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2時間目 謎解きのヒントはローマ字の書き方?

 登校日が終わっても、5人は教室に残ったままです。クラスの全員で、4枚の紙きれに全て目を通すことにしました。


「さっき、英単語が暗号とか言っていたけど……」


 菜月は、和登が言っていたことをそのまま口にしています。すると、純平のふとした一言で和登と再び言い合いになりました。


「おいおい、あんなバカの言うことを真に受けているのか」

「バカで悪かったね! どうせぼくは頭が悪いですよ」


 相変わらずの口ゲンカに、学級委員の由紀奈がコホンとせき払いしながら2人の間に入りました。


「ちょっと、和登くんも純平くんもいい加減にしてよ!」


 鬼の形相となった由紀奈の表情に、和登と純平は言葉が出ません。


 そのとき、陽が紙切れを見ながらあることを言い出しました。


「2枚目と4枚目には地名とか場所が書かれているけど、これらをローマ字にしたらどうかな?」


 陽の提案を受けて、由紀奈はノートに地名と場所を全部ローマ字に直しました。



 『友井』tomoi 『高見』takami 『相口』aiguchi

 『安柄』yasue 『双川』futagawa

 『幼稚園』yochien 『神社』jinja

 『公民館』kominkan 『集会所』shukaijo



「ローマ字に直したけど、これって1枚目と3枚目と関連があるの?」

「う~ん、『xyz』はともかくとして、『extra』はそれ自体が意味のある言葉だし」


 由紀奈が書いたノートを見た陽であったが、1枚目と3枚目がどういう意味を持つのかはまだ分かりません。


 頭を抱えている陽を横目に、和登は3枚目に書かれている英文字のキーワードに目を合わせています。


「この『xyz』って、アルファベットの最後の3文字を並べただけでしょ」


 キーワードに『xyz』を入れてくるところは、作成者のセンスが疑われても仕方がありません。しかし、和登はあえてそのキーワードを入れるのには意味があると見ています。


「このキーワードの読み方は『エックス・ワイ・ゼット』ではなくて、『バツ・ワイ・ゼット』だぞ!」


 自信満々に言った和登の予想に、他のみんなは腹を抱えて大笑いしています。


「ちょっと、何がおかしいんだよ!」

「だって、アルファベットの『x』を『バツ』と読む人なんかいないもん」

「はははははっ! これは、テストの点数が悪い和登らしい発想だな」


 由紀奈や純平が口を押さえながら笑いをこらえようとしている様子に、和登はふくれっ面になっています。


 そんな中、今まで黙っていた菜月が和登のそばへきました。


「和登くんの予想って、『バツ・ワイ・ゼット』でしょ」

「そうだけど……」

「それだよ! これは『y』と『z』が入っている言葉を除くという意味だと思うよ。この4枚目に書かれている場所をローマ字に直しているからすぐに分かると思うわ」


 菜月の言葉を耳にした由紀奈は、すぐにノートを開きました。すると、この時点で『幼稚園』は違うことがはっきりしました。


 しかし、残りの3つの場所には『y』と『z』のいずれも含まれていません。これに頭を抱える由紀奈に、純平が声を掛けました。


「それって、ヘボン式だからいつまでたっても正しい答えは導き出せないよ」

「えっ? でも、ローマ字って普通はこう書くんでしょ」

「ローマ字には基本的にヘボン式と訓令式の2種類あって、ヘボン式は由紀奈が書いた通りだけど……」


 純平は自分のノートに、4枚目の紙切れに書かれている場所の名前をローマ字に直しました。その筆記法に、由紀奈は目からうろこが落ちました。


「あ~っ! これなら1つに絞られたわ!」


 純平のノートを見ると、地名のローマ字はこのように書かれていた。



『神社』zinzya 『公民館』kominkan 『集会所』syukaizyo



「これで、場所は公民館ということになったわ。純平くん、ありがとうね!」

「そんなにお礼を言わなくても、ぼくは当たり前のことをしただけだから」


 純平のきちんとした対応に、由紀奈は感謝の気持ちでいっぱいです。その様子を横で見ていた和登は、少しくやしそうな表情を見せています。


「今度は絶対に正解してみせるぞ! 純平なんかに負けてたまるか!」

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