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ワールドノイズ  作者: 優希
出会い/動き出す物語
6/25

第五話:決意/あと一人

「李翠くん!待って!」

後ろから声がする、早く離れないと…

「捕まえた!」

(う…速い…一瞬だった…)

自分の運動神経の無さを痛感していると紅香さんが話しかけてきた。

「ねぇ?」

「な、なんですか!何度言われても僕はRASEに入る気はありません!」

そう強く言うと紅香さんは少し困ったような顔をして

「あ、いやそうじゃなくてさ、さっき最後になんか言いかけてたじゃん?それが気になってさ」

と言ってきた

「………言いたく…ありません…」

そう答えると

「そっか…そうだよね…言いたくない事だってあるよねー」

と今度は残念そうに言った、顔に出るな…この人

「じゃ、じゃあさ、あたしの事を話すよ。それ聞いて話す気になったら教えてくれる?」

「…分かりました」

そう言うと今度はニッコリと笑って話し始めた

「あたしさ、中学の頃、ちょっとしたいじめにあってたんだよね」

「え?」

あまりにも意外で思わず声が出てしまった、いじめられてた?…この人が?

「まぁ軽いやつだよ?あたし運動神経も良くて目立ってたし、標的になっちゃって…女子のいじめは怖いぜ?陰湿だからな〜。そんとき助けてくれたのが詩衣と由愛でさ、あぁあたしの友達ね?で全然学区の違う星錬学園高校に来たってわけ」

そのせいでいじめや差別が少数ではあるが起きている。

「すみません、嫌な事を思い出させてしまって」

「へ?あぁいいってあたしが勝手に喋ったんだし、それに…もう乗り越えたからな!」

強い人だな…この人と…この人達と居れば何か変れるかも知れない

「分かりました、僕も話します。聞いておいて言わないのは、なんか悪いですから」

「そうか?なんか悪いな」

「僕も…いじめられてたんです…高校に入ってすぐの頃に…」

そうして僕は、過去を話し始めた。


……………………………………………………………


あの頃は周り全員が大きな不安を抱えていた。

入学したてで、先の見えない不安をぶつける場所を探していたのかも知れないが。決して社交的とは言えない僕は恰好の的だった。最初はいじられる程度だったが、第一回の定期テスト位からだんだんとそれがエスカレートしていった

「おい李翠、お前、勉強出来んだってな」

「ま、まぁ」

「じゃあさ、俺らの分の課題もやっといてくれよ」

「え、でもこういうのは…」

「じゃあ、頼んだぜ〜」

こんな風に何かをやらさせることが増えていった

「なぁ李翠、俺ら部活行くからさ、掃除頼むわ」

「李翠、俺らの荷物、持ってくんね?」

などと色々押し付けられた

一度だけ断ろうとしてみたが、

「は?勉強出来るからって調子乗んなよ!お前はしたがってればいいんだよ!」

と言って殴られた。

こんな事が半年ほど続き、僕は次第に抵抗する気を失った。何もかも嫌になることもあった。でも、わざわざ学費の高い星錬学園高校に入れてくれた母親のことを思うと踏みとどまるしか無かった。

そんな気持ちの板挟みで精神がおかしくなりそうだった。


でもある日、僕の世界は変わった。

いつものように課題をやらされていた時、

「おいお前ら、人に何やらせてんだ!」

そう言って教室に入って来た人がいた。それが

慶也くんだった。

「あ?なんだよこれはこいつが勝手にやってんだよ」

「んなわけ無いだろ、そうだよな?」

僕は怯えながらも静かに頷いた。

「ほらな?嘘つくならもう少しマシな嘘つけってんだ」

「うるせー!!!」

いじめっ子の一人が、慶也くんに殴りかかる。

「ふん、残念」

しかしその拳が届くことはなかった。既に慶也くんの拳がお腹に命中していたからだ。慶也くんが

「まだやる?」

と言うといじめっ子達は一目散に逃げていった。

「大丈夫か?お前」

「だ、大丈夫…です」

「悪かったな気付いてやれなくて。お前、名前は?」

「氷堂…氷堂李翠です」

「李翠か!いい名前だな、俺は慶也、城戸慶也だ、これからよろしくな!李翠!」


……………………………………………………………


「それからぱったりいじめは無くなって、慶也くんとは、趣味も合って今では立派な友達です」

紅香さんは僕の話を黙って聞いてくれた、いや、厳密には後半は涙ぐんでいた。今に至っては泣いている

「な、なんで紅香さんが泣くんですか!?」

「だ、だってぇ、辛かったよな〜ゴメンなぁ嫌なこと思い出させて…ぐすっ」

(まったく……自分だって対して変わらない癖に……どんだけ良い人なんだ……やっぱり……この人達となら…僕でも何かできるかも知れない)

