表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盤上の星  作者: 夏雪
1/5

出会い

パシッ。

公衆浴場の涼み場の隅、ガヤガヤとした喧騒のなか小気味の良い音が聞こえる。

ひょいと覗いてみるとやはりか、2人の男が盤を挟みすわりこんでいる。

いや、見るからに対称的な2人である。

1人は力士もかくやという大男だ。顔も頬に刻んだ傷跡が更に相まって威圧することこの上ない。

目前の優男の頭をカチ割るのでは、というくらいの憤怒の形相で盤面をにらんでいる。

一方の相対するのは、やけに線の細い男である。

細い体躯に白い肌。

口元はにこにこと笑いながら、しかし目元は緩まずしっかりと盤面を見据える。

細い腕で瓢箪を呷り、視線は盤上から外さない。

盤面をみると、僅かにこの細い男が優勢だ。


途中から三人から四人、観戦するのものがいた。

中でも、頬を上気させ、眼を輝かせているものがいた。

年は10前後、小麦色に焼けた肌が少年らしい印象を周囲に与えるだろう。


やがて、二人の勝負が終わった。


「いやぁ、お宅強いね」


大男が、がはは、と笑いながら幾ばくの銀貨を青年に渡した。


「運がよかっただけですよ。いつひっくり返ってもおかしくありませんでした」


「そうだよな、あそこでもっと上手いことできればよかったんだが」


大男は眉を寄せながら、また、一局頼むぜ、と立ち去っていった。


青年は眼を瞑り、二三度頷いてから腰を上げた。

隣接している酒場でつまみと酒を頼むと、席につく。


酒を待っていると正面の席に小さな影が座り込んだ。


「兄ちゃん、俺とすこし遊ばないか」


底抜けに明るく、楽しそうな声と、天真爛漫な笑顔に青年も思わず釣られて笑った。


この時、この出会いが盤上での一手なら、青年は注意深く思慮を重ねただろう。


しかしながら、青年の道を大きく変えるとは、まだ露ほどにも感じることはできなかった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