第27話 お茶会に招かれた白ウサギ
蓮は目を覚ますとそこはいつも夢に見るチェシャのティーパーティーの会場だった。
「やあ、レンくん。なんだか今回はいろいろ大変だったみたいだね?」
長テーブルの対角線上にいつも通りニヤニヤしながら蓮を見つめるチェシャがいた。
「いたっ...」
左手の甲に痛みを感じ、左手を見たが先程の傷はなかった。
「ここは現実じゃないんだから、痛みも傷もないはずだよ?」
チェシャは紅茶のカップを傾けながらまた笑った。
こんなところでチェシャの相手をしている場合じゃない。優仁は、クリスティーヌはどうなった?それにレオにアリス、そして天秤座たち。あの戦いから逃げることができたのか。
「まあまあ、そんな顔せずにゆっくりしていきたまえよ?結論から言えば君は逃げ切り、今はお家のベッドでスヤスヤと寝ているさ」
今度はケーキを食べながらチェシャは蓮に語りかけた。
「何故俺はここにいる。またおまえが呼んだのか、チェシャ」
「まさか。いつも勝手にボクのお茶会に来ているのはキミのほうだろう?まあ、今日はキミとどうしても会いたい客人がいたから、特別に招いてあげたんだけど」
その時、今までそこに彼女がいることに蓮は気付かなかった。蓮の斜めむかえの席に白ウサギが座っていたのだ。
初めて会った時と同じ真っ白な肌に真っ白な髪の毛、そして紫色の瞳はただ真っ直ぐ前を見ていた。
「このままでは人間界も星霊界もハートの女王の願い通り消えてしまいます」
白ウサギは淡々と話した。
「貴方のおかげでアリスはあそこまで力を回復できました。貴方が107回もハートの女王の願いを阻止してくれたからです」
「いや、俺はまだ何も...」
「でも、もう時間がありません。この108回目のループが最後の戦いとなるでしょう。貴方が唯一の希望なのです、水城蓮。どうか、ハートの女王を止めてください。そして、アリスに最後の選択をさせないでください」
白ウサギは蓮の方を振り向いた。
「あの日の貴方の選択は間違ってなどいない。ハートの女王の暴走は気づけなかったのは私のせいなのですから」
白ウサギは涙を流し、そして消えた。
同時に蓮は夢のような空間から脱した。




