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ムシナリレポート

作者: 岩月 宝

20XX年X月XX日・レポート作成者・日野義彦


近頃流行し始めた奇病についてここに記す。


病名はまだ制定されておらず仮名の病名『ムシナリ』と記載する。


感染経路及び潜伏期間は不明、感染者の多くは思春期の少年少女である。


第一症状は急な高熱と手足に走る痺れが挙げられる。


痺れは手足を折り畳む事で緩和される事がわかっている。(例えるなら柔道などの亀と言われる体制が一番痺れを緩和する)


第二症状は手足を初めとした肉体の硬質化と意識の混濁である。


硬質化は手足から始まり下半身、上半身、頭部の順に硬質化していく。


意識の混濁は手足の段階では認められず、下半身硬質時に恐怖心や不安感などの鈍化がみられ、現状に対し受け入れる意思を見せ始める。


上半身に硬質化が進んでくると進行度合いによって睡眠時間の延長が確認できる。


頭部に至ると最早完全に意識は無くなっており、症状は末期へと進む。


末期症状は・・・、これを末期と呼んで良いのか甚だ疑問ではあるが・・・、一言で表すなら『羽化』である。


患者は肉体の完全硬質化から約二十四時間後に背面部が割れ、中から虫の様な形態に変態し出てくる。


形態は性別によって種類が変わり、女子なら蝶の様な形態に、男子なら甲虫の様な形態になる事が確認されている。


虫化した患者は羽化後二時間は野生の蝶や甲虫の様な行動をし、死亡する。


遺族から許可を取り、遺体を昆虫学の権威の真田教授と共に解剖した所、死因は全て餓死であることが確認された。


虫化した肉体では必要なエネルギーを摂取することは不可能なため餓死してしまうのだろうと真田教授との見解だ。


しかし、それだと大きな疑問が残る。


患者はそんな飢餓状態であるにも関わらず、エネルギー摂取、つまりは食事に必死になる様子が無かったのだ。


蝶は羽で空をまるで踊る様に飛び続けそのまま餓死し、甲虫もまるで自分を見せびらかす様に周りを歩き回った後に餓死したのだ。


真田教授の見解では野生ではあり得ない行動らしい。


・・・野生で人が虫になるのかは知らんが。


行動を観察すると患者は羽化後も人間としての意識があり、自分自身で餓死を選んでいるようなのだ。


だが、虫化したあとの様子を見ていると絶望して自殺とは考えられない。


虫化した患者は他者が集まる所に近づいていく習性があることが分かっている。


ある蝶化した女子中学生は幼稚園付近を飛び、子供達に自分を見せびらかす様な行動をとり、甲虫化した男子小学生は自分の通っていた小学校まで飛び、校庭に着陸し自分を見せびらかしていた。


まるで『綺麗でしょ』『格好いいだろ』と言うように。


彼、彼女等が何を考えていたのかは予想するしかないのが悔しいところだ。


今後、政府や関係各所と連携をとり、この奇病に対応していく。


・・・対応しきれるかはわからないが。


レポート作成者 日野義彦



追記・患者達は学校あるいは家庭内に問題を抱えていたらしい。

これが奇病と関係しているかは不明である。
























追記・これを救いだと言い始めた馬鹿は今すぐにこの病院を去れ。

こんな物が救いであるならこの世は地獄以下だ、馬鹿野郎が。

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