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ぴーちゃんのものがたり

作者: 結城亜美

この物語はちょっと切ない一人の女性と猫のぬいぐるみのお話です。

みなさん、こんにちは。


ぼくのなまえは、ぴーちゃんです。


ぼくはねこのぬいぐるみといいます。


ぼくがうまれたばしょはどこかのまちのこうじょうというばしょです。


そのときのことは、ぼくはほとんどおぼえていません。


ぼくには、そのときはたましいというものがまだはいっていなかったからです。


ぼくがおぼえているのは、ふぁみりーれすとらんというばしょのおもちゃうりばにすわっていたときからはじまります。


ふぁみりーれすとらんは、にんげんのひとたちがごはんをたべにくるばしょで、ぼくはそこのおみやげこーなーにすわっていました。


ふぁみりーれすとらんには、まいにちたくさんのひとたちがやってきました。


でも、ぼくにきがついてくれるひとはだれもいませんでした。


そうして、まいにちまいにちずっとすわっていると、あるひひとりのおんなのひとがぼくのめのまえにたってぼくをみています。


「あなた、うちのこになる?」


そういって、ぼくをだきあげてくれてれじへいって、ぼくをかってくれました。


それがぼくとねえちゃんのであいでした。


それいらい、ぼくとねえちゃんはいっしょにくらしはじめました。


「きょうから、あなたはうちのこだよ!あなたのなまえはぴーちゃんだよ!」


ねえちゃんは、そういってぼくをやさしくだきしめてほほずりをしてくれました。


「ねこのぬいぐるみなのに、ぴーちゃんなの?とりさんみたいななまえだね!」


ぼくはふしぎとねえちゃんとしぜんにはなすことができました。


「ぴーちゃんのぴーは、はっぴーのぴーだよ!

はっぴーっていうのはね!しあわせっていういみなんだよ。あなたがきてくれて、わたしはとてもしあわせだよ!」


そういって、ねえちゃんはほほえみながらやさしくやさしくぼくをぎゅーっとだきしめてくれました。


「わたしはぴーちゃんがせかいでいちばんだいすきだよ。あいしているよ」


「ぼくもねえちゃんがせかいでいちばんだいすきだよ。あいしているよ」


ぼくたちはすぐにせかいでいちばんなかよしになりました。


ねえちゃんとそのばんはじめていっしょのおふとんでねむりました。

おふろあがりのねえちゃんのはだからは、とてもいいにおいがしました。


「こんやから、ずっといっしょだからね。もうひとりじゃないよ。いままでさびしかったね。ぴーちゃん。でも、もうひとりじゃないよ。ねえちゃんがいっしょういっしょだからね」


