わたしは“オウキュウ”に、やってきた!
今日から王城で働くことになった。期待してた“ばりお城!”とは違うけれど、まあいいか。立派なお邸だな〜くらいの、少し大きめな建物だ。そこが“本宮”で。王様と王妃様が暮らす。
案内係りのオバちゃんが、あれこれ言いながら先をいくのを、ついていく。“念の為に”と。
つまり。
わたしの“仕事場”はこの本宮ではないそうで。だからあんまり覚える必要もないけれど、一応“ユウジノサイニハ”と、いわれた。うん? 意味わかんないね? ××××××××
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「ウメっ! 聞いているのですか? 全くーー」と、“オバちゃん”さまに、いわれた。“ウメ”とはわたしの名前だ。フルネームで、“ウメ・サクラ”と、いう。うん? いいえ、日本人では、ございませんよ。
“もと”だけど、ね? ××××××
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“前世”とよばれるものだろう。あれは。5才を迎えた日の、朝だったはずだ。ぼやけた視界から、“記憶”が流れ込んだのは。××××××
一瞬“ほえっ?”ーーと、なった。 なんだこりゃ?と。 “知らない”世界がまるで“現実”みたいに。わたしの中に広がったのだーーーーーーなんちゃって。ちょっと“文学的”だった? ふへへ。“前世”とやらではこれでも“文学少女?”でしたからねっ。 まあ、もっぱら?
“恋愛もの”だったけどね。………………てへ。どんまいっ! くっ! っ、むずかしいのはキライよっ。
“王子さまもの”は、読んだなあ…………あれはいいよね。つかれた現実を忘れさせてくれるのよ。うん。
そのうちに。“王子さまもの”と連動して。“乙女ゲーム”なる世界を知った。実際に乙女ゲームするわけではなくてね。乙女ゲームの世界を“舞台”にした小説のことよ。あれもなかなか楽しかった。そして。
“転生”てやつだけれどね。…………正直にいうと、わたしは。自分が死んだ“原因”は、さっぱり思い出せないのだ。ようはあれね。
5才になったあの日に朝目覚めると、“5才児だった”てことよね。………………え? 意味わかんないって?
だってそうなんだもんっ。何才で死んじゃったかも知らないしっ! 理由もわかんないよ! とにかく!
“今”の“わたし”の方は、“ウメ・サクラ”で。前世の名前なんて覚えてないんだよ。それでどうして前世が日本人だったか?と、証明できるのが?って? だって。 記憶が“日本”のものだもの。読んでた小説の文字だって、日本語だったよ! これで十分じゃない?
てかそんなこと、重要でもなんでもないのよ。今のわたしは“男爵家”の、娘なのよっ! 貴族ってやつよ!
えっ? ……………………くっ、わかってるわよ! どうせならでしょう?!
そうよ! 好きで男爵家やってないわよ! でも! しかたないじゃない!
それに。
“王宮”で働く“ちゃんす!”キタ!んだよ?! しかも! この“国”には“王太子”が、存在するんだ!
“落とす”のよ!
めざせ結婚! “王太子妃”よ! 前世の記憶があるからには、チョロいわよ!
ぐっと、こぶしを、にぎりしめた。で、“オバちゃん”様に、しかられた。“何をしているのですか!”と。
うっさいわい、気合い入れよ! さっしてよね。 ふうーーーーーーーー先が思いやられるわよね。
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“私”、ケイトウ・ボンベイレッドは今まさに。ーーーー“困難”に、直面しております。
先日の、事です。ーーーー“私”が長年仕えさせて頂いて居りました、“ベニバナ”姫様が、嫁がれました。実におめでたい事と、存じ上げますーーああー涙がーーいけません、いけません。つい、嬉しくて。
王宮の居候…………“グラスペディア”が何やら“寝言”為るものを、失礼致しました。“戯れ言”で、御座ますね。言っておりますが、私の耳にはとんと聴こえません事です。“姫様”は異国為らぬ“異世界”迄嫁がれましたもので、グラスペディア如きーー、失礼致しました。グラスペディア等の発言が届く事も御座ませんし、安心で御座ます。まあ。届いたとしましても、姫様の“御相手”様は、箇の“和希”様で、御座ますーーそう、“王妃”様、御気に入りの、或の御方ですよ。安心・安全で御座ますーー和希様は未だ御若き日の“王妃”様と“王”を御救けに為られた御方です。私、未だ若き頃。端無くも“恋”してしまいましたねえ…………あら嫌だ。ですが我が主“アゲラタム”様を差し置きまして、想い伝えられる訳も無く、それ以前に、和希様とは尊き御方過ぎまして、私等ではーーと。和希様はとても紳士でいらっしゃいます。あんな御方は探しても中々おられるものでは御座ません。
此の“ハナ王国”三女の、ベニバナ姫“様”は、お幸せ者で御座ますね。本当に良かったです。
和希様と想い通じ合われる前に、“タキ”様と云う此の国の“スポンサー”とでも云うべき“陽藍”様の教え子で“部下”の殿方が、此のベニバナ姫様に“求愛”成された時には。私等は本当にもう、どうしたものかと慌てたので御座ますが。他為らぬ“王妃アゲラタム様”と、そして陽藍様が。“大丈夫”と構え、御見守り成されましたもので。私等はぐっ!と、堪え。辛抱致しました。はあ、辛かったで御座ますよ? 甲斐有ってか姫様が和希様を御気に成され始めました際には。私の中で歓喜の花が咲きました。ああ良かったと。
以前から思って居りました。姫様にはタキ様の様な派手な御仁よりも。和希様の様な、さり気ない気遣いが御出来に成り、何処までも紳士な振る舞いを御崩しに為られないそんなあの方が、御似合いーーいえ“必要”だと。姫様は優し過ぎるので御座ます。故に。甘えさせてくれる“方”が、必要なのですーーと。
ああーー和希様、姫様、お幸せに。ーーと、云う訳で、御座まして。次は弟殿下“イチゴ様”の、番で御座ます。幸いにしてイチゴ様婚約者様の“ペルウィアナ”様も、ベニバナ様の“婚礼の儀”に影響を受けたようで御座まして。“やっとっ!”で、御座ます…………っ。やっと具体的な日取りが決まったので御座ますよっ。
それで。
婚礼の儀に向けまして。此処“王宮”でも人手が入用でして。“募集”を掛けたので御座ますーーが。
………………はあ。
先が思い遣られる“令嬢”が来たので御座ますよ。全くもう。