きく変化したらしい。歴史で誰しもが学ぶ事だ。災害の地形変動は、地質変動ももたらしたらしく、故にガイサース王国は、鉱石採取国と成ったのだった。代わりにか此の“ハナ”の国は。鉱物系が、如何にか乏しい。殆ど採取された試しが無い。一説に依れば此の国は“災害”の“起点”で在ったが為に、
元々の“成分質”が災害の際のエネルギーで吹き飛ばされたらしいーーと、されている。此れも一般的歴史にて、誰しもが習うーーのだが。
男爵の話では此の娘、つまり令嬢は。授業をさぼり、図書庫の“書物”ばかり、眺めて在たーーらしい。それでも本を読むのも勉強だろうと、寛大過ぎた事が、裏目に出たーーと。
令嬢の目にし“読み物”とは。男爵家祖先が手に入れし“異世界の代物”で。固く閉ざされて在た筈の“保管庫”を、此の令嬢は“好奇心”で、開けてしまったのだ。まさに神話の“パンドラ”だった。更には云うならば“慌てて閉める”事は、無かったのだ。故に。“様々な災い”ならばばら撒かれた“まま”だった。幸いなのはそれは“彼女の中”だけだと云う事だった。つまり、
古い故に保管庫は“壊れて在た”のだ。そして、古さ故に男爵家は保管庫の存在を知らなかった。秘密にするあまり途中で存在が忘れ去られたらしい。“伝わら”無かったのだ。伝え忘れたのかすら、定かで無い“昔”に。置き去られた。そんな代物だった。壊れても誰も気に留めぬ様な、そんな隅の隅に置いて在ったのだった。令嬢は“子供の悪戯”で、開けたのだ。埃と布の下の、がらくた“箱”を。其れが忘れ去られた“箱”だった。
“魔法”処理済で、何処も傷まずに残って在た、“書物”だった。彼女は“それ”に、触れた。そして“酔った”のだ。掛けられた“魔力に”だ。遠過ぎる過去に掛けられた未だに解けて在無い“魔力”は、幼き彼女には“強過ぎた”のだ。××××××××ゆっくりと彼女へと浸透、侵入した“魔力”は。悪酔いの様に彼女へと“夢”をみせた。
“本”の“内容”だった。“恋愛小説”の。或る日、“女”は、知らぬ地に、舞い降りた。舞い降りたとは、些か違うかも知れないーー突然やって来たのだ。ーーそんな“内容”だった。そうーーつまり。
男爵令嬢“ウメ・サクラ”嬢は、“魔力”で流れ込んで来た“物語り”を、自分の“生まれる前に起きた記憶”だと、思い込んだのだ。
つまり。
男爵令嬢“ウメ”は、ウメとして“生”を受ける前も又、“此の星”に生まれた“少女”だった。強いて違いを上げるならば、前世は所謂“平民”だった。大災害から100年後辺りに生まれた前世の少女は、些か貧しかった。飢えで命を落とした。九つだった。そしてその際に思い願ったのは、“お腹一杯の食事”と、“本が読みたい”ーーと云う細やかな物だったのだ。恐らく其の願いは叶った筈なのだが、普通の人間に“前世”の記憶は存在しない。
輪廻の際に浄化されるのが、“魂”だからだ。前世で健気な慎ましい少女だった彼女は。今世では些か“厄介な”お嬢さまとして、生を受けた“様”だ。
本と魔力の影響については、多少“有り無し”にしても。強いて“云え”ば此の“御令嬢”の今世は、
「些か“思い込み”が、激しいーーのだろうね?」と。
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わたしは思わず、「ーーは?」と。 顔をしかめた。“サエナイオトコ”が、言ったのた。“オモイコミガ、ハゲシイ”ーーと。誰のことよ?
“オバちゃん”さまが、慌てた。わたしに向かって、言う。「なんて態度をっウメっ!」と。
「“失礼”ですが、“思い込み”ーーとは? 私の事でしょうか?」
“サエナイオトコ”へ、向い、そう聞いたのだ。だいたい、このひと、“なに”よ? えらいの?
ただの“媚売り”でしょう? 王妃様にも目を冷ましてもらわなくちゃ。そうでしょ?
なのに。
“オトコ”はおかしそうに、ふっと“笑った”のよ。! はらたつ、わあ〜。