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星に願いを  作者: 深月 陽真
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第33話 羊は永遠の眠りに付く⑤

 2回目のループの時だった。蓮は青年が死ぬことを思い出した。だから、叫んだ。


「後ろだ!」  


 しかし、今度は向かって左側から魚座はやってきた。


 3回目のループはまた後ろ。4回目は右側からだった。


 5回目のループで蓮はクリスティーヌに命令し、魚座が襲ってくるタイミングに青年の周囲に水の壁を作った。


 魚座は何故か襲って来なかった。


 戦いが終盤を迎えた時、魚座は青年の背後からやってきた。


 6回、7回、10回...。37回...65回...82回...そして107回。


 何度戦っても青年は蓮の目の前で首を噛みちぎられ死んでいく。


 繰り返される死。逃れられない死。蓮はそれでも戦い続けた。どうにかこの死を止めたかった。


「何で殺したんですか。星霊を倒せばいいだけじゃないですか」


 13回目のループで蓮は魚座の契約者に話しかけた。30代後半ぐらいのスーツを着た男だった。


「こいつが俺の人生を壊したからだよ!」


 何があったか蓮にはわからなかった。だが、何故かその男の恨みは逆恨みであるように感じた。


 21回目のループで男は青年を踏み付けた際、蓮は止めようとして殴られた。


「こいつのせいで俺は職場にいられなくなったんだよ!今まで何人も辞めさせてきたのに、誰も何も言ってこなかったのによ」


 死んだ青年を何度も何度も踏み付ける男。37回目で蓮は初めて星霊に契約者を攻撃させてしまった。男は死ぬことはなかったが重傷を負った。


「俺は何をしているんだ」


 それ以降、蓮は青年を救うことはできなかったが魚座が青年を襲った後、すぐにクリスティーヌに命じ、魚座を倒し、男を気絶させることには成功した。そうして男が青年を侮辱する行為を避けることはできた。


 それでも、青年を救うことは107回すべてできなかった。


「僕が死んだらきっとあの行為は不当だったと認めてくれるかもしれない。でも、僕が死んでもあの人はのうのうと生きていくなんて嫌なんだよ!だから、僕は未来を変えるために戦うんだ」


 青年は弱いのではない。ただ、優しかったのだ。ただ、人より責任感が少し強かっただけだったのだ。


 青年は男の影に怯えながら生きてきた。過去を変えるという願いの選択肢もあった。しかし、青年は過去を受け入れ、新しい未来を作る願いを選んだ。


 青年はただ、男から受けたパワハラを正式に認め、職場への復帰を認めて欲しいと願っただけだった。

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