そういうと、ねえちゃんはぼくをやさしくだきしめてくれました。


「うん!ずっといっしょだよね!」


ぼくはうれしくてうれしくて、はじめてなみだをながしてなきました。


それから、ぼくとねえちゃんはまいにちいっしょにくらしはじめました。


「おはよう!ぴーちゃん。きょうもあいしているよ。せかいでいちばんだいすきだよ」


「おやすみ!ぴーちゃん。きょうもあいしているよ。せかいでいちばんだいすきだよ」


ねえちゃんはそういってまいにちぼくをやさしくだきしめてあいしてくれました。


それからぼくとねえちゃんはまいにちごはんをいっしょにたべたり、てれびをみたりしてたのしくたのしくくらしました。


「おはよう!ねえちゃん。きょうもあいしているよ。せかいでいちばんだいすきだよ」


「おやすみ!ねえちゃん。きょうもあいしているよ。せかいでいちばんだいすきだよ」


ぼくはまいにちがうれしくてたのしくて、そんなふたりのくらしはあっというまになんじゅうねんもがすぎました。


「おはよう!ねえちゃん。きょうもあいしているよ。せかいでいちばんだいすきだよ」


「おはよう!ぴーちゃん。きょうもあいしているよ。せかいでいちばんだいすきだよ」


あるさむいふゆのひ、あさのごあいさつがすむと、ねえちゃんはいつもどうりにぼくをやさしくだきしめてくれました。


でも、きょうはなんだかねえちゃんのげんきがありません。


「ねえちゃん。どうしたの?どこかいたいの?」


「なんだかね、ちょっとむねがいたいんだ。きっとすぐになおるよ!だいじょうぶだよ」


ねえちゃんはそういってほほえみました。


でも、ねえちゃんのかおいろはよくありませんでした。


よるになり、さむさもましたまよなかにねえちゃんが。


「ぴーちゃん、むねがいたいよ!たすけて!ぴーちゃん!」


ねえちゃんはとてもくるしそうにぼくにいいました。


「ねえちゃん!だいじょうぶだよ!ぼくがついているよ!」


「ぴーちゃん!ぴーちゃん!」


「ねえちゃん!ねえちゃん!だいじょうぶだよ!」


よがあけるころまで、ねえちゃんはとてもくるしがりました。


そして、ねえちゃんはきゅうにしずかになりました。


「ねえちゃん!だいじょうぶ?」


はなしかけても、ねえちゃんはこたえてくれません。


「ねえちゃん!ねえちゃん!おへんじをして!ねえちゃん!」


ぼくはできるかぎりのちからをだして、ねえちゃんのからだをゆさぶりました。


「ねえちゃん!ねえちゃん!おへんじをして!」


でも、ねえちゃんはしずかなままでした。


ねえちゃんはそのひのあさ、しんでしまいました。


「ずっといっしょにいるっていったのに!ねえちゃん!ねえちゃん!おへんじをして!」


ぼくはまいにちまいにち、ねえちゃんによびかけました。


ねえちゃんはほんとうにしんでしまいました。


ぼくはかなしくてかなしくて、まいにちまいにちなきました。


そうしてなんかげつもたった、あるひのことでした。


ガチャガチャ!どあをあけるとすうにんのおとこのひとたちがぼくとねえちゃんのおうちにはいってきました。


「しごさんかげつか……。くさいな……」


おとこのひとたちはそういうと、ぼくのねえちゃんをどこかにつれていってしまいました。


ぼくはへやのなかにひとりぼっちでとりのこされました。


「ねえちゃん!ねえちゃん!かえってきてよ!ねえちゃん!」


ぼくはまいにちなきました。


そうして、またなんかげつもぼくがないていると、ガチャ!ガチャ!とおとがしてこんどはおおぜいのひとたちがやってきました。


「ああ、ほんとうにひとりぐらしだったんだな。いひんせいりがたいへんだ!」


おとこのひとたちはそういうと、ぼくとねえちゃんのおうちにあったものをどんどんかたづけていきました。


「きたない、ぬいぐるみだな!」


おとこのひとたちはそういうと、ぼくをあらあらしくつかみあげてごみばこのなかにほうりこみました。


「それ!もえるごみだからな!」


おとこのひとはそういいました。


ぼくはごみぶくろのなかでひとばんすごしました。


あさになるととらっくがやってきてぼくはどこかのしらないばしょへつれていかれました。


そこはひろいひろいごみおきばというところでちかくのうみからかもめやからすがたくさんやってきました。


「ここはどこなの?」


ぼくはからすにきいてみました。


「ここはもやされるじゅんばんをまつばしょだよ!おまえもいずれはしょうきゃくろいきだよ!」


からすはいいました。


「もやされるとどうなるの?」


ぼくはからすにききました。


「はいになっててんごくへいけるのさ!」


「てんごくへ?」


「そうさ!おまえのねえちゃんがいるところだよ!」


そういうと、からすはぼくのあたまをつついてなかのわたをたべました。


「けっ!おまえはまずくてくえないや!」


からすはそういうとどこかへとんでいきました。


そのひのよるはあめがふりました。


ぼくはびしょぬれになりました。


「さびしいよ、ねえちゃん!ねえちゃん!かえってきてよ!ねえちゃん!」


ぼくはひとばんじゅうなきました。


そうしてなんかげつもたったあるひのことでした。


ぼくがもやされるじゅんばんがきました。


おおきなおおきなくれーんしゃがやってきて、ぼくはごみしょうきゃくろへとはこばれていきました。


ごぉおおお!まっかなひのうみのなかへぼくはほうりこまれました。


「ねえちゃん!ねえちゃん!あついよ!たすけて!ねえちゃん!」


もやされながらぼくがないていると。


「ぴーちゃん!こっちだよ!はやくおいで!」


まっかなほのおのなかから、ねえちゃんのこえがすると、そこにはなつかしいねえちゃんがいました。


「ねえちゃん!ねえちゃん!」


「ぴーちゃん!もうこわくないよ!ねえちゃんがたすけにきたよ!もうひとりじゃないよ。いままでさびしかったね!ごめんね!ぴーちゃん!これからはずっといっしょだからね!」


ぼくはねえちゃんにぎゅーっとだきしめてもらいながらてんごくへいきました。


「もうぼくをひとりにしない?」


「うん!これからはずっといっしょだよ!えいえんにいっしょだからね!」


「わーい!ねえちゃんといっしょだよね!えいえんにいっしょだよね!」


「そうだよ!ぴーちゃん!もうはなさないよ!ぴーちゃんのこと、せかいでいちばんだいすきだよ。あいしているよ」


「ぼくも!せかいでいちばんねえちゃんがすきだよ!せかいでいちばんだいすきだよ。あいしているよ」


こうして、ぼくとねえちゃんはてんごくへいきました。





おわり。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ぬいぐるみの視点でのおはなし、泣けました。 女性がずっとぬいぐるみを手放さなかったのが、いいですねえ。 わたしにもそういうぬいぐるみがあります。 魂があるようで、なかなか捨てられませんね。…
[良い点] ひらがなで表現しつつも読みづらさのない文が、私の視線をどんどん運んでいきました。 胸にガツンとくる作品だと感じました。 [一言] 最初は微笑ましい感じで読んでいたのですが、最終的には胸を締…
2018/09/13 18:43 退会済み
管理
[一言] 心に響くお話でした。 ありがとうございます。
2018/08/28 06:30 退会済み
管理
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