第29話 羊は永遠の眠りに付く①
「やめろ!」
蓮の目の前で青年は首を噛みちぎられた。真っ赤な血飛沫があたり一面に散った。
初めてこの戦いで人が死んだのを目の当たりにした。
何度ループして繰り返してもこの青年の運命を変えることはできなかった。107回全て助けることができなかったのだ。
目を開けるとそこは見慣れた天井だった。
「目覚めが悪い」
あのお茶会の会場から一瞬目の前が暗くなったので、夢から覚めたと思ったが、かつての戦いのフラッシュバックに襲われた。
「来週なのか、あの人と戦わないといけないのは」
まだ頭が混乱している。そもそも何で自分の部屋にいるんだ。
蓮は慌ててスマホの時間を見た。オープンキャンパスに行った日と日にちは変わっていないが既に夜の20時を回ろうとしていた。
「優仁...!」
蓮は優仁の家に向かった。
優仁は養子だった。高齢で子どもを授かることのできなかった獅子神家の養子となった。
優仁と妹の優菜は物心付く前に今の家に来た。両親は優しく不自由のない生活を送っていた。あの日、優菜が事故に遭うまでは幸せだった。
「ここは...」
優仁が目を覚ますとそこは大きな木が生い茂る森の中だった。少し離れた大樹の近くにウサギの耳を付けた真っ白な髪と肌を持つ少女と獅子座の星霊、レオがいた。
「レオ?ねえ、君はレオなんだろう?僕が契約をした星霊の...」
優仁は二人に近付こうとしたが足が動かなかった。
「優仁、おまえの大事なモノはなんだ?」
レオが悲しげな瞳でこちらを見る。
「獅子神優仁、貴方の大事なものは今も未来もずっと変わらない。だから、間違わないで、惑わされないで」
今度は白ウサギが優仁に言った。
「今も未来も貴方の選択がセカイを変える」
急に視界が暗くなり、目を覚ますとそこはいつもの自分の部屋で側には蓮がいた。




