第八話:社長/手合わせ
一日が経ち、水曜日。
放課後
「明日からテストか〜」
詩衣がため息をつく。
「まぁ、だいぶ勉強したし、大丈夫じゃない?」
「そうそう!紅も詩衣もよくやったって!大丈夫大丈夫!」
「そ、そうだよね!よーし!頑張るぞ〜!」
「「オー!」」
家に帰ったあたしは、デバイスで長官に連絡を入れる。
『明日から三日間テストなので、それが終われば通常通りRASEにいけます』
しばらくすると、長官から返信が来た。
『了解した、テスト頑張ってくれたまえ。応援している』
(応援された!RASEは良い人ばっかりだな〜、あの青いのを除いて)
…ったく、何なんだよあいつは…おっと、いけないいけない。ささ、あんなやつほっといて勉強勉強!今度こそ、いい点取るぞ!
……………………………………………………………
テスト一日目、木曜日。
「いよいよだ!緊張してきた…」
「だから大丈夫だって、勉強したろ?」
「そうだけど〜」
「さ、ちゃちゃっと終わらせよう」
1時間目、物理。
これ…なんの公式使うんだっけ…え〜っと…あ!これだ!由愛が教えてくれたっけ。
わーかーんーなーいー!ヤッバイ…あ!これだ!思い出せた!由愛に感謝!
ふぅ、終わった、二人とも…大丈夫かな…まぁあんだけやったら大丈夫か。
〜休み時間〜
「出来たよ〜!由愛感謝!」
「あたしも〜!」
「ジュース一杯な」
「「え?」」
「冗談だよw」
「「びっくりした〜」」
「さ、次だ次!」
こんな調子で、二時間目、世界史、三時間目、国語と続き、無事一日目が終了した。
「終わった〜!」
「まだ一日目だよ?詩衣」
「二人とも、今日はよく出来たんじゃないか?」
「「うん!」」
「その調子で明日も頑張ろうな!」
「うん!」
「あ、でも明日数学だ…」
「大丈夫だって!」
「自信持っていこうぜ!」
「そ、そうだな!」
が、頑張ろう!
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テスト二日目、金曜日。一時間目、英語。
英語は、あたし得意だからな〜、スラスラ解けるぜ!
なんとか…解ける…あ、ここレッドちゃんが教えてくれたとこだ
英語…あんま得意じゃないんだよな…who? what?どっちだ?…あ、こっちか。
二時間目、数学。
これなら…なんとか…分かる…こっちは…ダメだ後回し、これは…あ、二人とやったやつだ!よし!
三時間目、家庭科。
楽勝w女子力の勝利!
余裕余裕!
簡単だな〜。
二日目、終了。
「土日だ〜!」
「まだ、月曜あるんだからな」
「ちょっと息抜きしようよ!」
「聞いてる?」
「いいね!由愛〜いい?」
「しょうがないな、よし!行くか!」
「「ゴーゴー!!」」
三人で遊ぶのは久しぶりかな?ここ最近ずっと勉強してたし、たまにはいいよね?
あ、遅くなるって連絡しとこ〜。
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「じゃ、また月曜日ね〜」
「またな〜」
「おーう」
は〜!楽しかった〜、ひっさびさに騒いだな〜。
黃衣がポテト十人前持ってきたときはドン引きしたけど…案外食べれるもんだな…体重…増えたかも…。
「たっだいま〜」
「おかえり紅香、ご機嫌ね〜、楽しかった?」
「うん!」
「そう、よかった、さ、お風呂入っちゃいなさい?」
「はーい」
お風呂と夕飯を済ませ、紅香は自室に戻る。
(ちょっと食べ過ぎたな……)
ダイエットするかな〜、朝の登校を歩きにする?いや、45分かかるから流石に無理か…。
にしても、今日は流石に疲れたな〜もう寝るか…。
『由愛、詩衣、おやすみ〜』
『おう、おやすみな』
『おやすみ〜』
………土曜日……………………………………………………
「ふぁ〜〜」
7:00か、よく寝たな。
♪〜〜
「ん?」
電話だ。しかもサイバーデバイスから、いつもはメールなのに…ひょっとして、緊急事態!?
