第1章【覚醒-1】
覚醒
・睡眠等から覚めること。または
・覚醒し意識のある状態(覚醒状態)。
・比喩的に、あることを意識すること。
【・「覚醒」( 2018年10月13日 (土) 01:12 UTCの版)『ウィキペディア日本語版』(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/覚醒)】
あの声は一体なんだったんだろう。
よい旅を、ってなんの事なんだろう。
なんで森の中で目を覚ましてるんだろう。
ここは、どこなんだろう。
声の主に問い詰めたいことはあまりにも多すぎて、どれほど考えてもらちが明かない。
それに、オレが今考えなければいけないことは、そんなことじゃない。
木々の隙間から差し込む日差し。鼻をつく濃い空気。近くを流れる川の音。感じる風の流れ。
それら全てが暴力的なまでに主張しているのは、この状況はまぎれもなく現実であるということ。
そう、つまり──下半身を濡らすこの液体も、紛れもなく、その…現実である…ということだ…。
よくわからない状況に置かれてる事が現実だとしても、それは今どうにかできる問題じゃない。
けれど、濡れたズボンは、今、大至急、どうにかしたいし、どうにかできるのだ。
人類種がどうとか再臨がどうとか、この年になって寝小便をしでかした事に比べたら些細な問題でしかない。
声の主が何者で、なぜオレをこんな目に合わせたのかなんてわからない。
けれど、受けた屈辱は必ず返してやる……
枝に干した下着を前に、復讐を誓う。
……そうでもしないと、不安に潰されてしまいそうだった。
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衣服を水に浸し、簡易的に洗って、乾くのを待つ。
覚醒前の寒さはなんだったのかと言うほど、この場所は暖かい。
そんな場所だからこそ、オレも油断していたんだろう。
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見える範囲を散策していたら、人と遭遇した。
呑気にみえたかも知れないが、食料確保が死活問題に思える状況だったために、心底安堵したものだった。
少女の集団の様だ。
なにやら特徴的な…そう、魔女のような三角帽子を目深にかぶってはいるが、話し声の大きさはどこの世界の女の子も共通のようだった。
少女といえど入ってくる森なのだから、人里が近くにあるのかも知れない。
そう思って、声をかけた。
────下半身丸出しで。
それが今から30分ほど前の出来事だ。
今、オレはその少女達の生活する村?の長らしき存在のもとにいる。
……半裸のまま正座させられてる事を除けば、コミュニケーション成功って感じ?