第39話 奇跡の一矢
何度も死にたいと思った。でも、自分で自分を殺すのは怖かった。ああ、誰か、自分を殺してはくれないだろうか。そう思うことが何度もあった。
でも、自分の流れる血を見て、死を実感したとき、死にたくないと思った。
「死にたくない..」
未来は首を噛みちぎられ、顔を踏み潰された後、絶命した。
死にたいと願い、それでも生きることを諦めず人生を戦い続けた一人の青年は夢を見ることなく、永遠の眠りに付いたのだった。
「俺は今度こそあなたを助けます」
時は108回目のループの時間軸。蓮は周囲を警戒した。
クリスティーヌと牡羊座はお互い引けを取らない戦いぶりだった。
戦いは終盤に近づいていた時だった。蓮は青年の背後から何かがやってくる気配を感じた。咄嗟に体が動いた。
牡羊座はクリスティーヌに気を取られ、蓮が青年に走り寄っていくことに気づかなかった。青年も驚き、体が動かなかった。蓮は青年を押し倒し、上から覆い被さるような体制になった。
その時、青年の立っていた場所の、背後上空から魚座がやってきた。魚座は大きな口を開けて、蓮と青年に襲い掛かろうとしていた。
クリスティーヌも牡羊座もその攻撃に対して反応が遅れた。
誰もが死を予感した。
蓮はこんなところで死にたくないと思った。でも、ここで行動を取らなければいけないと心が叫び、思わず走ってしまった。
一瞬、何が起きたかわからなかった。ただ、二人とも生きていることはわかった。
蓮は立ち上がると、魚座に炎の矢が刺さっていることに気づいた。魚座は体制を変え、少し後ろに下がりながら再度二人に襲いかかってきた。
すると、炎の矢が複数降ってきて魚座を攻撃した。魚座は炎の矢に耐え切れず、消滅した。