「分かりました」

「ん?」

「RASEに入ります」

「ホントに!いいのか?」

「はい」

正直怖いし不安だ、でもここには僕の役割がある。

「そうと決まれば、ええと何すればいいんだ?あ、そーだとりあえず皆のとこに戻ろう」

紅香さんに連れられて僕はさっきの部屋に戻った。


……………………………………………………………


「おかえり紅っち、あれ?その子…どうしたの?」

黃衣さんが明らかに敵意を向けてくる。そりゃそうだ、さっきまで入らないと言っていたのだから。

「RASEに入ってくれるってさ」

「はぁ!?さっきまで入らない入らないって言ってたくせにむぐ……」

煎慈さんが黃衣さんの口を塞いだ

「ありがとうございます、いいんですか?」

「はい、もう覚悟は決めました」

「それは頼もしい、では長官に連絡しましょう」

「ふぉっふぉふぇんふぃふん!ふぁふぃふぁふぁふぃふぉ!(ちょっと煎慈くん!離しなさいよ!)」

「あぁ、忘れてました」

煎慈さんが手を離す

「もう!苦しかったじゃない!」

「もしもし、笹刈です…はい、さっきの件です…入隊を決めてくれました…はい、よろしくお願いします」

「李翠さん」

「は、はい!」

「長官はトレーニングルームで待っているそうです、紅香さん、連れて行っていただけますか?」

「任せとけって」

紅香さんに連れられて、僕はトレーニングルームヘ向かった

「紅香さんも星錬学園だったんですね」

「おう、普通科だけどね」

そうか、思い出した。昨日慶也くんが可愛いって言っていたのは紅香さんのことだったんだ。

「着いたぞ、じゃあ李翠、頑張ってな」

「は、はい」


……………………………………………………………


「来たね、では早速これを付けてもらえるかい?」

と言って渡されたのはVRゴーグル?

「これ…最新式のやつですね、部屋ごと変化する」

部屋を見ると、細かい賽の目状に模様が入っている。間違いない。あの1マス1マスが出っ張ったり引っ込んだりして地形も変わるんだ。

「流石、ゲームに詳しいだけはある。今からそれを使って戦闘訓練を行ってもらう。ゴーグルを付ければ説明が始まる」

僕はゴーグルを付け、説明を頭に入れ込む。

「ではその通りにしてくれ」

「はい!」

まず宝石をセット

〈ハードネスマテリアル〉

「クロスアップ」

服が形成され、緑色のラインが入る

「完了!」

左側から盾が出てきた

「それが君の神機だ、さぁ、始めてくれ」

長官がそう言った途端、目の前に岩の巨人が5体出てきた。これを倒すのか……

「よし!」

大丈夫!相手を見て、対策を立てる。ゲームと一緒だ。

「うおっと」

敵は機動力は高くないけど、一撃が重い。

だから、神機から刃を展開し、さっと間合いに入ってコアを潰す!背が低いからこそ出来る技だ。

「素晴らしい。この調子で進めてくれ」

「はい!」

能力の方も試してみよう、僕の場合は触れたものの硬さを変えられるらしい、なら!

「よっと!」

足元に触れてトランポリンの要領で飛び上がる。

「うぁぁ」

危ない、着地失敗した…慣れないことするもんじゃないな…

「やばっ!」

一体近づいてきてた、あ、そうだ。

「えい!」

僕がディザーズに触れると足がぐにゃりと曲って、ディザーズがバランスを崩す、そのスキにすかさずコアを潰す。

「よいしょっと…あと三体…」

今度は失敗しないように…それっ!

「よし!これなら!」

あたりを跳ね回り、次々とディザーズに触れていく、全体がバランスを崩したところで

「1、2、3!撃破!」

つ、疲れた〜

「お疲れ様、部屋に戻って少し待っていてくれ」

その言葉を聞くと、僕はさっきの部屋に戻った。


……………………………………………………………


「お疲れ、李翠」

「お疲れ様です」

「決めた!あんたのことは李翠って呼ぶことにする!」

部屋に戻ると三人が待っていた

「あぁ、氷堂くん、これを持っていてくれ」

戻ってきた長官から腕時計のようなものを貰った

「それはサイバーデバイス、我々の連絡手段だと思ってくれればいい」

「連絡先交換しよ?」

そう言われ、全員と交換する、凄い…連絡先が4つも…嬉しい。

「さて、残る適合者は一人、そちらも気になる所だか、ディザーズの対処が最優先だ。各自、肝に命じておくように、では解散!」

その後、僕らはRASEの人に各々の家まで送ってもらった。


……………………………………………………………


家に帰った僕は軽く食事と風呂を済ませ、早速ゲームを起動する

『おう李翠、今日は遅かったな』

『ゴメン慶也くん、ちょっと用事があって』

『そうか、先に周回しておいたぜ』

『ありがと…ねぇ慶也くん』

『なんだ?』

『あの時…僕がいじめられてた時、助けてくれてありがとう』

『それはもういいって言ってんだろ?』

『うん、でも、あそこで慶也くんが来てくれなかったら僕は今でもいじめられてたと思う』

『…そうかもな、でもな李翠』

『ん?』

『もし、あの時、助けられなかったとしても俺はお前が苦しんでたらいつだって助けに行くぜ?』

『慶也くん……なんでモテないの?』

『ほっとけ』

照れくさくて誤魔化してしまったでも、凄く嬉しい、友達でいてくれて、ありがとう、慶也。





……サイバータワー最上階……

久々の呼び出しだな…なんだろう。

コンコン

「失礼します。アンナです」

「入りたまえ」

だだっ広い部屋の中心に座っている男がこちらを見る

パチッ、パチッ

(今日は将棋か…)

確かこの前はチェスだったな。

「ここ2日で、適合者が二人も見つかったそうだな」

「はい、計四人、あと一人です」

「最初の二人から実に一年半、ここに来てあと一人まで揃うとは」

「引き続き、ディザーズ対策と平行して捜索します」

「よろしく頼むよ」

適合者はあと一人、一刻も早く探さなければ

「世界を救う、五つの輝き、あと一つで揃う、それが揃いさえすればディザーズを殲滅出来る」

キャラ紹介

城戸慶也

李翠の親友。いじめられていた李翠を助けた李翠の恩人。運動神経抜群で顔もいいのだが、とてつもないゲーヲタであるため、あまりモテない


???

サイバータワー最上階にいた男。適合者の力を欲しており、何らかの秘密を知っていると思われるが…

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