6時間目 掘り出したタイムカプセルの中身
和登たちは、牧絵に案内されて公民館の裏庭へやってきました。セミの鳴き声が聞こえる中、牧絵はある場所を指さしました。
「みんなが卒園するときに入れたタイムカプセルは、この中にうめているわ」
そこには、ひらがなとカタカナでタイムカプセルがあることを示す立て札があります。すると、由紀奈がその立て札を見てこう切り出しました。
「こういうのもなんだけど、公民館の裏庭にタイムカプセルがあると伝えてくれればよかったのに」
由紀奈の言葉を聞いて、牧絵はすぐに答えを返しました。
「それだったらおもしろくないでしょ。だから、陽くんにお願いしてこの紙きれを持たせたの」
これを聞いた和登たちは、そばにいる陽を疑いの目で見つめています。この様子に、陽はあたふたした表情で言い出しました。
「う、うそをついちゃって本当にごめんなさい! 幼稚園の前で牧絵先生に会ったときに頼まれたからつい……」
「うそをつくのはいけないことだけど、素直に反省しているから許してあげるね」
思わずうそをついてしまった陽ですが、由紀奈からの許しの言葉にホッと胸をなで下ろしました。
「これからタイムカプセルを掘り出すから、みんなもいっしょに手伝って!」
牧絵がショベルを何本も持ってくると、いよいよタイムカプセルを掘り出すときがやってきました。和登たちもタイムカプセルの中身を楽しみにしながら地面の土を掘り出しています。
「わあっ! これがタイムカプセルか!」
みんなで掘り出したタイムカプセルは、ビニールに包まれた一斗缶です。この中に、幼稚園時代の思い出がつまっています。
ビニールから出した一斗缶を牧絵が開けると、みんなが目を輝かせて中身を見ようとします。タイムカプセルには、小学6年生になった自分へのお手紙が入っています。
「1人ずつお手紙を渡すから、ちゃんと並んで!」
牧絵は、1人ずつ順番にお手紙を渡しています。お手紙をもらった和登たちは、どんなことを書いたのかすぐに目を通しています。
そのとき、純平がそばにいる和登の手紙を横からのぞき見しています。
「勉強をがんばってねって書いているのに、テストで悪い点取っているのはだれかなあ?」
「幼稚園のときに書いたものだから、別にいいだろ! このマジメ野郎!」
和登と純平が言い合いしているのを見かねた由紀奈は、2人の間に入りました。
「せっかくタイムカプセルを見つけたのに、2人がここでケンカしていたら台無しよ!」
由紀奈の怒りに満ちた強い口調に、周りのみんなは静まり返りました。当事者の2人も、由紀奈の怒った顔にすっかり黙り込んでしまいました。
その間も、牧絵は一斗缶のタイムカプセルからいろんなものを出しています。お父さんやお母さんの絵だったり、幼稚園での生活記録を映した写真だったり……。
「ちょっとこれを見て! こんな絵を幼稚園のときに描いていたなんて……」
「でも、これを見せたらお父さんもお母さんもうれしいと思うわ」
由紀奈と菜月は自分で描いた絵を見せ合ったりしながら、幼稚園の思い出話に花を咲かせています。
そして、陽が一斗缶の中から写真らしきものを2枚見つけました。しかし、それは和登にとって非常に恥ずかしいものです。
「ちょっとこっちへきて! こんな写真があったよ!」
「わわわっ! こっちにこないで!」
和登が必死に隠そうとしたのもむなしく、その恥ずかしい写真は他のみんなに見られてしまいました。
「わ~い! 和登くん、幼稚園でおねしょしちゃって泣いているぞ」
「お布団を干されてしょんぼりしているんだね、うふふ」
写真に写っているのは、和登がお布団におねしょをして泣いているところと、おねしょ布団を幼稚園の庭に干されてがっかりしているところです。
和登が大失敗した様子が写っているとあって、みんなは大笑いしながら和登を茶化しています。
「みんな、頼むからその写真を見ないで!」
「ほれほれ、おねしょ布団の前でちんちんが丸見えになっているぞ」
あまりにも恥ずかしい証拠をみんなに見られて、和登は思わず顔を赤らめてしまいました。
タイムカプセルにつまった思い出は、幼稚園のときからずっといっしょの5人だけのものです。楽しい思い出から恥ずかしい思い出まで、みんなが共有する大切な宝物であることに変わりありません。