「はい、霧宮です」
『あぁ紅香くん、テストがある所すまないが、至急本部に来てくれないだろうか』
「わ、分かりました」
『ありがとう、詳しい事は着いてからにしよう』
そう言って電話は切れた。なんだろう…やっぱ緊急事態?だとしたらこうしちゃいられない!
紅香は急いで出掛ける支度をして、家を飛び出した、路地に入り、デバイスでテレポートする。
〈テレポート〉
本部には、既に全員が揃っていた。
「黃衣、何事?」
「うちらもまだ聞いてない」
「何かまずいことでも…」
「何事もなければいいんですが…」
そうそうしているうちに、長官が来た。なんか、いつもよりスーツがパリッとしている。
「急に集まってもらって済まない」
「何かあったんですか!!」
黃衣が、そう聞いた。
「いや、問題などではないんだか…悪いが全員」
その場の全員が息を飲む。
「社長室に来てくれ」
……………………………………………………………
紅香達は社長室ヘ向かうエレベーターに乗っていた。
「…社長、どんな人だろうね?」
黃衣が小声で聞いてくる。
「…え?あったことないの?」
黃衣と煎慈はRASEになって長いし、会ったことある思ったんだけど。
「ないよ〜呼び出しとか初めてだし」
「着いたぞ」
長官に連れられ、歩いていく。廊下広っ!
「ここだ」
止まったのは両開きのいかにもな感じの扉の前。大きくは…ないな
長官がコンコン、とノックする。
「アンナです、5人をお連れしました」
「入ってくれ」
そう言われて、5人は社長室の中へと入った。アンナさんは扉の横で待機らしい。
「ひっろい…」
天井にシャンデリア…ゴージャス…
「来てくれたようだね」
そう声がして、声のした方を見ると、一人の男が座っていた。私達とは反対方向の窓の方を向いてるため、顔は分からない。
「貴方が社長さんですね?」
煎慈が聞く。男は椅子を回転させて、こちらを向いた。
「いかにも、私がこのサイバーワークスの社長だ。自己紹介したいところだが…」
そう言いながら、社長はバックルを取り出した、と同時に部屋の風景が変わる
「まずはお手合わせ願おうか」
〈Stanby〉
バックルを装着すると社長の周りに、アーマーらしきものが生成されていく。
〈danger!danger!〉
〈This is too dangerous to use for you!〉
〈Do you use it?〉
その声と共に、『Yes』『No』と表示された、パネルが出てくる。
「実行」
パネルの『Yes』を押すとアーマーが社長に装填されていく。
「オールライト、さぁ、君達も」
社長がそう促す。
「どうする?どうする?」
「いこう!」
「いきましょう」
李翠と声が被った、あいつも意外と熱いな!
〈スピードマテリアル〉
〈レングスマテリアル〉
〈ウエイトマテリアル〉
〈ハードネスマテリアル〉
〈シャープネスマテリアル〉
「「「「「クロスアップ!」」」」」
各々の神機を手に持つ
「「「「「完了!」」」」」
先手必勝!紅香は神機を構え、社長と名乗る男にかかる。だが…
「あら?」
(うっそ、傷すら付いてない!)
「速さ…か、フン!」
「うぁぁ!」
社長は紅香の神機を掴み、自分を起点に紅香を投げ飛ばした。
投げられた!?ってヤバい!ぶつかる!
「紅香さん!」
いっ…たくなかった、間一髪、壁とぶつかる寸前に李翠が壁を柔らかくしたのだ。
(李翠にまた助けられた)
「よかった…」
李翠が安堵の声を漏らす。
「李翠!後ろ!」
いつの間にか社長が李翠の背後に回り込んでいた。
「硬さ…か、は!」
(まずい!)
