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主催者に話を聞きに行こうと、奥へと行こうとしたとき、
「どうも、お世話になっています」
「うん? おお、これはこれは――」
これで、幾度目かの足止めをくらっていた。
さすがは有名人、と言ったところであろうか。
この機会にお近づきになろうという輩は少なくないらしく、父親はことあるごとに呼び止められてはその足を止めていたのだった。
いい加減うんざりしながらも、少年は視線を下げなら周囲を見渡してみる。
声をかけてきた人の後ろで数人がひそひそと話しているのが見えた。
少年は小さく唇を噛んだ。
これでは、一向にこの場所から動くことができないではないか。
少年が父親たちにもう一度視線を向けると、息子である少年に関心を向けている人たちはどうやらいないようであった。
彼は誰にも見られていないことを確認すると、ほっとして舞台に近づいてみる。
舞台に近づくと、やはりそこは気味の悪い場所だった。
ここに来るための階段もさることながら、舞台の奥へと通じている袖はまるでここに来た誰かを飲み込む怪物のようにも見えて、薄気味が悪い。
それが少ない蝋燭によって照らさているとなれば、なおさらだった。
蝋燭だけが照らす舞台の横には扉があり、どうやら舞台の裏手へと通じているらしい。
そっと少年がその扉に手をかけると、まるで少年を呼び込んでいるかのように、音を立てて開き始める。
彼が中を覗きこむと、そこは暗い、暗い廊下だった。
照らす必要がないのか、蝋燭やランプと言った照明器具はなく、タダ荷物が雑多におかれた通用口のような廊下だった。
少年はそんな暗い廊下を見て身震いをしてしまう。
「うぅ、なんでこんなに暗いのだろう……」
暗い室内を、誰にも見つからないように移動する。
この先に、先ほどの少女が居るのだろうか。
もしかしたら、もう一度彼女と会えるのかもしれない。
それは家と社交の場しか知らない少年にとって、一種の冒険のようにも感じられて……。
とても、ドキドキとしていたのだ。
そんな緊張とも、冒険心とも取れるドキドキの中で、少年はどんどんと先に進んで行ってしまう。
少年の背ほどに積まれた荷物がいくつもあり、その気になればきっと誰も少年を見つけることはできないであろう廊下だった。
やがて、廊下の終わりに広間のような物置があり、幾つか置いてある先ほどの『商品』を見る限り、どうやらここは舞台に出すための一時的な置き場のようであった。
まだ置かれているものは先ほどの舞台の上に置いてあった台や、替えの蝋燭。そして先ほど取引が完了したとみられる貴金属の類が山ほどに積まれていた。
しかし、その中に奴隷の姿はなく、どうやら彼女たちは別の場所へと移されてしまっているらしい。
少年が少しがっかりしたように肩を落とすと、元の場所に戻ろうとする。
と――、
ガサリ、と荷物がずれるような音がした。
見つかってしまったのかと、びくりと少年が肩を震わせ、慌てて振り返る。
しかし、そこには誰の姿もなく、まるでひとりでに荷物が動いたかのようにずれた荷物の山が存在するだけだった。
しばらくじっと、動かずに待ってみたが、そこにはやはり誰の姿もなく……。
なぜ、物音がしたのだろうか。
まるで、ここに踏み入れてしまった少年に警告するかのように、荷物がずれた。とでもいうかのように、部屋の中は静まり返っていた。
「だれか……いるの?」
あまりの恐怖に耐えきれず、少年はそう、聞いてしまった。
静まり返ったままの室内。
少年が気のせいかと気を緩めたとき、
「あら……大人の方……、じゃないのですか?」
どこからか、そんな声が聞こえてきた。




