第31話 羊は永遠の眠りに付く③
「僕は謝罪が欲しいわけじゃない。ただ、認めて欲しいんだ。僕の、いやきっと僕らの声を聞いて欲しいだけなんだ。ただ、それだけなのに」
青年はいつも苦しそうに戦っていた。泣いていた。
この後、青年は永遠の眠りに付くのだった。
「蓮?本当に大丈夫?」
一瞬、また過去の記憶の断片を見ていた。寝いる時に過去の夢を見ることはあるが、日中に、しかも突然フラッシュバックに襲われることなどなかった。
「ああ。悪い。ちょっと疲れてるのかもしれない。じゃあ、俺は帰るから、何かあったら連絡をくれ」
蓮は優仁の部屋を去った。
「あの夢のこと言えなかったな」
先程見たレオと白ウサギの夢だ。
「蓮は何かを隠している。どうして僕を信じてくれないのかな」
優仁は膝を抱え、俯いた。蓮の挙動がおかしいのは、最初からだった。星霊戦争に巻き込まれた時から異常に冷静で、まるですべての結末を知っているかのようだった。
「貴方を愛しています」
その時、頭の中に知らない女性の囁き声が響いた。
「誰?もう何なんだよ!」
優仁は側にあった枕を壁に投げつけた。早く終わりにしたい。終わらせられないなら、せめて僕に力を与えて欲しい。蓮と対等に戦うだけの力を。
優仁のスマホが光った。するとまたあの森の中にいた。大樹の近くにレオと白ウサギ、その真ん中に仮面を付けた少女が立っていた。
「優仁、貴方に少しだけ戦える力を与えます。でも、どうかその力は貴方な大切なモノのために使ってください」
仮面の少女が手を差し出すと小さな光の玉が現れ、優仁の体の中に入っていった。
「本来なら貴方と私が会うのは非常に危険な行為。でも、繰り返される時間の中で、彼の肉体と精神は限界に来ています。もう、貴方自身で選択をするしかないのです。本当にごめんなさい、優仁」
霧が辺り一面を覆い隠し、優仁は目を覚ました。