拳が李翠に振り落とされる。
「させるもんですか!エイ!」
黃衣が社長の腕に神機を巻きつけて引っ張ったおかげで、その拳は軌道を逸れた。でも…
「うわぁ!こっち来た!」
「長さ…だね?」
「黃衣!下がっていてください!」
すかさず煎慈が周囲の空気でバリアをつくる、流石、戦いになれてるな…
「重さ、ね」
「何!?」
バリアを…貫通してる!?
「フッ!」
「きゃぁぁ」
「ぐっ…」
「黃衣!煎慈!」
ダメだ…あたしも動けない…李翠は…ダメか。
「はぁ!」
「何!?」
その時、社長を誰かが斬りつけた。
「蒼揶!」
あいつの能力は確か…鋭さ!
「いっけぇ!」
あの装甲を切れるかも!
「鋭さ、か!」
なのに…その装甲は蒼揶の剣も弾き返した。流石の蒼揶も驚いている、ん?驚いてる!
「まぁ、及第点といったところか」
〈Time over〉
社長の装甲が粒子となって消えた。
入口から長官が入ってくる。
「失礼します、ってまさか、社長、いきなり手合わせでも?」
「そうだが?」
「はぁ……」
「いや、済まなかった。改めて自己紹介しよう。私は、サイバーワークス代表取締役社長、黑ヶ嶂黎牙だ」
名前凄いなw
……………………………………………………………
あたし達は社長の「ここではなんだ、RASE本部へ行こう」
と言う提案で本部に戻った。
「さて、まずは突然襲いかかった事を心からお詫びしよう、済まなかった」
社長が頭を下げる
「そ、そんな!顔を上げてください!」
「何言ってんの李翠、こいつはうちらの事を急に襲って来たんだよ?」
「で、でも、何か理由があるかも…」
「たとえ理由があったとして、急に襲っていいわけ?」
黃衣が食い気味に否定する。そりゃそうだ、あたしも襲って来た事は許せない、てかわけわかんない。
「黃衣、相手の意見も聞きましょう」
「……ふん!」
黃衣がそっぽを向く
「全く…それで、何か理由があったんですか?黑ヶ嶂社長」
「君たちが本当にディザーズ根絶の力を持っているのか、その力に相応しいのかを試させてもらった」
「要するに、テストだったと?」
煎慈が聞き返す。
「しかし、いささか大人気なかったのも事実だ。ディザーズの根絶。それが出来る可能性がある君達5人が揃った事実を前に、興奮してしまった、本当に済まなかった」
社長がもう一度頭を下げた。その目には覚悟がみえた…気がする
「…分かりました」
「ありがとう」
「ですが、理解したのは私だけです。他4人は自由です」
「ぼ、僕も…」
「あたしもいいぞ!」
「ふん!」
「……次は負けない」
「ありがとう、これからは全面的に君達をサポートしよう」
「ったく、あなたの後先考えず動く癖、なんとかしたほうがいいのでは?」
「おぉ、アンナ、その堅い喋り方は社長室だけにしてくれ、息が詰まる、いや肩が凝るの方がいいか?」
「同じ意味だ」
長官がため息混じりに返す。付き合い長いのかな?
「あの、お二人は付き合いが長いんですか?」
黃衣が聞く。切り込むな〜。
「あぁ、この会社がまだ〈サイバーシステムズ〉だったころからだから…7年くらいかな?」
「6年だ」
「やっといつもの喋り方だね、そっちの方がしっくりくる」
「はいはい」
ドライだな…苦手だったり?
「で?元々はなんの理由で呼び出したんだ?何も、最初から襲いかかろうとしてたわけじゃないよな?」
「もちろん、だがもうお昼だ、この話は午後にしよう、そうだな…」
社長がデバイスで予定を確認している。
「よし、午後一時からなら空いている。聞きたい事があれば考えておいてくれ。では、また」
そう言って社長はテレポートしていった
「皆、自由な奴で済まない…」
長官、苦労してるんだな…
キャラ紹介
黑ヶ嶂黎牙
サイバーワークスの社長、ディザーズの根絶を心から願っている。気分で動く事が多いが、やるときはやる男。社員からは、絶大な信頼を受けている。